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第十二話 告白とファーストキス

真白ましろがポテトチップを箸でつまんで、ぽいっと口に運びながら言った。


「ななみたち、付き合ってもう何ヶ月? 長いよね」


私は読みかけだったマンガを閉じて、顔を上げる。


「うーん……私たち、付き合ってるのかなー」


「どうゆうこと?」


「まだ、告白されてないし……」


「へぇー。ふーん、そうなんだ」


真白は、ポテトをもう一枚つまみながら、意味ありげに笑う。


「で、告白されたいの?」


「そりゃ~……その方が、普通っていうか、安心っていうか……」


言いながら、急に恥ずかしくなる。


「もうっ! 私のことより真白はどうなの? この前、二組の男子に告られてたでしょ」


「ガキには興味なし」


真白はあっさり言って、ポテトをきれいに口に収める。


……真白だって、まだガキじゃん




***




クリスマスデートで、朝からウキウキしていた。


鏡の前でコーデを確認する。

白ニットにベリーカラーのミニスカート。首元には淡いグレーのマフラー。

雪の結晶モチーフのイヤリングが耳元できらりと揺れて、今日だけの特別感を出してくれる。


「お待たせしました」


「ううん、全然。今日もすっごくかわいい!」


いつもの言葉でデートが始まる。


遊園地はすっかりクリスマスモード。

ツリーの前で写真を撮り、アトラクションに並ぶ。

絶叫マシンで悲鳴を上げたり、観覧車で遠くの景色を眺めたり……


日が暮れる頃、園内のすみっこのベンチに並んで座った。


「はい、これ。クリスマスプレゼント」


颯太そうた先輩が差し出した小さな箱を開けると、花柄のシェルポーチ。


「この前、ハンズに行ったとき、気に入ってたみたいだったから」


その言葉に、胸の奥が、ふわっとつままれた気がした。


「覚えていてくれたんですか、ありがとうございます。大切にします」


鞄から出した私からのプレゼントは、イニシャル入りのペンケース。


「受験勉強とかで使ってください」


「ありがとう、ななみに応援されてるようで頑張れるよ」


あたりはすっかり薄暗くなって、さらに輝きを増したイルミネーションを二人でぼんやり眺めていた。




***




「少し疲れた?」


少し心配そうに聞いてくる。


「……」


「あのっ」


「ん?」


「あの~、付き合ってますよね、私たち」


思い切って聞いた。

言葉が唇からこぼれるまで、心臓の音が、大きく響いていた。


「なんで?……今更?」


先輩は、ちょっと驚いた顔でこっちを見た。


「だって……ずっと言ってくれないし、ずっと不安で……」


声が震えていた。自分でもわかるくらい。

指先が少し冷たかった。


「当たり前じゃん……」

「でも、ゴメン。心配させちゃって」


その言葉と一緒に、先輩の手がそっと肩に回ってくる。

距離がふわっと近づいて、目が合う。


先輩の顔がゆっくり近づいて――


初めてのキス。


口元に触れたその瞬間、イルミネーションの光が遠くなっていく感じがした。

誰かに見られてるかもしれないって思うとドキドキが止まらなかった。




***




二年生になった。

颯太先輩は、受験モードに突入し、なかなか一緒に帰れない。


今日も一人で帰る。

夕日が落ちて、空は淡いオレンジ色に染まりかけている。


そのとき、前を行く二つの人影が見えた。


後姿でも、すぐにわかった。

悠馬ゆうまくん。いつものパーカー姿。いつもの歩き方。


その隣にいるのは――美羽みう

髪をふわっと揺らして、悠馬くんの腕に捕まるように寄りかかっている。


ふたりの間に流れる空気が、遠くからでも伝わってきた。

美羽が笑ってる。悠馬くんが何か言ってる。

でも、その声はぜんぶ、わたしに聞こえてない。


胸の奥に、ちいさな波が立った。

知らない物語を目の前で見せられているようで、追いつけない距離。


ふたりの後ろ姿をしばらく見つめていた。

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