↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/49

番外編7 君と僕とでこれからも

本編読了推奨です。

 言い訳、か。

『てめぇ、なんでその髪切らねぇんだ? いい加減、鬱陶しいだろ』

『えーほら、散髪代がもったいないじゃない? 頻繁に行くのも面倒だしさ』

 昔ヒダカに、ヘタな言い訳をしたこともあったかな。タイクウは、ふとそんなことを思い出した。


 運び屋になろうと決意し、二人が天空都市『彩雲』へ戻ってしばらく経った頃の出来事である。一時はそれで誤魔化したものの、数ヶ月後に再び問い詰められた。さすがに肩まで伸びた髪を放置しているのは、おかしいと思われたのだろう。


『願掛け、だよ』

 もう、良い言い訳を思いつくこともなく、タイクウは髪を伸ばしていたのが願掛けのためであったと白状した。

 するとヒダカは顔を曇らせ、何も言わずに口をつぐんだ。願掛けが、タイクウの体(・)に関わることだと悟ったのだろう。


『元の体に戻れますように』

『異形と化したこの体に、意味を見出せますように』

 タイクウの願いは、確かにそれだ。

 でも当時のヒダカは、その願いの成就が自分次第だと言うことに気づいていただろうか。

 戻れないならそれでも良い。この異形の体に、意味などなくても良い。

 けれどヒダカが『自分のせいでタイクウを異形に変えてしまった』と、後悔しているから。彼にそんな重荷を背負わせたくないから、タイクウは願ったのだ。


 ヒダカが後悔していないなら、そもそも髪は伸ばしていなかったし、彼が『これで良かった』と満足してくれたなら、今すぐこの髪を切ったって良かった。全ては、ヒダカの心次第。

 結局、ヒダカは最後まで満足などしてくれなかったから、髪はそのまま伸ばす羽目になってしまった。

 まぁ、そもそもヒダカがそんな人だったからこそ、タイクウは彼を助けたことを全く後悔していないのだけれど。

 今もこの髪は、別の願いを込めて伸ばし続けている。子どもの頃からの、二人の夢をかけてーー。


「おい、現実逃避もいい加減にしろ」

 ヒダカの声で、タイクウは我に返った。目の前ではヒダカが腕を組み、鬼の形相でこちらを睨んでいる。

「もう一度言う。この状況に対して、言い訳があるなら聞いてやる」

 そうだ。

 言い訳と聞いて昔を思い出し、現実逃避をしている場合ではなかった。

 タイクウは頭をかくと、相棒に向かってへらりと情けない笑みを浮かべる。


「ほら、前に使ってたベッドの寝心地、イマイチよくないって話してたじゃない? 僕の体が大きいからかもしれないけど」

「あぁ」

「あんなこともあって処分しちゃったしさ、ずっと代わりのベッドを探してたんだけど……。彩雲を散歩してたら、偶然良いベッドを売ってるお店に出会ったんだよ」

 どうやらそれは、高級ホテルのベッドルームに備え付けられる予定だったものらしい。

 綺麗な上にサイズがとにかく大きく、タイクウでも広々と眠れる大きさだった。


「それで、現品限り半額セールのお買得品なんて言われちゃったらさ……買うよね?」

「いや、買わねぇよ! てめぇが広々寝られるサイズだった時点で、こうなることは想像できてただろうが⁉」

 ヒダカの突っ込みに、タイクウは少し不満げに口を尖らせる。

「僕だって、ちゃんと部屋に入るかどうかは考えて買ったんだよ。——扉のサイズを考えてなかっただけで」


 そう、彼らの住む運び屋の事務所は、元プレハブ小屋。住めるほど広いとはいえ、扉は平均的なプレハブ小屋のそれだ。

 高級ベッドは入口をくぐることができなかったのである。


「でも、僕も考えたんだよ。こんな大きなベッド、入る扉の方が少ないはずだってね。なら、どうやって持ち込んだら良いのか……。つまり、まずベッドを分解してから部屋に持ち込んで、また元通りに組み立てれば良いんだってね!」

「その結果――この残骸ができたって訳か?」

「……そういうことです」


 二人の目の前には、文字通りバラバラになったベッドの残骸が積み上げられていた。

 タイクウは正直、どこをどうやってこの状態になったのか覚えていない。最早元通りに組み立てられる気がしない。おそらくもう、木片としか活用できなくなってしまっているだろう。


「説明書も何も見ず、素人が適当にバラすんじゃなかったね。……で、コレどうしよう?」

「――っ、アホかてめぇは⁉ 例え入り口から入らなかったとしてもな、余計なことしねぇでそのままの状態にしときゃ、別の方法を考えるなり返品交渉するなりできたかもしれねぇだろうが⁉︎」


 返品。

 何故か思いつかなかった言葉に、タイクウは雷に打たれたような衝撃を覚えた。

「ああああっ⁉︎ そうか、その手があった⁉」

 タイクウの叫びとヒダカの怒号が、今日も藍銅鉱(アズライト)の事務所に響き渡った。


これからも、二人はこんな調子で運び屋を続けていくことでしょう。

番外編にもお付き合いいただき、誠にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。