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第33話 大切な事は一つだけなのかな


 中間テストの全日程が終了した放課後。


 部活が再開した事で飛び跳ねている人達や、テストから解放されてほっとしている人がいる教室。


「ハイ集合ー」


 そんな放課後の教室で、チーム青島は俺に召集されていた。


「なになに?」


「どうした、蒼斗」


「どうしたもこうしたもないって。遠足のグループは八人一組らしいじゃん?」


「ああ、さっき先生が言ってた?」


「テストの話でもすんのかと思ったわ」


「終わったテストなんて、どうせ答案返って来たら嫌でも復習するんだから今はいいんだって。誤答率の高い問題は先生が説明してくれるだろうから、そんな事に時間割くなら他の勉強した方が良いっしょ」


「相変わらず切り替えはええな」


 ざわざわと五月蠅い放課後の教室で、帰る振りをした俺と青島と服部は少しだけだべる。


 深山高校の面倒臭い所は『自由!自由!』とか『青春!青春!』とか言う癖に、放課後の教室で遊んでいると『遊んでいる暇があるなら勉強しろ』だの『元気があるなら部活を頑張れ』だの言われる所じゃないだろうか。


 そのせいか放課後の溜まり場が無い。


 て言うか、わざわざそんな事を言われなくても、深山の生徒の場合は勝手に勉強してると思うけどな。


 チーム青島も暇があれば勉強はしてるから、言われなくても皆勝手に勉強はするんだからさあ。


 放課後ちょっと集まって喋るくらい許してくれてもいいのに、とは思う。


「そんな事より、八人ってどうするよ?」


「うん? どうするって、何が?」


「馬鹿野郎康太! 算数まで出来なくなったのか!?」


「え? は? は?」


「康太、服部、俺、篠原さん、田邊さん、吉永、姫野さん。全部で七人しかいない。こんな単純な足し算もできなくなったなんて、俺は悲しいよ、康太」


「いや出来るわ! 質問の内容がわからなかっただけだからな?!」


 俺と青島のやり取りを見た服部がゲラゲラ笑っているが、確かに今のは俺の質問が悪かったと理解している。


「まあまあ、冗談はさておき八人ってどうするよ?」


「誰か一人誘うのが無難じゃないの?」


「そんな事言ったら皆仲良い奴とグループ組みたいんじゃないか? 俺らの中に一人だけ入ってくれませんかー、みたいなの可哀相じゃね?」


「俺も服部と同意見。そんな都合よく入ってくれる人が居るとは思わないんだよなー」


「だよな。班決めって、結局誰かのグループが折れて仲良い連中と分裂して、その他のグループ散り散りになる所あるよな。人数完全に固定すんのもどうかと思うわ」


 俺がそう言う人間じゃないからと言うだけかもしれないけど、遠足や修学旅行や運動会でぼっちな人が浮く、と言う印象は全くない。


 ぼっちだ何だと言っている人達も、皆一人か二人くらいはちょっと喋る相手が居たりするんじゃないだろうか。


 だけど、そのちょっと喋る相手にも他にちょっと喋る相手が居たりして、結果的に誰かが割を食っているだけなんだと思っている。


 そもそも、深山の生徒は全体的にアオハルでハッピーな頭をした連中が多いから、壊滅的にコミュニケーションが取れない生徒ってのは、あまり居ないような気がする。


 大体みんな仲の良い人達二人か五人くらいでグループを組んで話していると思う。


 となるとやはり、班決めの際にはそんな仲良しグループの誰かが割を食う事になる。


「俺もそう思うけど、学校には学校の都合があるだろうしなー。グループの人数が固定されてるのも仕方ない側面はありそう」


 遠足とか修学旅行のグループが細分化したら、管理する側からすると大変だろうしなー。


「そうなんだろうけどさー」


「それじゃ、蒼斗と服部が問題なかったら、吉永さんと篠原とは今回別のグループ組むか?」


「と言うと?」


 俺は簡潔に返事をして、服部は黙って顎を動かすだけで青島の話を促す。


「いつものメンバー七人にプラスで一人ってのもありなんだろうけど、その一人だって他に一緒に遠足回りたい相手がいるんじゃないか、って話だろ?」


「そうそう」


「だったら俺らは俺ら三人で、どっか他の五人の仲良し組と合流してさ。そしたら、田邊ん所も俺ら居なかったら四人だから、同じく四人くらいの仲良いチームと班作れるんじゃないかと思って」


 スマホを手に持ちながら話す青島から視線を外した俺と服部は、互いに軽く目を合わせた。


 俺としてはそれも有りだと思ってると言うか、そう思ってこの話をしていたまである。


 俺ら七人の所に誰か一人が入って来たとして、もしもその一人が居心地悪そうにしていたら、その一人もそうだけど俺らだって遠足を楽しめないだろう。


 ……まあ、姫野が居るからそんな可能性は万に一つも無いんだろうけど、あいつマジで誰とでも仲良くなるし。


 とは言え、最初から俺ら七人組が三人組と四人組に別れれば、班決めの選択肢はぐっと広がるわけだから、そうなれば他の仲良しグループとも組みやすくなる。


 そしたら、最初からギクシャクした空気になる可能性は完全に無くなるわけだ。


 チーム青島のように、このクラスの他に居る五人組の仲良しチームと合流すればどっちのチームも楽しいし、どっちも楽しんでいるから仲良くもなりやすい。


「うん。俺はそれでいいけど、服部は?」


「遠足のグループなんて俺はなんでもいいんだけど……。康太も蒼斗もそれでいいのか? なんつーか──」


 顔は動かさず、視線だけを吉永や田邊の居る方向に向けた服部の言いたい事はわかる。


 だけど、俺はその辺の事を色々考えた上で、それでもいいと思っている。


 それに、俺だけじゃなくて青島も、たぶん──。


「別にいいよな? 康太もそれでいいから言ってるだろうし」


「だって遠足だろ? 難しい事考えるより何も考えないで楽しい方がいいよな?」


 お互いに『なー!』と言って笑い合う俺と青島に、少し遅れて溜息をついた服部も笑った。

誰がそんな事を決めたんだろう

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