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第79話 神イベントなのは間違いない


 あれやこれやと考えながらも、適当な話題で盛り上がっていけば、俺達の周囲の人が徐々に増えて行く。


「へー、ダンス部も合宿とかあるんだ?」


「青っちは中学の時野球部で合宿やったんでしょ? ダンスだってやる時はやるんだぜー?」


 今は、いつの間にやら会話に加わっていた柏木の後ろの席に座っている女子、城内きうち莉子りこが、青島に向かって親指を立てていた。


 明るいと言う意味では、姫野も相当明るい──と言うか、姫野の場合は超新星爆発みたいな感じだけど、ダンス部の面々は普通に超明るい感じ。


 中学の頃に良くつるんでいた後輩のノリを思い出すので、ダンス部の面々は個人的に全く嫌いではない。


「あ、合宿って言えばナナもうあの話ってしたの?」


「うんー?」


「ほらあれ、一学期の終業式終わったらーって」


「ああー。青ちゃんとシマっち一学期終わって夏休みどっか遊びに行くー、って言ったら来れそう?」


 石井いしい理沙りさに話を振られた近藤は、何かを思い出したのか。


 大きな目をパッチリと開くと、青島と、青島の机の上に座っている俺に向かってそんな事を言ってきた。


「遊びにっていっても。まあ、俺は料理倶楽部で全然忙しくないから行けると思うけど。康太はどうする?」


「俺も英語研究会だから、部活で予定が埋まってるとかはないんだけど……」


 しかし、青島に話を振ると、どうすればいいのかわからないと言った感じの表情が返って来たので、引き続き俺が会話を先導する事に。


「ああー、でもさ? 遊びにと言っても他に誰か来る感じ? 男子が俺と康太の二人だけだったら緊張しちゃうかもー」


「シマっちそんな事で緊張とかしないっしょー、あはは!」


 何を笑っているんだ、近藤たちは。


 女子のグループに混ざって遊ぶ事に、緊張しないわけがないだろうが。


 服部大明神と違って俺も青島も童貞だぞ、もっと丁寧に扱って気を遣ってくれ。


 毎朝毎朝俺の机の上に座って、太もも近いしスカートの中見えるんだわ。


 気を遣え、気を。


「緊張なんてするするー。女子の集団に男子二人とかだったら心細いよなー? 康太ー?」


「あ? ああ、まあ。そもそも遊びに行くっていっても何処に行く予定なんだ?」


「夏行くとこなんて海かプールしかなくなーい?」


「海とプール以外にも無くはないだろ? イーサンは夏に対する偏見が酷いな!」


「またイーサン言ってるー!」


 ブーブーと文句を言う井伊の言葉を笑いながら受け流すと、チームリーダーの近藤が話しを続けてくれた。


「まー、実際行くのは海かプールだけど、メンバーはまだ声掛けてるとこだねー。今見当たらないけどトリっぴーも誘うつもりだったし。トリっぴー来るって事はアミも来るだろうしー。アミが来るとなると委員長も姫ちゃんとかも来るかも? 男子はとりあえず、青ちゃんとシマっちにしか声かけてないから、そっちの方で適当に誘って貰っていい?」


「具体的な話はこっからって感じか」


「そだよー。てか、メンバーある程度決めないと予定も決めらんなくない? 少ないならプールがいいかなーって思うけど、多いなら海行きたいとかあるでしょ?」


「あー、確かに。それはあるかも。それじゃあ、定員とか関係なく誘えるだけ誘っていい感じか?」


「ないない。一組の全員が来られるなら、それはそれで面白そうだからいくらでも誘っていいよー。って事で、男子の方はうちらじゃなくてシマっちに声掛けて貰った方が早そうだから任せまーす」


 一学期の終業式が終わるまでまだ一月弱あると言うのに、なんて準備行動の早い奴だろうか。


 流石はチーム近藤。遊び慣れている……って言うと、なんとなく悪口みたいに聞こえるけど、アウトドア趣味があって行動力のある人間は、予定を立てるのもテキパキしてるから一緒に居て楽しいよな。


「だったら、俺はオッケーだけど」


「そう言う事なら俺も行くよ。蒼斗は佐々木達に声掛けてくれればいいから、俺は俺で他の奴に聞いてみるよ」


 チラリと青島の方を見ると、笑顔で頷いている青島と目があった。


「いえーい!」


「いえーい」

「いえーい」


 そうして、俺達の返事を聞いた近藤は椅子から立ち上がると、パンパンと小気味良い音を立てながらその場にいる全員とハイタッチ。


 正直、ナイスと言わざるを得ない。


 今、近藤に命令をされたら何でも言う事を聞いてしまう可能性があるくらいには、俺の胸は感謝の気持ちでいっぱいだった。


 クラスメイトと海かプールに行くと言う話、こんな話に姫野が食いつかないはずがない。


 食らいついて離さないまであるので、そうなれば姫野は絶対に吉永を誘う事になると予想出来る。


 ありがとう近藤、同じクラスになれて良かった。


 吉永とプールか海に行けるかもしれないとか、考えただけで色々とヤバイ。


 だって、プールか海って言うと要するに水着に着替えるって事だろう?


 馬鹿みたいに立派な屋内プールがあるにも関わらず、プールの授業が無い深山高校では見る機会ないと思われていた、吉永の水着が見れるかもしれないって事でだろ?


 いやいやいや、それはヤバイでしょ。


 吉永の水着姿、スマホで撮ってもいいのかな?


 ダメかな? ……ダメか。普通にダメだな。落ち着け、俺。


 ……いや、近藤と姫野がその場にいれば、俺が何も言わなくても勝手にみんなで集合写真を撮る流れになるだろ。


 俺が変態の烙印を押される心配はなさそうだ。

だけど、表面上は冷静を装おう。落ち着け、俺。

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