表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/101

第39話 気になるのはそっちじゃなくて


「俺ら昨日のうちに決めといて良かったなー」


「だなー。てっきり皆もう大体決まってると思ってたけど、そうでもなかったのか」


「そうみたいだねー。まあ私らも昨日鹿島君に誘われてなかったらこの時間に残りのメンバー探してたしね」


「うんうん。そう言う意味では私達ラッキーだったかも? 一緒に行きたい人全員居るし、ついでに青島君達もいるし」


「ついでは酷くないっすか?」


「ごめーん、えへへ」


 グループが決まっている俺は教壇から自分の席に戻って来た青島と、後ろの席の井伊や柏木、それと途中から混ざって来た石井と城内と近藤と適当に喋りながら、八人一組の五グループとやらが完成するのをのんびり待った。


「そろそろグループ決まるっぽいから、俺はまた前行くわ」


「おう。頑張ってなー、クラス委員長」


「いってらー」


「ばいばーい」


 そうして青島が再び教壇に向かったら、今まで何処に居たのか、のろのろと歩いて来た服部が青島と入れ替わるように着席。


 そのまま軽く伸びをしたかと思うと、ガサゴソと青島の机の中と鞄を漁り始めた。


 服部も割と自由な性格してると思う。


 そんな事を考えていると、再び教壇に立った田邊と青島が遠足についての話を開始した。


 次は、出来上がった五つの班で、それぞれ話し合いをする時間である。


 班長を選出したり、各班で話し合って何処に行って何をするのか、何時に何処に行って、どの時間までに学校指定の場所に到着するか等々。


 細々とした行動予定表をタブレットで作成する時間なんだけど、教室の雰囲気が良い。


 お台場で遠足かー……とか、そんな雰囲気が微塵もないのが良い!


 中学の頃はどうしても、学校行事、イベント事に消極的な人も少なからず居た気がする。


 だからかもしれないけど、それが良いとか悪いと言う話ではなくて、クラス全体、学校全体としての足並みが微妙に揃わない事もあった。


 だからこそ、同じ目標を追い駆ける部活動が一番楽しかったってのはある。


「だから、そんなに回ってたらどう考えても集合時間間に合わないだろって」


「男子がそんな事言ってどうすんのって、ギリ間に合わないならちょい走ろうよ」


「どんな解決策だよ」


「服部も近藤も落ち着け落ち着けー、もっかい全員の行きたい所整理すんぞー」

 

 行くからには何をするのか。


 やるからにはどう楽しむか、など。


 遠足一つとっても、全力で楽しもうと真剣に話し合える人達がクラスメイトかと思うと、この高校に来たのは本当に正解だったと感じる。


 ちなみに班長は俺になってしまった。


 青島にしようとも思ったが、既にクラス委員長をしている身なので、遠足の班長を兼任させるのも可哀相だと却下。


 だったら近藤に任せようと思ったけど、普通に拒否られたので、仕方なく受け入れる事になったと言う、どうしようもない経緯。


「そろそろ時間ですので、各班長は先生に行動予定表の提出をお願いします」


 しばらく話し合いに熱中していると、いつの間にやら結構な時間が経過していたようで、田邊の淡々とした声で俺達は我に返る事となる。


 しかし、俺達の班に限らず他の班も何処もこんな感じで、各班話し合いに精を出していたらしい。


 先生ー、話し合いの延長って出来ますかー?


 と言う事で、誰かがそんな事を言うと、担任の宮藤みやふじ先生の授業時間を削って話し合う時間と、それでも決まらない場合は放課後に残って話し合う許可が下りた。


 ただし、今日中に行動予定表を作成して提出しないとダメだから、絶対に今日中に決めるようにとも釘も刺されてしまう。


 そんな訳で、この日の休み時間は出来上がった班毎に集まって、細々とした話し合いをする場面が多かった。


「近藤ーちょいちょい」


「なにー、シマッちー」


 斯く言う俺も班長としての仕事を全うすべく、皆を纏めようと奔走したりしなかったり。


「女子の方の希望もう少し削れね?」


「何であたしに言うのよ」


「だって近藤の話ならみんな聞きそうだからー、ダメっすかー?」


「良いけど貸し1ー」


「ひっで! 学校行事だろうが」


「だったらシマッちが一人一人に話してきてもいいんだよー」


「オナシャス!」


「よしよしー、貸し2ねー」


「なんで増えてんだよ!」


 ゲラゲラ笑う近藤凪々に食って掛かるも、ひらりひらりと躱されてしまう。


 そんな感じの話し合いをしたりしなかったり。


 一年生の遠足はクラス全体、学年全体の親睦会のようなものだ、とは先生の話。


 今はちょうど高校最初の中間テストが終わって、良くも悪くも最初の結果が出て一時的に肩の力が抜けた所。


 ここまで緊張していて友達が出来ていない人達とか、同じクラスなのにあまり話した事のなかった相手と親睦を深める為の行事だと、先生は言っていた。


 だけど、楽しむ時は全力で楽しめばいいけど、楽しんだ後はしっかり切り替えるようにとも言っていたので、気を緩めすぎるのは駄目かも知れない。


「田邊さん田邊さん。これって、このまま送ればいいの?」


「んー、お疲れー。鹿島君の所も終わったのね」


 五時間目の授業が終わって、六時間目の授業が始まる前。


 トイレに行って教室に居ない青島の代わりに、田邊に確認を取れば、クイっと眼鏡を持ち上げた彼女が俺のタブレットを見て最終確認してくれる。頼りになる委員長だ。


「何とかかんとか。近藤達があれ行きたいこれ行きたいで、纏めるの大変だったわ」


「ご苦労様。うん、うん。うん、これで送って大丈夫だよ」


「おっけ、ありがとう。あ、そう言えばそっちって結局誰と同じ班になったの?」


「私? ああ、冬華の事気になる?」


「いやいや、そんなんじゃなくて純粋な好奇心だって」


 俺が気にしてんのは姫野そっちじゃなくて吉永だ。


 って、言いかけてしまった、あぶね。


「私達は藤本ふじもと君と松下まつした君とー、後は佐々木(ささき)君と泉井わくい君だね」


「おおー、面白そうなメンバーだ」


 藤本も松下も軽音部に入るくらいだから、色んな音楽知ってて面白いんだよなー。


 個人的には佐々木と泉井はあんまり近寄りたくないけど、あいつらも全然悪い奴ではないと言うか、面白い。


 まあ、あんまり近寄りたくないのはそうなんだけど。


 でも、そのうち機会があればがっつり話したいとも思っているのも本当で……。


 泉井と佐々木に関しては、何とも微妙な感じかも。


「かな? どうだろ、冬華はいつも通りはしゃいでるし愛実も紅葉もそれに合わせてるけど、あんまりのってない感じはするかなー。どうかな? やっぱり鹿島君達と行きたかったのかもね」


「マジかー、まあ今回は仕方ないって事で。それより、姫野さんがいると色々大変かもしれないけど、どうか見捨てないであげてくだせぇ」


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。冬華はみんなで守ってあげるから。鹿島君も安心して遠足楽しみなさいよ」


「うぃーっす! 田邊さん達も楽しんでー」


 田邊はやはり、出来る委員長みたいな感じがして頼りになる。


 中間もクラス一位の学年二位と、マジで頭が良い事もわかったから、青島には本当に頑張って欲しい。


 だから、本当なら青島と一緒に行かせてやりたかったけど、今回はクラス全体でちょっとでも楽しい遠足したかったので、また次の機会と言う事で。


 それなりの関係が出来上がっている俺ら七人の中に、いきなりポツンと入って来た誰か一人と言うのは、正直あんまり居心地がよくないだろうしな。


 そいつが遠足楽しめないって状況になったら可哀相だから、今回ばっかりは仕方ない。


 とは言え、二年の遠足は生徒で行き先決めるとか聞いてるから、来年の遠足は吉永と行きたいかなー。


 そんなこんなで班決めが終わって過ごしているうちに、あっと言う間に高校最初の学校行事である遠足の日がやってきた。

吉永の方だからな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目を通してくださりありがとうございます。
もし気に入ってくださればブックマークや評価をいただけると嬉しいです!
他の作品も目を通していただければとても嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ