エピローグ
なんとか完結しました。
いや~~辛かった、でも楽しくもあったという感じです
読んで下さる方が居たから書き続けられたのだと思います
読んで下さった方、感想を書いて下さった方ありがとうございました
「はっ」
樹は意識を回復した
周りを見ると何となく見覚えのある安アパートの玄関に前のめりで倒れていた
「まさか、あれは夢だったのか?」
その時、上から変な声が聞こえてきた
「ゴシュジンサマ ノ イシキカイフク ヲ カクニン。チリョウ ヲ シュウリョウシマス」
樹は声が聞こえた方を見た
するとドラム缶型のロボットが、アナフィラキシーショックの対処を終え、注射を仕舞う所が見えた
「はい? どなた?」
「ワタシ ハ RSD2012型 カテイヨウ ホサロボット デス。 アイショウ ハ ドラクエモン デス」
樹は混乱していた
何故、こんなロボットがいるのか?
ここはどこだ?と分からないことばかりだった
樹は、ロボットに状況を確認した
どうやら、
樹は今の会社に就職してからずっとこのアパートで暮らしており
アパートの住所は、転生前と一緒
樹が就職している会社は、転生前に就職していた会社名と漢字一字違い
去年このロボットを一念発起して中古で購入した
家庭用補佐ロボットは、普及して20年以上経過しており、1家庭に1つは常識、持っていない家はほぼ無い
ということらしい
これらの情報から、どうやら違う世界線の現代に戻ってきたらしかった
「何でこんな事になっているんだろう?」
と樹は情報を仕入れるためTVを付けた
そうすると、甲府で祭りが開催されているというニュースがやっていた
樹は、TVの番組を切り替えようとした時、そのTVから驚くべき言葉が紡がれた
「武田幕府の設立に貢献した大英雄、岩崎大河公の没後439年を記念した祭りが開催されています」
と女性アナウンサーが現地でレポートをしていた
「はっ? 武田幕府? 徳川幕府ではなく?」
と樹は独り言を言った
それに反応したドラクエモンは回答を寄越した
「トクガワケ ハ 1572ネン ニ メツボウシテイマス」
「はぁぁあ?」
樹は、インターネットから今の世界線の歴史を勉強した
それは、驚くことばかりだった
1583年に日本を統一した武田幕府は、武田勝頼を将軍としその支配を固めた
そして、1585年に朝鮮に侵攻を開始
圧倒的な技術力と軍事力で、1590年に朝鮮を制圧
その後、信勝が2代将軍となると1610年に明を倒し志那を制圧した
さらにインドを1630年に制圧
その勢いはトルコまで到達した
そして、武田幕府は大帝国を築き上げた
キリスト教に反する勢力として世界に覇を唱えたのだ
しかし、武田幕府は内部の腐敗により156年ほど前に現政府により倒され、それに伴い大帝国も崩壊した
そして、現在は日本列島のみがその所領であった
岩崎家はというと、岩崎財閥の当主家として現存していた
岩崎財閥は、歴史の荒波を越え、今では世界の技術をリードする超大企業となっていた
因みに、ドラクエモンは岩崎財閥の一企業である岩崎技研製である
現岩崎家当主は、20代目となる岩崎大剛であった
しかし、それ以外の情報は一般常識レベルでは知ることができなかった
巴や大洋、希はどうなっただろうか?
樹は、それらが分かるかもしれないと甲府で開催されている大河公祭に出向くことにした
次の日
樹は真空リニアトレインに乗り甲府に降り立った
そして、躑躅ケ崎館跡にある武田神社に行った
そこには、武田信玄や岩崎大河の業績の展示がしてあった
だが、大河後の岩崎家はあまり歴史書には出てこなかった
武田幕府を支える武器や乗り物など、技術開発や製品開発を行っていたという記載があるだけだった
ふと、樹が歩いていると祭り会場の中心部で武田家、岩崎家に関するクイズ大会が開催されていた
なんと全問正解の場合は100万円の賞金がもらえ、たとえ満点でなくても成績上位10名に10万円の賞金が出るとのことだった
「フフフ、この俺を誰だと思っている。元、岩崎大河だぞ」
と樹は本気で賞金100万を貰うつもりでクイズ大会に参加した
賞金が出るせいか、クイズ会場は大盛況だった
会場に入った樹は、100名ほどが入れるテントの1つで解答用紙を受け取った
樹は、その人がごった返しとなったテントの中で解答用紙に解答を記入していった
設問は全部で100問
問題の内容は、小学校の歴史授業で教わるレベルから歴史好きなら大体分かるレベルの問題だった
樹は、順当に解答を記載していく
そして、100問目は
大河とその伴侶である巴の最初の出会いはどこか?
との質問であった
「これも簡単だぜ。川越の町から少し離れた川辺だ」
樹は、最後の問題だけは随分と個人的な問題だなと思ったが、これも常識レベルなんだろうと気にぜず解答を書いた
全ての問題に解答した樹は、解答用紙を提出した
その解答用紙を回収した後、少しして、クイズ大会のスタッフが騒然となった
「まさか、全問正解が出たの?」
と人々は噂をしていた
すると、突然呼び出しがあった
「23150番の方、23150番の方。いらっしゃいましたら、ご返事ください」
「はい? 俺がそうですけど」
と樹が返事をした
賞金は、この会場で採点をして、成績が足切り以上だった場合は名前と住所を記入して家に帰り、最終結果を待つという流れだった
そのため、採点されるまで会場で待っていたのだった
突然呼び出された樹は、何故呼び出されたか分からず困惑していた
実は、このクイズ大会はある人物を見つけるために開催されたものだった
大河亡き後、しばらく岩崎家の当主であった巴は生前、とある予言をしていた
”450年後のとある日、大河が現れる”と
巴は大河が亡くなってから、失望の日々を送っていた
しかし、突然大河から450年の未来から来たと言われた昔のことを思い出した
そこで巴は、大河に自分の思いを伝える方法を思い付いた
だが、大河が未来で同じ名前なのかを知らない上、大河としての意識があるのかも分からなかった
だから、自分達しか分からないことを設問にして、大河をあぶり出すことを思いついたのだ
それが、この2011年から毎年開催しているクイズ大会だった
最終問題の100問目は、歴史書にも載っていない大河炙り出しのための設問だった
そのため、正解は岩崎家の人間しか知らない
会場のスタッフすら知らない、答案用紙をコンピューターに掛け正解した時にだけ、特殊対応案件と出てくる仕様だった
そして開催し始めてからの13年間、一度も正解が出たことがなかった
だが、今回正解が出たので騒然となったのだ
樹は、会場のスタッフに連れられ、会場の近くにある建物の応接室の椅子に座って待つように言われた
2時間ほど待っただろうか
4人の女性達が応接室に入ってきた
「あなたが樹さんね?」
と一番年上の女性が聞いた
「はい、そうですけど」
と樹は何が何だか分からないといった風に答えた
「私は恵、岩崎家現当主大剛の長女です」
と一番年上の女性が言った
「へっ?」
と樹は素っ頓狂な声を上げた
岩崎家嫡流の娘たちということは、岩崎財閥のトップたちということだ
それに気付いて、何故という思いと驚きが混ざって出た言葉だった
4人の女性陣は1人ずつ自己紹介をした
今まで話していた女性は長女の恵、その隣は次女の茜、その隣は3女の遥、最後は4女の環と名乗った
樹は、4女の環を見た時、一瞬目を見開いた
それは、環の容姿が綺麗になった後の巴と瓜二つだったからだ
だが直ぐに取り直し
「山本樹です」
と自己紹介をした
「樹さんに聞きたいことがあります。クイズの100問目の答え、あれはどこで知り得たのでしょう?」
と恵が聞いて来た
樹は、
「あの設問は、常識レベルのクイズではないのでしょうか?」
と聞き返した
99問までは、ざっと調べた武田幕府の知識でも十分解答できる程度の物だったため、100問目も同じだと思っていたのだ
樹がそう言うと、恵達は驚きに目を見開いた
「そんな馬鹿なことがあるはずない! それなら私の質問に答えなさい!」
と次女の茜が言った
樹は、茜がした幾つかの質問に懐かしみながら全て即答した
それを聞いた恵は確信した
「やはり、あなたが大河さんなのね?」
と言った
「えっ? どうしてそれを?」
と今度は樹が驚く番だった
「これらの質問は、全て私達岩崎本家の人間しか知らないことだからです」
恵は、このクイズ大会が巴の遺言に基づいて開催されていることを話した
その目的は、大河を見つけ巴の遺書を渡すことだと言った
そして、樹は、岩崎家の4人と供に岩崎家代々の墓に連れていかれた
それは、甲府の地下図書館の中のそれほど広くない一室にあった
「こちらが初代岩崎家当主の大河、その妻である巴と菊の墓です」
と樹は、大河、巴、菊の3人の墓がある場所に案内された
そこには、2mほどの大きな石の墓があり、その一番下には扉があり鍵穴があった
そして樹は、3女の遥から重厚そうな鍵を渡された
その鍵を手渡された樹は、何故だか手に馴染む感覚を覚えた
「その鍵が巴さんの遺書が仕舞ってある場所の鍵です」
と恵が墓の鍵穴を指さして言った
樹は、その鍵を墓の鍵穴に差し込んで回した
カチリという音がして、鍵が開いた
「遂に開くのね」
「ワクワク」
樹が扉を開くと中に2通の書状が入っていた
その1通の書状の表には大河へと書いてあった
樹は、その書状を読み始めた
「大河へ、あなたにお話ししておかないといけないことがあります
これは、あなたに言えないままずっと隠していたことです」
という書き出しから始まった巴の独白だった
それによると、巴と静は天皇家に連なる巫女の一族出身であった
京が戦乱の最中であったため、巴と静は、万が一があってはいけないとのことで川越に身を隠したのだった
しかし、保護していた者が町に行ったきり帰ってこなくなった
食料が尽きはじめ、希望が見出せなくなってきた頃
巴は、自分を救い、地獄のようなこの世を救う者が現れるようにと三日三晩、天に祈った
とのことだった
そう、巫女の一族でも特に恵まれた才能を持っていたことと、極限状態での強い祈りが合わさったことで、未来の樹が召霊された
そしてその霊は、偶然にも近くにいた大河に憑依した
「私はあなたが450年後から来たと言った時、私の祈りが成就したのだと確信しました
同時にあなたを縁も所縁もない戦国の世に連れて来てしまったことを申し訳なく思いました
ごめんなさい、大河。私があなたを未来から連れてきてしまったのです」
「そうか、そういうことだったのか」
と樹は自分が戦国時代へ転生した理由を理解した
そして、続きを読み始めた
「でもあなたは、そんな状況の中でも絶望せず、未来への道をどんどん切り開いていきました
いつしか、あなたと居るとワクワクして、楽しくて離れられなくなっている自分が居ました
あなたと居ればこの地獄の世も楽しかった
でも、あの日遂にあなたが居なくなってしまいました
ああ、私の願いを全てを叶え終えたから去っていってしまったのだと悟りました
でも本当はずっと一緒に居て欲しかった
行かないで欲しかった
でもそれは叶わない願いだと分かっていました
ならば、来世、もし来世があるなら、その時はずっとあなたの側に居たい
ずっとあなたの側に居させて欲しい
もし、あなたが私を許してくれるなら、来世で一緒になりたい
それが私の願いです
生きる時代が違っていても、大河、あなたを心から愛しています
巴より」
いつしか、樹の目から涙が溢れていた
「俺だって巴と居れて楽しかった
困難だって巴が居たから乗り越えられたんだ
召喚されたことだって感謝しているくらいだ
俺もずっと、いや今でも巴を愛している
もし、来世があるならば、今度こそ一緒になろう」
と樹は涙ながらに強く念じ言った
と、そこで奇跡が起きた
目的を達成した大河(樹)に八百万の神達から褒美が与えられたのだ
だが、樹はそれをまだ知らない
実は、巴の言うことは間違っていた
それは、如何に優れた巫女であろうとも召霊し続けられるのは1時間が限度であるということだ
樹も1時間程度、大河の体に入り込み、そして出て行くはずだった
そう、夢であったかのように
だが、この強い祈りと召霊に八百万の神達の一部が気付いた
八百万の神達は、キリスト教が日本で勢力を拡大し始めていることに危機感を持っていた
それは、この国の民がキリスト教になってしまえば、自分たちが消え去ることになるからであった
そのため、八百万の神達もキリスト教を排除してくれる救世主を求めていたのだ
そこで、丁度良い所に救世主を召霊した巴に、渡りに船とばかり八百万の神達は力を貸した
こうして、樹は大河に憑依し続けることが可能となり、神の力を借りてネットショッピングというスキルを使えるようになったのだ
だが、全てが終わりキリスト教が排除されると、八百万の神達は力を貸すことを止めた
そうして樹の魂はこの世に留まることができず、未来へ帰っていった
それが真実であった
1つ目の書状を読み終えた樹は、もう1通の書状を読み始めた
”我が子孫に、これを要望します”
と書き出しから始まった内容は驚愕の一言だった
その内容を樹が言うと
次女の茜が樹から書状をひったくって読み始めた
そして、天を仰いだ
「なんてこと」
そこには、何と岩崎家の当主の座を大河に譲れという内容であった
現在の岩崎家は全世界で圧倒的なトップオブトップであり
その資産価値は天文学的数値であった
巴は、それを譲れと迫ったのだ
流石に、その要望を見た姉妹達は絶句していた
そして、敵対的な目で樹を見始めた
「流石に、それを要求するつもりはないよ」
と樹は言った
樹は、自分が世界一の大財閥のトップになるという重責を担えるとはとても思えなかった
安心した姉妹は、賞金の100万円を出すことでこの件を終わらせようとした
とそこで、4女の環が言った
「お姉さま、流石に100万円だけでは大河さんの功績に報いたとは言えませんよ」
「では、どうすれば良いと言うの?」
と恵が聞いた
「私が、樹さんに嫁ぎます」
と環が驚くことを言った
「珍しいわね。環が自分から意思を表明するなんて」
と恵は訝しんだ
環はいつも親や兄弟の言うことを聞くだけのお人形のような子であったのだ
「はぁ? 環、良いの? そんなうだつの上がらない地位もお金もないような男に嫁ぐなんて」
と茜は大変失礼なことを言った
そういう本心を、本人の前で言うのは止めた方が良いのではと樹は思った
「良いのです。これで巴さんも満足されます」
と環は言った
「あなたがそれで良いのなら、私達は何も言うことはないわ。お父様にもそう言うけど良いのね?」
と恵が言った
それで良いと環は言った
そう決まると環を残して3姉妹は帰って行った
残された樹は環に聞いた
「何故、こんな事を?」
樹は、地位もお金もない、ただの一般人である自分に嫁ぐと言う環が、どういう魂胆なのだろうと思った
2人きりになると環は
「大河、会いたかった」
と突然抱きついてきた
そう、奇跡とは、八百万の神達が輪廻の輪の中にいた巴の魂を拾いあげ、環に憑依させたことだった
「まさか、巴なのか?」
と樹は言った
「そう、何故か分からないけど、気付いたらここに居たの」
と巴は言った
「でも良く俺が大河だって分かったな?」
と樹は聞いた
「魂が大河と同じだったから」
と巴はその理由を言った
「魂が分かるのか」
と樹は驚いた
「でも、俺はこの世では何の力も持ってないし、地位だってお金だってない。それなのに、一緒に居てくれるのか?」
と樹は心配しながら巴に聞いた
今の樹は、戦国時代の大河とは違いネットショッピングのスキルも使えないただの一般人なのだ
「当然よ。でも大丈夫。八百万の神達が大河に力を貸すって言ってるわ」
と巴は不思議なことを言った
すると、樹は大河であった時と同じ力が自身に宿ったことを感じ取った
そしてステータスと唱えウィンドウを開いた
そこには、楽市楽座が以前と変わらぬ様子で起動を待っていた
「楽市楽座を起動」
そう樹がそう念じると楽市楽座が起動した
「イラッシャイマセ。楽市楽座へようこそ」
と見慣れた画面が表示された
そして、中身を見て驚いた
そこには、何故か202X年ではなく247X年の品物が売られていたからだ
巴にも楽市楽座の画面が見えているらしく
「それが大河の能力だったのね。でもこれでこの世でも成り上がれるわね」
とのたまった
樹は、巴の言葉に驚きながらも
「そうだな。良し、一緒にこの世で成り上がるか!」
と巴に手を差し出した
「うん!」
巴は樹の手を強く握った
完
なんとか長編を完結させたことで初心者の看板を降ろそうと思います
お前なんかまだまだ初心者だ?
そ、そんなご無体な
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