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第18話 今だけのボーナスステージは


 友達ってのは何処から何処までが友達で、男女の友達はどうすれば恋人になるのだろうか。


 と言う……だから何? と言いたくなるような物凄く下らない事を考えながら、吉永と並んでの帰宅。


「田邊さんと康太いい感じだよな」


「だねー。どっちもしっかりしてるし、良い委員長って感じ。でも、クラス引っ張ってくのは田邊さんだよね」


「中学でもずっと委員長してたって言ってたしな。その辺の慣れもあるだろ。吉永も中学でずっと委員長してたみたいだけど、高校では良かったのか?」


「別にいいよ、そんなの。小学生の時は自分からやってた事もあるけど、中一と中三は冬と同じクラスだったから今日みたいな感じで決まっただけだしね」


「なるほどなー。あれ? じゃあ、中二の時は何で委員長になったんだ?」


「中二の時は……なんて言うか。まあ、三好がやるって言ったから、じゃあ私もやるかー、みたいな? 三好がやるから委員長やるとか、今考えると恥ずいよね、あはは!」


 三好かー、まあ別にいいけどさ。


 でも、三好かー。やっぱ三好だよなぁ。


「あー、まあ、中二の時は三好と同じクラスだったのか。なるほどなー。でも、中三の時じゃなくて良かったのかもな」


「ねー! ホントだよー。中三は別々で良かったかも」


 そんなに嬉しそうな笑顔を浮かべちゃってまあ。


 そりゃあ吉永が笑ってくれてるなら、それが一番だけどさ。


 毎度の事ながら楽しそうに笑ってる理由が三好だと思うと、中々にしんどいな。


 それでも、泣いているよりはずっと良いか。


 一瞬下に向きそうになった視線を無理矢理上にあげた俺は、吉永に合わせて笑顔を浮かべる事にした。


「あー、でも、ほら? 中学の時は鹿島とは一度も同じクラスになれなかったけど、うちの高校は一二年クラス固定だしさ。その、まあ、ほら? 二年の時は田邊さん達に譲って貰って委員長やってみる? 私達も同じ中学だし」


「んー、まあ、俺はいいかなあー」


「だよねー! 別に委員長なんて楽しいわけでもないしねー」


 最初から脈とか無いってのに、ちょっと一緒に帰るくらいで喜んだり、楽しそうに三好の話をされる度に凹んだりと。


 深入りはしない、諦めようと思っている癖に、一喜一憂して。


 我ながら中々にダサいと言うか、イタイと言うか。


 いつか好きな人が出来たら、大人な感じで余裕のある男でいよう!


 とか考えていた事もあったと思うけど、まさか自分がここまで女々しい男だったとは……。


 まあ、考えた所でどうしようもない事は置いておくとしてだ。


「でも、委員長はともかくさ、康太と田邊さんが上手く行けばいいよな」


「え? なに? 何が?」


「何がって。……昨日のファミレスでの康太見てたら、何となくわかるだろ?」


「え? ……え? そうなの? 青島君ってそう言う感じ?」


「気付いて無かったのか? あんなバレバレってか、あからさまな態度見てれば誰でもわかるって。昨日の夜、服部にリリンクで聞いたら肯定も否定もしなかったから、まあ、多分そう言う事じゃないの」


「うっそ、うーわ、ヤバぁ。あ、だから青島君推薦してたんだ?」


「そゆこと。良い仕事しただろ?」


「ナイスアシスト!」


 姫野が居ると出来そうにない話だからか、吉永のテンションは目に見えて上がった。


 何にせよ、吉永が楽しそうなら俺としても嬉しいから、これでもいい。


 三好の事とか難しい事は、あんまり考えないようにしよう。


「でも、田邊さんは強敵かもねー」


「だなー。康太には頑張って欲しいけど、どのくらいまでお節介していいのかわからん。俺は服部に聞くから、吉永はその辺篠原さんと話ながらよろしくー」


「おっけー」


 校舎を出て、深山の生徒で溢れ返る最寄り駅へ向かう帰り道。


 今は入学直後だから、同じ中学出身者同士で集まる事も多いけど、これから先、この関係も大きく変わって行くのだろう。


もしかしたら、吉永と二人で帰宅する機会も、もうそんなにないのかもしれない。


 今は姫野冬華ばっかり目立っているようだけど、高校生活に慣れて少し落ち着けば、吉永がめちゃくちゃ可愛い事だって皆が再認識するだろう。


 姫野が駄目なら吉永を狙おうとか、そんな事考える奴も出てくるかもしれないし、どんどん人気になっていくんだろうなー。


 折角の新学期だと言うのに、どうしても後ろ向きな事ばかり考えてしまう俺の口からは、気が付けば無意識に溜息が溢れ落ちていた。


「大丈夫? 鹿島、なんか疲れてる?」


「ん-、まー、人並みかなー」


「なにそれ、よくわかんないんですけど」


「普通って事だよ」


 吉永と居られるのは嬉しいけど、ちょっと辛い気持ちもあると言う、面倒臭い心境。


「紅葉ー! 紅葉ー! 紅葉っ!!」


 だから、こう言う時は何も考えてない元気な奴が居てくれると、気持ちが楽になる事もあるのかもしれない。


 教室から走って来たのか、俺達の後ろには息を切らした姫野が居て、吉永を見つけて嬉しそうに笑っていた。


「一緒に帰ろうよおー! なんで先帰ったの? 鹿島君も酷い!」


「悪い悪い。てっきり他のクラスの人達と遊びに行くのかなとか思って、な?」


「だねー。遊んで来て良かったんだよ?」


「うん、だから紅葉と鹿島君が一緒ならいいよって言ったんだけど、そしたら二人共居なくて焦ったよー、酷いよぉ」


「ごめんごめん。冬なら大丈夫かなーって」


 三好が吉永を振った気持ちはわからないけど、姫野が居ると強引に元気にさせられる気持ちは、まあ、わからなくもないかも。

嬉しいけど、ちょっとしんどいかな

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