6話 餅屋
趣味で書いてみました
戦国時代にネットショッピングがあったら、こうしたいなと思って書きました
朝、夜明けと共に起きて身支度を整える
と言ってもハダケタ服を直すだけだが。
巴と静も起きたようだ
「おはよう」
「おはよう」
「おはよう。巴、静。寝心地はどうだった?」
「あの布が心地よくて良く寝れたわ」
「あの布心地良かった~」
と巴も静もご満悦のようだ
「それは良かった、出した甲斐があったよ。さてと、それでは店に行くかな」
「私たちは?」
「巴と静も店に来て手伝えることがあったら手伝ってくれ」
「分かったわ」
「分かった~」
店に行くと既にお婆さんが餅つきの準備を始めていた
「餅米を炊いているから待ってておくれ」
「杵はどこにありますか?」
と勝手の分からない大河が聞く
「そこの棚にあるのを使っておくれ」
と菊婆さんが指さした
「大河は餅つきをやったことがあるのかい?」
「触りだけならあります」
菊婆さんの示した所にあった杵を持ち上げて大河が言った
「頼もしいね。それじゃ始めるよ」
それから2時間ほど経って、たどたどしかったが、なんとか餅をつき終わった。
できた餅を100個に分ける、それを2個づつ笹の葉で包んだ
「これが1つで2文さ」
笹に包まれた餅を持って婆さんが説明する
「最近はあんまり売れないからね~。半分も売れれば良い方かね~」
「巴と静も売るのを手伝ってくれるか?」
「良いわ」
「良いよ~」
「ちょっとワクワクする~」
こういうのが初めてなのか静がソワソワしている
「さあ餅を並べてくれるかい?」
「じゃあ俺は店の掃除かな」
それぞれが動き始めた
「店を開けるよ」
お婆さんが鎧戸を開けて、さあ営業開始だ
お昼近くになって、開店時に多めに売れた以外は暇な時間が多いので、飽きてきた2人が言った
「暇」
「暇ね」
結局餅が売れたのは20個だけだった
「残ったのはどうするんですか?」
「残ったのは乾燥させて、乾燥餅として売るのさ。非常食としても売れるからね。ただ少し安くするけどね」
「なるほど」
こうして1日目が終わった
その日の夕方
「それじゃー今日の夕飯だ。仕事の開始を祝って今日は特別なのを出そう!」
と大河は張り切って言った
楽市楽座で買ったあんぱんを3つ出す
ポン ドサドサ
「これは何?」
や〇ざきパンのあんぱんである
1つ100ポイントだ
「それはあんぱんだ」
「あんぱん?」
「まあ食べてみれば分かるはず?」
「なんで疑問形なのよ」
大河はペリペリと袋を開けて食べてみせる
巴と静もそれに習う
「あっ、あま~い。甘い物を食べたのはとっても久しぶり」
巴が口の中に広がる甘味に感動している
「これっおいし~」
静も食べたことのない甘味に思わず声が漏れる
どうやら2人はあんぱんに満足してくれたようだ
「ちょっと中が不気味だけど、おいしい」
赤黒いあんこに不気味さを感じている巴が感想を言う
「周りのもふかふかでおいしいね~」
「これはなんなの?」
と巴が質問してきた
「周りのふかふかの奴がパンという。中の赤っぽいのがあんこという。2つが合わさってあんぱんという」
「これも450年後の食べ物なの?」
「いやパンとあんこはもっと前からあるが、あんぱんになったのは400年後くらいからだ」
と他愛もない話をして今日は就寝した
餅屋2日目、3日目もあまり売れ行きは良くない
両日で40個という所か。1つ2文で80文、現在の円に換算すると8000円だ。
結構厳しい。
朝食、夕飯は巴と静の要望によりあんぱんとなった
3日連続、5食連続であんぱんである
「まずいな」
「何がまずいの?あんぱんおいしいよ?」
「いや、あんぱんじゃなくて店の売れ行きだ」
「そうね・・・」
「売れ行きが悪いままだと、お金がもらえない。しかもおじいさんが回復したら、ここから追い出される」
「それはまずいわね」
「そこで一計を案じる」
「どうするの?」
「まあ明日だ、見てな」
餅屋4日目
餅つきが終わって、餅を分けた後
「菊婆さん、材料はこっちで出すのでちょっと台所を貸してくれませんか?」
「何をするんだい?」
「美味しい物を作ります」
台所と鍋を貸してもらい、楽市楽座で買った小豆と砂糖と塩を使ってあんこを作る
砂糖なんて戦国時代では超高級品である
しかし、楽市楽座なら精製された砂糖が1Kg200ポイント。使いたい放題だ。
鍋に作ったあんこを指で掬って食べてみた
「う~ん、これは美味い」
「何々?これってもしかしてあんこ?」
「そうだ。食べてみな」
巴と静が掬って食べてみると
「うわ~、何これ~。昨日と同じあんことは思えない」
「凄く美味しい~」
流石は丹波の小豆である
「お婆さんもどうぞ」
「あずきの塩餡かい?」
婆さんがあんこを掬って食べると
「甘いね!これは美味しいさね~。あずきの甘煮かい?」
「そうです。これをお餅に塗って1つ4文で売ろうと思います。そこでですが、4文の内2文は、このあんこ代として僕たちが貰いますがどうでしょう?」
「4文で売れるかね?まあ、売れ残ったらあんたたちがその分働いてくれれば良いさ」
「大丈夫、必ず売れます」
50個セットの内、25個にあんこを塗り笹の葉に包んで営業を開始した
「おっ、新商品があるじゃねぇか。菊婆さん、これはなんだい?」
声を掛けてきたのは、贔屓にしてくれている大工の棟梁の源さんだ
「大河、これはなんて言うんだい?」
菊婆さんは大河に聞いた
「これはあんころ餅と言います」
「へ~あんころ餅か、変わった餅だな。でもちょいと高け~な」
普段の2倍の値段を見て源さんが躊躇する
「でも美味しいんですよ。ここでしか食べられませんし、是非」
大河も生活が懸かっているから必死である
「そうだ試食しませんか?」
大河が思いついたように源さんに提案した
「試食って何だい?」
「お試しで食べてもらうってことですよ」
「へ~、お試しで食べられるのかい?」
「小さく切りますけどね」
「まあしょうがねぇ、タダだし我慢すらぁ」
タダで貰おうってのに偉そうだ
大河が、あんころ餅1つを8等分に切って1つを源さんに渡す
「どうぞ」
「おう」
そう言うと源さんが、あんころ餅をヒョイと口に入れる
「なんじゃこりゃ!こりゃ~、うめ~~なんてもんじゃね~ぞ」
源さんが目を見開いて叫んだ
「そうでしょう?こんなに美味い物が、たった4文で食べられる。こんな店、他にありませんよ?」
大河も宣伝に余念がない
「良し買った!2つくれ」
「毎度ありがとうございます」
2つの包みを源さんに渡し、8文を手に入れる
「おう、ありがとよ」
「またよろしくお願いします」
源さんが手を振って去っていく
「やった売れたぞ」
「やったね」
売れて気を良くした大河が言った
「良し、今日は宣伝に徹するか。商品が良くても知ってもらわなくちゃ売れやしない。菊婆さん、僕たちの今日の売り上げは全部要らないので、あんころ餅20個(10包み)を試供品にしていいですか?」
1つは既に試供品となっているが・・・
菊婆さんも可能性を感じたのか
「良いよ、好きにやんな」
と言ってくれた
「巴、静、このあんころ餅19個をそれぞれ8つに切ってくれ」
「「あいよ~」」
小さく切ったあんころ餅を小さな笹に乗せる。全部で159個だ。
それをお盆に乗せ店の前で試食してもらう
巴と静にも協力してもらい、手分けして試食品を配る
「お一つどうぞ~」
「タダでくれるのかい?」
「試食ですから」
「ありがてぇ」
試食を配っていると、だんだん人が集まってきた
「何事だい?」
「新しい商品を食べてもらう催し物です。お一つどうぞ」
「タダでくれるのかい?」
「はい、どうぞどうぞ」
どんどんあんころ餅を配る
見物人たち
「うめ~~ぞこれ」
「おいし~」
あちらこちらで大好評だ
「気に入った方は、こちらで販売してま~す」
大河がさりげなく販売に誘導する
見物人たち
「買った」
「良しもらおう」
あっという間に残りの15個が売れた
「もうないのかい?」
と在庫がなくなった棚を見て言った
「いえ、まだありますよ」
大河は急いで残りの25個にあんこを塗る
「どうぞ」
見物人たち
「俺も」
「私も」
残りの25個も昼前には売り切れた
店の前に「あんころ餅は売り切れました」との張り紙を付けた
「やった。売り切ったぞ」
「凄い凄い」
今日の売り上げは、40個 ⅹ 4文で160文だ4日分の売り上げである
お婆さんもホクホク顔だ
「どうぞ」
菊婆さんに売り上げ金を渡すと
半分を戻してきた
「大河のおかげで売れたから、半分は大河のもんだよ」
「でも今日の売り上げは無しでと・・・」
「良いから取っておきな。明日から忙しくなるんだろう?それで英気を養うといい」
「ありがとうございます」
この世界に来て初めての現金ゲットである
初めて投稿致します
拙い所もあると思いますが、広い心でお読みいただければと思います
誤字脱字、歴史考証の不備など歓迎いたします
しかし、物語優先で時代考証は完璧にしようとは思っておりませんのでどうぞよろしくお願いいたします
また、告知なしでの変更等がありますことをご了承ください
お気に入り登録、評価などをしていただけたら幸いです




