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第三話 初めてのメイク

真白ましろは、私の前髪をそっと持ち上げ、クリップで留めながら言った。


「地黒? ……っていうか、日焼け?」


なんか、気にしてることをズバッと指摘されて、ちょっと傷つく。


「日焼け……。野球で……」


真白はうなずいて、机の中から細長いボトルを出してきた。


「じゃあ、これ。日焼け止め。塗っておいた方がいいよ、ほんとに。あと、化粧水も」


キャップを開けて、ひんやりしたローションを私の頬にのせる。

ゆっくりと手のひらで伸ばされて、気持ちよかった。

冷たくて、しっとりしてて、くすぐったいような、ほっとする。


「肌が乾燥すると荒れるし、ベースはちゃんとしておかないとね」


「……」


「小麦っぽい肌には、ベージュ系がいちばん合うと思うよ」


そう言って、細長いリップを取り出して、私のくちびるにやさしく塗ってくれた。

ちょんちょんって、くすぐったいくらいに、少しずつ。

真白は、キャップを閉めると真白はにこっと笑った。


「じゃあ、まつ毛いくね。ビューラー使うから、ちょっとだけ目、力抜いてて」


言われた通りに目を閉じると、ビューラーの金属音が小さく響いた。

ちょっとだけドキッとしたけど、痛くはなかった。

くるんって、まつ毛が持ち上がっていく感じ。


「うん、上がった。ぱっちりになるよ」


真白はそう言って、楽しそうに次の道具を取り出した。


「涙袋も、ちょっとだけやってみよっか。ほんとにうすーくね」


そう言って、細いブラシに、明るすぎないベージュのアイシャドウをちょんと乗せた。

ブラシが近づいてきて、思わず、目をぎゅっと閉じる。


「ダメだよ、力抜いて」


黒目の下に、ふわっと小さな影をつけるように塗ってくれる。

そのあと、少しだけ指でぼかしてくれた。


「涙袋の下にうすい影を入れるとね、ぷくっとして見えるんだよ。ほら」


鏡をのぞくと、目の下に小さな立体感。

何もつけてなかったときより、ちょっとだけ、目が大きく見える。


「うわ……」


思わず声が漏れそうになった。

ぱっちりしてる。ほんとに、ほんのちょっとなのに。


「かわいくなってるよ。ナチュラルだけど、ちゃんと変わってる」


そう言って、リップのツヤをもう一度なじませてくれた。


「ななみの髪、まっすぐでうらやましい」


そう言いながら、私の髪をとかした。


「出来上がり! どう?」


鏡の中の自分から目をそらせなかった。


全然、違う。

自分じゃないみたい。


ちょっとかわいいかも。


なんて、自分で言うのもなんだけど……。


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