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第85話 誰が誰を好きになってもいいと思ってる


 クラスメイトから次々に話し掛けられて、教室に入る直前に今度は中野に話し掛けられた蒼斗を見て、服部は色々な事を考えていた。


 蒼斗の奴あんまり深く考えていないようだけど、一組の中心が姫野と自分だってわかってんのかな。


 はあ……。


 蒼斗には悪いけど、吉永の事はさっさと諦めて前向いた方が、クラスの空気的には良いと言うか……。


 何があったのか知らんが、やっぱり吉永の事は諦めない! とかなんとか言ってたけど。


 振られた蒼斗が落ち込んだりしてたら、今の一組の空気完全に死にそうだから、どうにか回避したいんだよなー。


 服部がそんな事を考えている間も、蒼斗と中野の会話は進んでいた。


「──たしかに。俺も水着買うかな。服部はどうする?」


「うん? ああ、どうすっかな」


「じゃあもう男子で水着買う奴いたら皆で買いに行くか!」


 中野が水着を持っていないと言う事を、蒼斗に相談した結果。


 あれよあれよと話は進み、楽しそうに笑った蒼斗に腕を掴まれた中野と服部は、教室に引きずり込まれる事に。


「えー、手の空いている一組の男子は教室の後ろにお越しくださいませ、鹿島蒼斗から大切なお知らせがあります」


 教室の後ろ側のドアから入ると同時、そんなふざけた事を言う蒼斗に呆れつつも、女子は笑って男子は自然と集まる。


「はい! 私はどうすれば良いんですか!」


「いや、姫野さんは女子でしょ。そのままでどうぞ」


「女子は駄目なんですか?」


「駄目じゃないけど……吉永、助けて」


 蒼斗と姫野のやり取りは教室では恒例で、頻度はそう多くないものの、二人が何か話す度に教室が盛り上がる。


 蒼斗から何も聞かされてなければ、吉永より姫野の方が似合ってるって思っちゃうくらいには息合ってんだよなー、こいつらの会話。


 それはまあ、吉永には別に好きな相手が居るらしいから、どうしようも無いってはわかるけど。


 蒼斗の奴ももっと吉永にアプローチ掛けていかないと、気持ちも何も伝わんないだろうに。


 あーあ、何とかなんないもんかねぇ……。


 勉強も剣道も忙しい上に康太と田邊に蒼斗と吉永についても考えてると、疲れて来るな。


 てか、蒼斗も蒼斗だけど、吉永も吉永だろ。


 ぶっちゃけ三好とか言う奴の事は全くわかんねえけど、好きならさっさと告白するなり付き合うなり振られるなりしてくれれば、蒼斗の方も動けるのに。


 彼女持ちであり色々と経験済みな服部は、一組の中でも頼れる兄貴分として蒼斗と同様に色んな男子から相談を持ちかけられる事が多々ある。


 だが、どれだけ相談されようが普通の高校生でしかないので、気苦労が増えていく一方だったりもする。


「俺と中野は今度水着を買いに行くんだけど、この中で新しい水着買いたいって人いたらもう皆で一緒にいかないか?」


「いやそんな話しかよ。もっとヤバイ内容かと思ったわ」


「でも水着ってアレだろ? 夏休み遊び行くからってやつだろ?」


「俺も買いに行くかな。学校の水着以外持ってないし」


 体育会系も文化系も関係なく、教室の後ろで円陣を組んだ一組男子がヒソヒソと話を始めたものの──。


「男子なにやってのアレ」


「さあ? でも鹿島君が何か言ってたよ」


「シマっちー! なーにやってんのー!」


 トイレから戻った近藤が蒼斗の背中をバシバシと遠慮なく叩いた事で、内緒話は終わってしまった。


「イタタタ! やめろ! 男子は今大切な話をしている所なんだよ」


「つっても皆で水着買いにいかねー、って話してただけだけどな」


「え、何々? 男子皆で水着買いに行くの? ウケるんだけどー」


「ウケるって言われても、海とかプールなんて行く機会なんて殆どなかったし、なー? それより、俺達を馬鹿にしていいのか、近藤? 中学時代の学校指定の水着を履いてきても知らないからな?」


「うわ、それはイヤかもー」


 そうして、ケラケラ笑う近藤と蒼斗の会話が始まってしまえば、後はいつも通りの展開へと繋がる。 


「私も紅葉と水着買いに行くよー! 一緒に買いに行こうよー! 私みんなの選ぶよ!」


「ちょっと、冬」


「私も水着買いに行く予定だったから、姫ちゃんも紅葉も一緒に行こ行こー! てかもう、リリンクで話すの面倒だし、期末も終わって折角教室に皆いるんだから夏休みの予定詰めてこーよー」


「あー、うーん。そうだな、そうするかー。って事で、水着買いに行く話は後にしよう。待てって、行くから。話っつっても、ミヤちゃん先生来るまでだからな」


 近藤に服を引っ張られながら教壇に歩いていく蒼斗を見ながら、教室の後ろに集まった男子はやれやれと言った様子で各々の席につく。


 近藤とも相性良さそうなんだよなー。


 まあ、それ言い始めたら蒼斗と相性悪い奴なんて居るのかわからんねえけど、強いて言うなら吉永か? 時々怒られるって言ってたしな。


 吉永じゃなきゃ今すぐにでも彼女出来そうなんだけど、誰でも良いから付き合うって奴でもないからな、蒼斗の場合。


 あれやこれやと頭を悩ましながら席に座った服部は、学校指定のタブレットを取り出すと、教壇にたった近藤と蒼斗の話しを聞く事にした。


「はーい。全員もうスプシの入力終わってるー?」


「まだの人いたらとりあえずわかる範囲でいいから、予定ある日にバツ入れてってくれると有り難い。なるべく大勢の予定が合う日に行きたいから、まずは日程を決めよう」


「2、3回に分けて遊びに行ってもいいしねー!」


「だったら私は全部行くよー! ね! 紅葉!」


「私を巻き込むの辞めなさいって」


 クラス全員が参加する遊びなんて、それはもう学校行事なんじゃねえの。


 ……ホント仲良いよな、このクラス。


 だからこそ、そう言うクラスの雰囲気を作ってくれている蒼斗には、どうにか報われて欲しい、と。


 心の中でそんな事を考えた服部は軽く頭を掻きながら、スプレッドシートに夏休みの予定を入力していった。

だけど、蒼斗って吉永と普段から全然絡まないよな。もっと動けよ、何もフォローできねえぞ。

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