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第114話 演目の決定


「それでは、先程のアンケート結果が纏りましたので新しい画像を送ります」


 その後、ミヤちゃん先生と俺達の間で少し言い合いをしつつも、弛緩した教室の空気は田邊の一言で再び引き締まる事に。


「アンケートはいくつかを除いて基本的にYES or NOで答えられるものにしました。ですので、今回の結果を見てもらえばクラス全体としての意見がわかり易いかと思います。えーっと、それじゃ青島はアンケート結果のコレとコレと、あとコレ。上から順に黒板に書いてってくれる?」


「オッケー」


 タブレットに送られてきた画像には、先程答えたアンケートの結果が纏めてあった。


 それぞれのアンケートの下にYESとNOがぶら下がっていて、YESが何人、NOが何人と言った具合に、ぱっと見るだけでわかる棒グラフになっている。


 俺こんなのすぐ作れるかな……。


 もっとパソコンの勉強もしていかないと駄目かも。


「はい。それでは黒板に注目して下さい」


 ハイスペックな田邊に感心しながら、タブレットの画面と板書している青島を交互に見ていくと、何とも言えない一組らしい結果が浮き彫りになった。


「狙うなら最優秀賞、その為の努力であれば惜しまない。これに対する回答はYESが40人ですね」


 田邊の指示の下、青島が黒板に書いているアンケート結果には一つの共通点がある。


「次に、有名な作品を演じるのも良いが、自分達らしい作品があればそれが一番だと思う。これに対する回答もYESが40人ですね」


 答え易い簡単なアンケート。


 その全てに意味があったかどうかはわからないけど、田邊の言いたい事はなんとなくわかってきたかもしれない。


「最後に、宮祭でする和装が楽しみである。ですが、これも40人全員がYESに回答しています」


 無数にあったアンケートの中から、クラスの意見が完全に統一されているものだけが、青島の手によって黒板にデカデカと書かれていた。


「多数のアンケートに回答して貰いましたが、40人全員の意見が揃ったのはこの三つだけとなっています。──ですので、私達一年一組の宮祭はこの三つを土台に組み上げて行きたいと思いますが、異論はないですね」


 全員がYESと回答しているのだから、そこに異論を挟む余地が無い事は当然で、であればそれを軸に話をしよう、と。


 田邊の言葉に思わず頷いてしまった俺だけど、恐らく教室に居る皆が頷いたのではないだろうか。


 マジで凄いな田邊、色々先の事を考えて動いてるんだな。


 なんも考えずにアンケート答えてたわ……。


「では、話を進めますが……まずは文化祭の演目から決めて、その次に体育祭の話しに移りましょうか。先に体育祭の出場種目を決めてからでも良いですけど──」


 言いながら、田邊がゆっくりと永井淳也と城内莉子の体育委員二人を見るが、二人共に首を縦に振った。


「体育祭の方は俺等も委員長見習ってアンケート作ってみるから、次の機会でいいですよ」


「先に文化祭の話し詰めていこー!」


 宮祭は文化祭と体育祭と後夜祭があるが、どれが一番盛り上がるかと言えば間違いなく文化祭だろう。


 それを理解しているであろう永井と城内は、潔く田邊に時間を明け渡した。


「──はい。二人共有り難う御座います。もちろん、そっちのフォローもするので、いつでも頼って下さいね」


 なんて頼りになる委員長だろうか。


 格好良過ぎないか?


「では、まずは文化祭について皆で話し合いたいと思います。ですが、話し合いの前に思い出して欲しいのが黒板に書かれたこの三つのアンケートです」


 一つ、狙うなら最優秀賞、その為の努力であれば惜しまない。


 一つ、有名な作品を演じるのも良いが、自分達らしい作品があればそれが一番だと思う。


 一つ、宮祭でする和装が楽しみである。


 思い出すも何も、黒板にデカデカと書かれているので忘れようがないけど、この三つを土台に組み立てる。……って、どうするんだろうか?


「この三つのアンケートを見て最初に思い浮かんだ意見を出しつつ、劇の内容を決めていきましょう。そうでね、たとえば私が最初に思い浮かべたのは、和装の劇なので……竹取物語、かぐや姫、ですかね? こんな感じで、ぱっと思い浮かべた意見を自由に出してくれて構いません。もちろん、和装に拘らずやりたい劇があれば、それを挙げるのも大歓迎です。──では、意見のある人は挙手をお願いします!」


 いつも冷静で落ち着きのある田邊が、やる気満々と言った笑顔を浮かべている様子を、隣に立つ青島が嬉しそうに見ていた。


 そう言えば、初めて皆でご飯食べに言った時も、宮祭の話しをする時だけ田邊のテンションちょっと高かったっけ。


 四月初めの話しなのに、なんか懐かしいな。


 俺がそんな事を考える間も教室での話し合いは白熱していって、そうして短くない話し合いの末、俺達一組の演目が決まった。


 黒板に所狭しと書かれた、様々な作品の中の一つ。


 青島が手に持ったチョークでぐるぐると円で囲った作品の名前は──。


「──それでは、私達一年一組の劇は『源氏物語』に決まりました。ここから話しを煮詰めていきましょう!」


 ロミオとジュリエットや不思議の国のアリス等々。


 海外発の超有名作品の名前も多数挙がったものの、最終的には和服の映える作品へと話が纏まった。


 それにしても源氏物語か、誰が光源氏やるんだろ。


 そうだなー、俺にとっての紫の上は吉永だとして……いや、吉永は葵の上か?


 いやいや、それはないか、葵の上ではないよな。


 でも、だとしたら誰だ?


 藤壺は違うし女三の宮はもっと違うから、やっぱり紫の上しかあり得ないけど……。


 そもそも俺は、光源氏みたいな夜の暴れん坊将軍みたいな男じゃないから、前提がおかしいか。


 当時の恋愛観はわからないけど、仮に俺が光源氏なら紫の上を悲しませるような真似はしたくないかも。


 そんな呑気な事を考えていられたのもこの時までだった。

だけど、光源氏って現代の倫理観で考えればとんでもない奴じゃないか? 

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― 新着の感想 ―
そりゃ現代ならとんでもないヤリチンクソ野郎ですよ と思ったけど皇族だからむしろ男性皇族増やしてくれって 裏で持ち上げられる可能性あるな…
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