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第71話 絶対に内緒


 そもそも、冬の場合は初恋とは違うような気がすると言うか──。


「言っておくけど、冬の話は夕花が考えるような甘酸っぱい感じとか全然ないからね。愛実みたいにさらっと流していいと思うよ」


「どんな話?」


「どんな話って言うか。多分あれでしょ、冬? 横断歩道一緒に渡ったって話でしょ?」


「うんうん!」


「横断歩道?」


「横断歩道で転んで泣いてたら一緒に渡ってくれた人がいて、その人が格好良かったって話だよね」


「そ、そうだけど。ちょっと違うもん」


「へー、かわいいー!」


「格好良い男の子だったの?」


「ううん、女の子だったよー! 長い髪の女の子だったから紅葉と思ったら違う人だったー。でも紅葉と同じくらい優しかったんだー!」


「って、女の子の話なのね」


「そうかー、姫ちゃんはそっちかー。これはモミモミに彼氏が出来たら大変だねえ」


「そっちもなにも冬は友達から、ね?」


「うんうん!」


 相変わらず布団から顔だけを出している冬が嬉しそうに笑うと、私も嬉しい。


 好きとか嫌いが未だによくわかっていない冬が、もし本当に女の子が好きだとすればそれでも構わないけど……。


 それでも、私は鹿島が好きだから、いつか冬が初恋をするなら私と鹿島以外の誰かであってくれると嬉しい。


「──って、ちがうちがう! そうじゃなくて、モミモミあれだよ、ミヨシ? くん? って誰って事が聞きたかったの!」


「ああ、それ私も聞きたいかも。幼馴染?」


「悠馬君は紅葉と一番仲良しな男の子だよー。私もよく一緒に遊んだんだよー」


「違う違う違う、本当に違うから。家が近所だからちょっと遊んでただけで、二人が思ってるような関係じゃないから、ホントに」


「えー、そんなにムキになるのは逆に怪しくなーい?」


「紅葉が必死になってるの珍しいね。ああ、青島とか鹿島君に全然興味ないのって、その人がいるから?」


「本当に違うからっ!」


 ヤバ、思ったより大きな声でた。


「び、びっくりした。吹奏楽部の時の紅葉思い出した!」


「ご、ごめんよぉ。しつこかったね」


「その、私もごめんね。ふざけてたわけじゃないんだけど」


「あ! いや、全然怒ってるとかじゃなんだけどね! ホントにそう言うんじゃないと言うか──」


 鹿島に興味ないとか言われるのが嫌だっただけで、怒ったわけじゃなくて、思ったより大きな声が出てしまった。


 鹿島に興味ないって言われるのも嫌だし、鹿島以外に好きな人がいるとか思われるのも嫌。


 夕花と愛実になら言っても良いと思うけど、冬は口が軽いからやっぱり無理か。


 ……ううん、それも違うか。


 口は凄く硬いんだけど、嘘が本当に下手だから挙動不審になっちゃうんだよね、この子。


『カシマクン! 紅葉が一緒に居たいっていってイルヨ!』


 好きな人を教えたが最後、ガチガチになった冬がどうにか頑張って私のフォローをしようとする絵が容易に想像出来てしまう。


 だけど、そんな事になれば流石の鹿島だって色々と勘繰るかもしれない。


 好きだと打ち明けるタイミングは、まだ早い。


 今日だって、ちょっとくらい部屋見たいとか、小学生の卒業アルバム見たいとか。


 そう言うのあるかなと思ったけど……。な、何も無かった……。


 勉強しようと言ったら本当にずっと勉強だけしていた生真面目な鹿島の事が、そう言う所が好きだなって思うけど、もう少し興味も持って欲しいと言うか……。


 私はまだ鹿島に女子として意識すらされていない可能性もある。


 初恋がまだと言っていたから、もしかすると鹿島も冬みたいに男女の事がよくわかってなかったりするのかもしれない。大丈夫なのかな。


 だから多分、今私が好きだと言っても困惑させるだけだと思う。


 それに、コロコロ好きな相手が変わる軽い女みたいに思われるのも絶対に嫌。


 鹿島はそう言うの絶対に嫌いだろうから。


 せめて、私の事を女子として意識するようになってから動きたい。


 でも、少なくとも、何でも相談してくれればいいって言ってたから、嫌われてはいないはず。……たぶん、そこは大丈夫のはず。


「──三好以外に好きな人は居るから、あんまり三好で盛り上がられてもって言うか……」


「ええーーー!!」


「おおー! モミモミ好きな人出来た? 出来たんだ!」


「おやおやー、お相手は何処のどいつだい?」


「何よ、夕花。その話し方、ふふふ」


 でも、好きな人がいるって事だけは、ギリギリ伝わっても良い。


 私が好きな人はずっと鹿島だったんだよって、いつか言いたいから。


「誰かは言えませーん。これ以上の質問は受け付けませーん」


「えー、そこまで言ってそれはなくなーい?」


「誰誰誰誰誰! 紅葉の好きな人誰! 私頑張って協力するよ!」


「わっ。びっくりした」


 被っていた布団を放り投げた冬が立ち上がると、ベッドの上に居る私に向かって勢いよく飛びついて来た。


「私紅葉の役に立つよ! 頑張れるよ!」


「内緒ー。私に好きな人がいるのもここに居る人だけの秘密だからね。──もし漏れたら犯人を特定します」


「モミモミこわー。顔がマジじゃん」


「まあ、紅葉が内緒って言うなら仕方ないでしょ。紅葉の意思を尊重してあげなさいよ、愛実。私だって好きな人居るけど内緒にしてるしね、それと一緒でしょ」


「え?」

「え?」

「えええーー!!」


 夕花がポロリと溢した言葉から再び場は盛り上がり、私達のパジャマパーティーは最終的に母から静かにするようにと注意された0時前まで続いた。

だけど、この気持ちは抑えきれないから

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早くしないと手遅れになりますよ紅葉さん
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