3話 大河組
趣味がてらに書いてみました
戦国時代にネットショッピングを持っていたら、こうするだろうなと思って書きました
楽しんで頂けたら幸いです
出来た部分をアップしていきます
――1564年の秋
米の収穫時期となっていた
大河は、自分の領地の事を思い出した
「あっ。コシヒカリを越後に持ってこないといけないな」
そう、今年取れたコシヒカリを越後に持ってきて、来年植えなくてはならない
苗を楽市楽座で買って、それを植えても良いが大量に購入しなくてはならないためお金が掛かる
「昌幸。ちょっと甲斐まで帰ってくる」
「は? お待ち下さい。幾つ月も留守にするなど許されませぬぞ」
「大丈夫。7日くらいで戻るから」
「何を世迷言を!往復だけで20日は掛かりますぞ!」
「大丈夫。未来の馬で行けば片道1日くらいだから。それじゃあ留守はよろしく」
「お待ち下され! せめて信蕃を護衛に」
大河は、ホ〇ダの250ccオフロードバイクを購入した
1つ目に買ったバイクはまだ甲斐の自宅にあるためだ
慌ただしく準備を整えた信蕃がやってきた
信蕃はバイクを見て
「これは、何でございますか?」
と尋ねた
「バイクという未来の馬だ」
「これが、未来の馬……」
それは見るからに異様な姿だった
姿形はほぼ全て金属の光沢で彩られ、複雑な形の管が幾重にも張り巡らされている
ハンドルの中央には多角形のデジタルメーターがはめ込まれ、未来感を醸し出していた
2本の黒い車輪から出る太い支柱が力強さを感じさせ、赤いシートがバイクの存在感を浮き立たせていた
「早く乗って」
大河は自分の後ろの座席を指さした
「昼飯の準備がまだでございますぞ」
「大丈夫。甲府で食べれるさ」
同年代ということもあり越後に派遣された3人は気安い間柄であった
「甲府?! あそこまで行くには10日は掛かりますぞ?」
「大丈夫。乗れば分かるから」
と大河たちは出立するのであった
平地の街道を40キロで走る
「これは早うございますな」
と気分爽快な風で信蕃が言った
「平地で距離を稼ぐぞ」
と90キロまで速度を上げた
「大河様。これは早すぎでは?」
90キロという速度はこの時代ではありえない速度である
馬の全力疾走で4、50キロという所だ
その倍の速度である。初めてなら恐怖を感じるだろう
「大丈夫。視野が広い所ならこの速度で行ける」
いくつかの山、峠越えがあったが5時間ほどで諏訪についた
「某、疲れました」
「同じく疲れた。一休みしよう」
と下諏訪宿でお茶と餅を食べながら休憩するのであった
「しかし、このバイクというは凄いですな」
「街道が整備されたら、もっと速度を上げられるはずだ」
「何と! あれで最高速ではないと言われまするか?」
「あれの1.5倍は出せるんじゃないかな?」
「それは凄まじい! 某も欲しくなりましたぞ」
「なら買う? ただ、維持するにはガソリンが必要になる。バイクの食料だ」
「売ってくだされ!」
「中古で良ければ、4貫からある」
「4貫!馬より安うございますな!買いまする!」
「じゃあ後で払ってくれ。ガソリンは今回はタダで良い」
実はガソリンもネットで買えるのである
ただし、非常用の用途でしか買えないのでかなり割高である
だが、他に入手手段がないため、あるだけでも有難かった
大河は一応信蕃の希望を聞いた。そもそもバイクのことを良く分かっていない信蕃であったが黄色が良いとのことであった
そのため大河は、ス〇キの中古オフロードバイクを出した
「おお~!」
と感動する信蕃
「乗ってみてくれ。操作はこうこうこうだ」
と大河はバイクの乗り方を簡単に説明した
「ははっ。こうですかな」
鍵を回しエンジンを始動させた
危なげながらもバイクを運転する信蕃
「これは楽しいですな!」
20キロくらいで運転し、慣れてきた所で
「運転は慣れだ。距離を走れば段々慣れていき、操作も上手くなる」
「なるほど」
「それでは、甲斐までいくぞ」
「ははっ」
と2人で甲斐まで走るのであった
諏訪から甲府まで75kmほどである。あれから2時間半ほどで甲府に到着した
信蕃に付き添いゆっくり走ったからだ
甲府に着いた信蕃は疲れたと言って大の字になって休んでいた
「初めてなら皆そうなる。力んで運転するからな」
「ですが、楽しいですな」
「そりゃあ楽しいさ。馬と一緒だ。ただ、馬と違って全て自分で行わないといけないけどな」
「それがまた良いのです」
1日で甲斐まで戻った大河達は、早速信玄にお目通りした
「な!大河よ!お主、越後はどうした?」
「はっ。7日ほど空けると言って昌幸に任せております」
「バイクで参ったのか」
「ははっ。今朝出立しております」
「春日山から甲府まで1日か。移動の常識が変わるな。それで用件はなんだ?」
「はっ。お館様。お願いがございます。甲斐での自領の民1000人を召し抱えても宜しいでしょうか?」
「どうするつもりだ?」
「はっ。自分専用の部隊と致します」
「直轄部隊とするのか」
「ははっ。また、土地を与えず金銭、米で雇う集団としたく」
「何と。土地を与えぬのか?」
「ははっ。農民ではなく工作の専門部隊とするつもりでございます」
そう、大河は他に先駆けて兵農分離を実施しようとしているのであった
農繫期も農業以外の作業をして欲しい大河からしたら、この方法が理にかなっていた
また、コシヒカリを植えたことで通常の3倍もの米が取れるようになれば、食料の不足問題が解決でき
それに伴って兵農分離が可能になるという目算だった
「ふむ。面白い。やってみよ」
「ははっ」
その後、信玄から港での税を半分納めよと言われてしまった
これで自分で使える金は2万貫に減った
だが、その方が甲斐、信濃も発展するから良いと判断した
それと忘れずに直江津から海津城までの街道の建設許可も貰った
信玄は好きにせよとの事であった
――その日の夕方
大河は久しぶりに自宅へ帰った
長期出張から帰ってきたサラリーマンのように、家に入るのに若干の抵抗を感じながらも呼び鈴を鳴らした
「どなた様?あっ!大河!」
と巴が迎えに来てくれた
「久しぶり」
と大河
「あっ!大河お兄ちゃん!」
と静
「大河様。お帰りなさいませ」
と佐吉
4人全員でリビングにあるテーブルに集まった
リビングは50畳の広さだ。結構広い。
そのリビングの真ん中にポツンと4人掛けの小さなテーブルが置いてあった
大河がひとまずこれで良いだろうと引っ越し当日に出した物だ
今なお、そのままであった
大河は今の状況を話そうと、お菓子とジュースを出した
そして話し始めた
「色々あって、武田一門となって越後国主となった」
「「「はぁ???」」」
と3人は驚いた
「何言ってるの?大河、頭大丈夫?」
「本当の話だ。菊姫と婚姻も決まった」
ハッという声が聞こえた
「姫様と婚姻?」
「ああ。だいぶ先だと思うけど婚姻することになった」
「そ、そうなの」
「武田一門になっても、この4人は家族だ。だから心配しないでくれ」
だが巴は大河が遠く離れていくように感じていた
その日は静かな夜だった。三日月が静かに光を注いでいた
巴は眠れずにいたため、邸宅の外にある縁側に両足を抱えて座っていた。
大河の言葉にかなりショックを受けていたのだ
「面倒見るって言ってくれたじゃない。ずっと一緒にいてくれるってことだと思っていたのに」
巴はなんとなく置いてけぼりにされたように感じていた
とそこに
「眠れないのか?」
と声がした
「大河?」
「御免な。いきなりの事で混乱させて」
「大丈夫だけど・・・」
「一門になっても皆を守ることは変わらないから」
「そうじゃない!そうじゃないの!」
巴は大河の目を見つめた
大河は久しぶりに巴の顔をまじまじと見つめた
巴ってこんなに可愛いかったか?
最初に会った時は、ぼさぼさの髪にススを被ったような灰色の肌だったが、今はまるで別人だ
月に照らされた肌は、透明感があり真っ白だ
顔の輪郭は、おかめではなく、現代風にスッキリとしている
眉はキリリとした一直線状
鼻はそれほど高くはないが、鼻筋は細く綺麗に通っている
目は二重で少し切れ長
赤い色を湛えて瑞々しい唇はプルンとしていてとても艶めかしい
髪は今は結っていないため、黒のロングストレート
スタイルは細身で、胸は控えめだが、お尻はほどほどある
戦国時代で栄養が少なかったためか、若干成長不足を感じさせる
しかし、貧相という訳ではなかった
全体的にはバランスが整っており、現代でアイドルになったらさぞかし人気が出そうな容姿だ
しかし、この時代的にはちょっときつめで美人の範疇ではなかった
実は、巴がここまで綺麗になったのには訳があった
それは、大河が自宅に暇つぶし用にと置いていった雑誌が原因である
その雑誌はメイク特集と書かれた美容系雑誌であった
大河としては、巴と静に現代言葉を習得して欲しいという意図もあり、暇つぶしにもこういう雑誌の方が良いのではと思って置いていったのである
巴はこの雑誌を見て(読んで?)現代の肌ケア術、髪のケア術、そしてメイク術を学び取ったのだ
この容姿はその結果なのである
しかし、大河は40年の人生経験があっても巴の真意に気付かなかった
それは、大河が前人生であまりモテなかったからだ
だから自分に自信がなく、巴のような美少女からなんとも思われていないと思い込んでいた
「何が違うんだ?」
「私は…………」
大河は暫く待ったが返答がないので
「じゃあ、俺は行くよ」
と言った
巴は、今大河が行ってしまったらもう2度と自分と一緒に居てくれないと本能的に察知した
そして巴は、意を決して言った
「私も行きたい!」
「えっ?」
「私も大河に付いていく!」
ここでやっと大河は、巴の真意に気付いた
自分にそんなことがあるはずないと思い込んでいたが、そうではなかったのだ
「良いのか?正妻じゃなく側室になっちゃうけど」
「えっ?嫁にしてくれるの?」
「えっ?違うのか?」
どうやら双方に誤解があったようだ
巴からしたら、国主にまでなった大河と戦争孤児である自分が婚姻できるとは夢にも思っていなかったのだ
それが側室であれば嫁にしてやると言われたので驚き2割、嬉しさ8割であった
「嫁にしてください」
「分かった」
どっちが男らしいのか分からなかった
とその様子を静と佐吉が隠れて見ていた
「巴おねえちゃん、良いな~」
「静ちゃんには俺がいるよ」
「嫌~」
「そ、そんな~」
――次の日
大河は自分の領地に行った
そこで、領民全員に集まってもらい、事の次第を話した
「大河様の配下としてもらえるので?」
と銀次郎が言った
「そうだ。しかし、雇い賃は土地ではなく金銭または米で支払うことになる」
「どういうことでございましょう?」
「田んぼをやらない代わりに年貢もない。賃の支払いは金銭または米で行う。その金銭か米で暮らしていくということだ」
「何とも不思議な暮らしですな」
「慣れればなんてことはない。未来ではそれが普通だ。それに不作であったとしても賃は大きく減らない、安定した暮らしができるということだ」
「それは良いですね」
「更に活躍すれば、賃を増やしたり臨時の褒美を出すぞ」
つまりベースアップとボーナスである
民
「「それならやります」」
と領民全員を召し抱えた
そして1月後、領民全員に収穫した米の運搬と越後へ移住を完了させた
これが後に大河組と言われることになる
初めて投稿致します
拙い所もあると思いますが、広い心でお読みいただければと思います
誤字脱字、歴史考証の不備など歓迎いたします
しかし、物語優先で時代考証は完璧にしようとは思っておりませんのでどうぞよろしくお願いいたします
また、告知なしでの変更等がありますことをご了承ください
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