24話 米の収穫
趣味がてらに書いてみました
戦国時代にネットショッピングを持っていたら、こうするだろうなと思って書きました
楽しんで頂けたら幸いです
秋を迎え、米の収穫が始まった
大河は、コシヒカリの初めての収穫ということで、稲刈りに立ち会うことにした
新たに開墾した田んぼに向かった大河は、その光景に驚いた
コシヒカリの田んぼだけ稲穂の垂れ具合が違うのである
そして、今年は若干の冷夏だったせいか、全体的に稲の育成状況が良くないと噂で聞いていた
「銀次郎さん。今年の稲穂はどうですか?」
「大河様。この稲は凄いですよ!見て下さい、1つの稲穂にできる米の量が今までとは全然違うんです!」
大河は、当然違いが分からない
それは、この時代の稲穂を見たことがないからだ
「そんなに良いのですか?」
「3倍以上あるかもしれません」
大量の米が取れて大喜びの銀次郎達
しかし、その向こうで羨ましそうに見ている農民達に大河は気付いた
そして、数日間で稲穂を全て刈り取り天日干しにした
天日干しの作業をしている所に、大河の領地以外の農民がやって来た
他所の農民達
「おめぇんとこの米はどうなってるだ?」
と銀次郎に聞いた
「これは冷害に強く量も多く取れる特別な米なんですよ」
「その米、儂らにも貰えないだろか?」
「良いですよ」
と大河が割り込んで言った
「その代わり、この辺一帯でこの米を作りたいと希望する人を、4日後ここに全て集めてきてください」
「分かっただ」
と他所の農民達は四方八方に散って行った
4日後、集まった農民達は新たに開墾した1万石のうち大河の領地の1000人を除く全員だった
皆、大河の領地の豊作具合が羨ましかったのだ
「お集まりいただいた皆さんには、この米の種籾をお渡しします。ただし、ここの脱穀作業を手伝ってもらいます」
そう普通の3倍以上の米ができるため、脱穀も3倍以上やらねばならないのだ
それを、他の領地の農民に手伝ってもらうことにしたのだった
4日後にしたのは天日干しの期間を確保したかったからだ
こうして、この時代に初めてコシヒカリが取れたのだった
そして、大河はこれを国中に広めていくつもりだった
今年、大河の領地で取れた米の量
480kg(1反当たり平均)x 1000反 = 480000kg = 3200石(3.2倍)
年貢(半分)
240000kg = 1600石
他領地の農民にあげた米の量
4kg(1反当たり)x 9000反 = 36000kg = 240石
となった
大河は、この結果を信玄に報告しに行った
ちょうどそこに深志城城主の内藤正豊と軍師の真田幸隆が居た
「大河よ。お主の米の成果はどうだった?」
と信玄が聞いた
「はっ。1600石でございました」
「ほう。流石は未来の米よ。1000石の領地で1600石も出来たか」
「いえ。年貢が1600石でございました」
「なんと!?一体どれほど搾り取ったのじゃ!?」
と内藤正豊が言った
「半分でございます」
「なんと!1000石の領地で3200石も取れたというのか!?」
「はっ。それが未来の標準収穫量でございますので」
「なんとも凄まじい技よ」
と正豊は唸った
「しかし、半分となれば1石と半分が民に行くということだ。それは喜んだであろう?」
と信玄が言った
「はっ。大喜びでございました」
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この時代の1反の米の収穫量は150kgである
この150kgから半分は年貢として取られるため
民は75kgしか貰えなかった
人が1人1年暮らすには150kgの米が必要であることを考えると
1年の半分は米以外を食べなくてはならないということである
それ以外でも臨時徴収があったりして、まともに米を食べれなかったようである
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「大河よ。その米を国中に広めるつもりか?」
と信玄が言った
「ははっ。そのつもりでございます」
「だが、その米をこの国外に持ち出す輩が出るぞ。しかも、それを抑える術はない。そうなれば我が国の優位性は無くなろう」
「いえ、この米の収穫量をこのまま維持するには、知識がないと難しいのです」
「ほう」
「この収穫量を維持するには、塩水選や伝染病の消毒が必要となります。これをやらないと段々収穫量が落ちていきます」
「なるほどな。その知識を門外不出とするのだな?」
「ははっ。その通りにございます。そしてお願いがございます。この知識と種籾の品質を維持するための部門を作って頂きたいのです」
「分かった。それなら信廉が良かろう」
こうして、この米が他国への拡散しても自国の優位性を保持するための方策を整えたのであった
「所で、大河よ。未来の米を食べてみたいと思うておる。1石ほど儂に融通してもらえぬか?」
と信玄が聞いた
正豊と幸隆も聞き耳を立てている
農民に配った後の残り1360石の米は自分の領地(知行)の物なので大河の物である
大河
「・・・・・・」
「どうした?言えぬ程不味いのか?」
「い、いえ、食べるのは来年以降にした方が良いかと」
「何故だ?」
「今年は量があまり多くないので・・・・・・」
「量が少ないからだと?それはつまり・・・。まさか」
「そうです。これを食べたらもう二度と赤米には戻れなくなります」
「「「!!」」」
3人の頭の中はどんな味がするんだと渦巻いていた
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この時代の米、赤米と黒米は不味いらしく
やっとのことで飲み込めるほどの不味さらしい
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「大河どの。儂にも食べさせてくれぬか?」
と幸隆が言った
「儂もじゃ」
と正豊
「まあ、どうせバレることですし、食べてからどうするか話しましょうか」
と大河は米を取りに行き、精米機で白米にしてから戻った
大河が戻ってくると3人と料理番が待っていた
「これです」
と大河はコシヒカリを見せた
「白いぞ」
「白いですな」
「しかも透き通っておる」
「これは精米をしています。米の周りを削って中身だけとなっている状態です」
「儂も精米をしておるが、ここまで削っておるのを見るのは初めてじゃ」
と正豊が言った
「では、どうぞ」
と料理番に米を渡した
「ははっ。それでは作って参ります」
と料理番が下がっていった
そして一刻後
「出来上がりましたぞ」
と料理番がお櫃を持ってきた
そのご飯を椀によそって3人の前に出した
ご飯の良い匂いが漂ってきた
「どうぞ」
「ふむ。それでは毒見を兼ねて儂から」
と幸隆が言った
幸隆がご飯を一口食べた
「・・・・・・」
「どうしたのじゃ?」
と正豊が聞いた
「こ、これは何じゃ。これが同じご飯じゃと?」
幸隆はワナワナと震えていた
「どうした?美味しくないとでも申すのか?」
と信玄が言った
「お館様。次は儂が試しますぞ」
と正豊も一口食べた
「・・・・・・」
「正豊?どうだ?」
正豊もワナワナと震えていた
「これが真に米だと申すか?」
「どうした?二人供?」
「お館様。食べれば分かります」
と大河が椀を差し出した
「うむ」
と信玄が椀を受け取り一口食べた
「こ、これが未来の米の味か。まるで別物だ」
と絞り出すように言った
「粒がはっきりとしており、噛み締めるとなんとも甘い」
「美味しすぎまする」
と幸隆が言った
「確かにこれを食べたら、元には戻れませぬ」
と正豊も言った
「大河よ。お主の言う通りであった。食べたらより欲しくなって来おったわ。お主の米を全て買い取ろう。食べる分だけ残し、後は全ての我が直轄領で植える」
「お待ちください。お館様。儂も欲しゅうございます」
と幸隆
「儂も欲しゅうございます」
と正豊
「だが、残り1300石ほどであろう?足りぬぞ」
「「・・・・・・」」
沈黙する2人
「いえ、ありまする。あと1600石ほどが残っておりまする!」
と正豊が言った
「そうでございますな!」
と幸隆はポンと膝を打った
あちゃ~やっぱりこうなったかと
だから来年にした方が良いと言ったんだと大河は思った
こうして信玄、正豊、幸隆の3人は、大河の領民が持つ種籾用以外のコシヒカリを全て買い取ったのであった
食べる前であったので、存外に高く買い取ってくれたことに民は大喜びだった
しかし1年後、取れたコシヒカリを食べた時、あれは高く買ってくれた訳ではなかったのだと悟るのであった
通常の米の取引を10貫文=100石と計算し
1300石を約1.5倍の200貫で買い取ってもらった
所持金(大体)
2154万ポイント、895貫500文
初めて投稿致します
拙い所もあると思いますが、広い心でお読みいただければと思います
誤字脱字、歴史考証の不備など歓迎いたします
しかし、物語優先で時代考証は完璧にしようとは思っておりませんのでどうぞよろしくお願いいたします
また、告知なしでの変更等がありますことをご了承ください
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