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海の子の大冒険

 海の王様には、たくさんの 元気で 明るい 小さな 小さな 子供たちがいました。

 子供たちは お塩の帽子をかぶり 王様の大きなおなかの上で いつも遊んでいたよ。

 ざぶーん それー ざぶーん ざざざざざー そーれ ざっぶーんと こんな感じで。

 タイやヒラメも カメやカニも クジラやイルカも みんな仲良く ざっぶーんだー。

 あははは あれ太陽さん お空でひとりはさみしくないの みんなで一緒に遊ぼうよ。

 おやおや元気な海の子たちだね どれどれお兄さんが タカイタカイをしてあげよう。

 太陽のお兄さんはそう言うと 海の子たちを ぐいんぐいんと 空高くほうり上げた。

 うわーい たかーい 海の子たちは大喜び 太陽のお兄さんはどんどんほうり上げた。

 その時、いきおい余って お塩の帽子がぬげてしまったことに 誰も気が付きません。

 そこへ 南風さんがぴゅーぴゅーと 舞いあがった海の子を 陸へ吹き飛ばしました。

 うわー こわいよー 海の子たちはひっしにお互いの手を伸ばしあい握りしめました。

 すると どうでしょう いつの間にかに 海の子たちは 小さな雲になっていました。

 今度は陸地から なつかしい海の子が もももももと 大勢お空に上がってきました。

 陸地にいた海の子たちも 太陽さんに 特大のタカイタカイを してもらったのです。

 お空に集まった海の兄弟は みんなで仲良く手をつないで 空高く上ってゆきました。


 買い物帰りのお母さんと 手をつないでおしゃべりしていた女の子が 顔を上げると。

「うわっお母さんみてみて、おっきな雲だよ なんだろうすごいね 私 はじめてみた」

「あれは入道雲って言うんだよ 夏だねー でも急いで帰らなくっちゃ もうすぐ雨よ」


 君たち どこから来たの? いつからこっちにいるの? 海へは いつ帰れるのかな。

 僕たちは ずっとずっと前に飛ばされて お山のてっぺんに落ちて それからずっと。

 ずーっとずーっと迷子なの。 森を抜けて 集まって 谷を降りて また上げられて。

 不安になった海の子はとうとう泣き出した。 うぇーんうぇーん 海へ帰りたいよー。

 ピカッ ゴロゴロゴロー こらー! お前たちうるさいぞー 雷様が飛び込んできた。

 キャー びっくりして 海の子たちは 隣の子とつないでいた手を 離してしまった。

 おや すまない びっくりしたね おうちに帰りたい? それなら川を目指しなさい。

 雷様はそう言うと どん がん しゃん どん がん しゃん 黒い雲を吐き出した。

 ブルブルブル 仲間とはぐれた海の子は 急に寒くなって だんだん体が重くなった。

 ぽつり ぽつり ザー ザー 手を離した海の子から どんどん地上に 落ちて行く。


 地上に落ちた海の子は 近くの仲間と 手を取り合って 屋根や 地面や 道路から、

 川へ 川へと 急いで急いで お家へ 海へ 海の王様の大きなおなかへ 帰るのだ。

 だんだんと 海の子たちは集まって 小川になって 時にはビルの下の暗闇を通って。

 大きな 大きな 川になって 魚もすいすい 泳いでいるよ なんだかなつかしーな。

 ボー ボー あっ 汽笛が聞こえた 海だ 海だよ なつかしい 磯の香りもするよ。


 海の王様は 大きなお腹を ゆらゆら ゆらして 海の子たちを 迎えてくれました。

 おやおや 海の子どもたち おかえりなさい。 とっても とても 大冒険だったね。


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