両手を広げて受け入れて
私は冬が好きです。空気が静まるから。でもやっぱり好きじゃない。‥それは過呼吸症が起きやすくなるからです。いいやでも好き。だって槇原敬之の歌は秋から冬のものが多くないですか?夏も冬も好きなようにも聴こえます。
冷たい空気を吸ってほんの少し暖かくして吐く。夏は汗のことばかり気が向くけど冬は息かなと思う。体から出たものが目に映り形が見える不思議な季節。雪ばかり降る地域でいきてきたので空の色は灰色の日が多いことも何かに覆われて閉塞感もあることも。山も木も屋根も電線さえ白。道も車も人の吐く息も白。夜の空は色濃くて雪が白く白く、風が強く吹けば空間そのものが真っ白で前へ進めないほどの雪。
私は真っ白なものばかり見て大人になった。一年の3分の1は寒さを感じながら過ごしました。もう冬は充分だと南国へ住み着いたこともありました。そこでは一年中名前をつけきれないほどの青を見て生きました。青にはたくさんの種類があって雪国には存在しない青があると知りました。そして海の上を飛ぶ真っ黒な蝶々も。
なんの因果か今年の私たちは白い世界で暮らす予定です。過呼吸症が付きまとうネガティブなイメージの強いこの土地で。今から少し気が重い。だけど子供の頃広い庭で雪の中へ倒れ込み空を見上げてただひたすら落ちてくる雪を眺めたことを思うとまた冬と仲良くなれる私に還れる、そんな希望もあります。あの頃過呼吸なんて言葉も耳にしなかった。私は冬とも仲良しで夏も疲れたと言いながら毎日プールへ行きました。先日子供と行った綺麗なプールではなくて底が緑色だったことも溺れそうで怖かったことも体に覚えています。夏も冬も鮮明な思い出が残り、それは病気に苦しむ私へ抜け道を指し示してくれる。そんなことを思いました。
今年の夏もきっと残り僅かなのだろう。この夏ともっと仲良くなって次の季節へ行きたいのです。