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第17話 とりあえず帰ろうよ


 課題テストやクラスの委員決め等々、色々あった高校三日目は少しお昼を回っていた。


「今日から部活体験期間らしいけど、康太も服部も結局どこ行くんだ?」


 帰宅時間になった俺は自然と青島と服部と集まって話をしていた。


「んー、俺は野球しないってなると他に入りたい部活もこれと言ってないんだよなー。だから考え中」


「俺は剣道って決めてるから部活体験はどうでもいいかな。さっさと入部するつもり」


「幼稚園の時からやってるんだっけか。すぐ本入部する感じ?」


「入部届はすぐ出すし練習も参加するつもりだけど、どうせ一年は四月いっぱい仮入部みたいなもんで五月……ってか、ゴールデンウィーク明けから本格的な始動になるだろうしなー」


「て事は、四月はちょっとゆっくり?」


「いや、服部は道場行って稽古だろ?」


「そそ。地元の道場の方で稽古かな」


「おおー」


 服部宗一郎は幼少期より剣道一筋らしい。


 しかも、そこそこ、いや相当に強いらしい。


 全国で一位二位を争うレベルで強いと言うのは青島が教えてくれた。


 剣道に関してたいした知識を持ち合わせていない俺にはあまりわからないけど、何か一つの物事に打ち込んでいる人は、やっぱり格好良いと思う。


「でも、篠原は女バスなんだっけ。二人共部活してたらあんま遊べないんじゃないのか? 寂しくね?」


「ん? あー、彼氏彼女つっても四六時中べたべたくっついてるわけじゃないっての。他のがあんまよくわからないから何とも言えないけど、俺と愛実んとこは子供の頃から家族ぐるみで付き合いあるから、学校は別にって感じなだけかもだけど」


「ああ、それでなんて言うか、割とさっぱりしてるって言うか、落ち着いてるって言うか。幼馴染とかそんな感じなのか」


 服部の余裕はそう言うところから来てるのかな。


「付き合い始めたすぐの時の事は俺もよくわかんないけど、俺が中二で服部と同じクラスになった頃にはこんな感じだったぞ」


「冷やかさたり茶化されたりってのもあんま無かったしな、俺と愛実の場合。だからいつも通りにしてただけだって」


 いつもくっついているわけではないけど、なんだかんだ最終的には隣に居て、それが当たり前な関係。


 やっぱ、幼馴染って普通に強くね。


 吉永と三好もこんな感じなんだろなー。


 俺なんていっつも吉永の事考えてて、どうにか話し掛けたり一緒にいられる口実を探してるのに。


 服部のこの落ち着きようと言ったら……。俺も余裕のある大人の男になりたいものだ。


「服部は剣道として、蒼斗は料理倶楽部だっけ?」


「だなー。サッカー以外ってなると何処も一緒ってか。マジで何処でも良かったんだけど、深山の部活見た時に一番興味出たのが料理倶楽部だっただけだな。康太はまだ何処入るか決めてないんだろ? 料理倶楽部とかどうよ」


「それも有りかもなーとは思うけど、とりあえずは部活体験の間に色々回ってから判断するわ」


「てか、料理倶楽部って何する部活なんだ?」


「逆に料理以外にやる事があると思うか、服部?」


「……確かに、今のは俺の質問が馬鹿だったわ」


 そんな感じで、俺と青島の席の近くでベラベラと喋っていた俺達が、今日は直帰するか何か食べて帰るかとか、そんな話題に入ろうとした頃。


「今日どうする?」


 有り難い事に、吉永が声を掛けて来た。


「どうって──」


「ご飯行くなら私も行くよ! 紅葉も!」


「──って事みたいだけど、どうする?」


「俺はちょい剣道部に挨拶してくるから、今日はパスだな。姫野さんも吉永さんも、康太も蒼斗も、また今度行こうな」


「ういーっす。またなー」


 そう言って自分の席に戻った服部が、ひょいと鞄を持ち上げると、いつの間にやら横にいた篠原と一緒に二人並んで教室を後にした。……自然過ぎるだろ。


「青島ー? ちょっと来てー、学級委員長なんだからこっち手伝いなさいよ」


「え? あ、悪い! 仕事あるならやるから! って事で悪い蒼斗、姫野さんも吉永さんもまた!」


 そして、青島はどうするかと話し掛けるよりも前に、さっきまで廊下で先生となにやら話していた田邊が青島を連れ去ってしまった。


「そう言う事らしい」


「あららー、だ。それじゃあ他の人誘ってみるね!」


「はいよ。でも、俺も今日の所はこのまま帰ろうと思うから、行くなら吉永と姫野さんで行って来なよ」


 クラスメイト全員と友達になれるのなら、それがベストではある。


 だけど、交友関係を一気に広げ過ぎると、確実に疎遠になる者が現れるからな。


 折角最初に話した事もあるから、青島と服部とは三年間通じて仲良くしたい。


 なので、まずは二人とちゃんと仲良くなって、それから次だ。


 男子ではないにしても、篠原と田邊ともしっかり仲良くなっておきたいしな。


 残念ながら、姫野みたいに百人一気に友達になれる程に、俺の器はデカくもなければ器用な人間でもない。


 周りに振り回され過ぎても良い事はないだろうから、自分のペースで行こうと思う。


「あ、ん-。じゃあ、田邊さんも篠原さんも来ないなら、私も今日はいいかな」


「えー! だったら私も紅葉と鹿島君と帰るよー!」


「おっけい。そんじゃ、決まった所で今日は帰るか」


 吉永が不参加を表明するや否や、姫野が即決。


 今日はこのまま三人で真っ直ぐ帰宅だなと、そう思っていたんだけど。


「姫野さーん」


「はい!」


 だが、誰かが姫野に声を掛けて来た事で状況が変わる。


 誰に呼ばれたのか知らないけど、姫野の反応速度凄いな。野生動物かよ。


「隣のクラスの人がリリンクのID交換しよーって、来てるよー」


「しよしよー!」


 何処から聞きつけたのか、聞くまでもなく単純に目立つからか。


見ると、他のクラスの一軍と覚しき男女が、扉の外で待機でしている様子が見て取れる。


 姫野はそんな初対面であろう人達の下に小走りで向かうと、スマホを突き合わせて心底楽しそうに話を始めた。


「さ、私達も帰ろっか」


「ん? え? 姫野さん待たなくていいのか?」


「なんでよ。冬だって私とずっと一緒にいるわけじゃないからね? 他の友達と遊ぶ事もあるし、一人で買い物くらいするから」


「あ、それもそうか」


「一応リリンクにメッセ入れとくから、大丈夫でしょ。冬も高校生だしね。色んな子と話してるうちに新しい友達も出来て、もしかしたら好きな人が出来るかもしれないじゃない」


「それは確かに。こんだけ男子がいるんだから、いい感じの奴も居るかもな。悪そうな奴だった場合だけ、俺達で何とかしてやろう」


「うん、だね。折角の高校一年生なんだから、新しい出会いの邪魔は良くないって。……だから、私達は行こっか」


「おっけおっけ」


 と言う事で、俺と吉永は姫野が話している教室の後ろ側のドアではなく、前のドアからこそこそと退室した。

二人で。ダメ?

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