5話 信玄との邂逅
趣味がてらに書いてみました
戦国時代にネットショッピングを持っていたら、こうするだろうなと思って書きました
楽しんで頂けたら幸いです
上諏訪宿を出立してから5日で、大河達は甲府の昌景の屋敷に到着した
「大河よ、これからお館様にお目通りしに参る。お館様の沙汰があるまで、ここに滞在するがよい。昌次よ客人だ、案内せよ」
昌景はそういうと躑躅ヶ崎館へ出発した
「お初にお目に掛る、昌次でござる」
昌次は山県昌景の嫡男である。この頃、15,6才と思われる。
「初めまして、大河と申します」
「巴です」
「静です」
「佐吉でございます」
「さあ、こちらに」
昌次に案内されて客間に通される
「父とはどのような関係でございますか?」
「護衛をして頂いた関係です。武田信廉様から信玄様にお会いするよう申しつかっておりまして、その護衛をして頂きました」
などと。たわいもない話をした
「それでは某はこれで。ごゆるりとお過ごし下され」
と退出していった
暫くすると、昌景が帰ってきた
「大河よ、明日、信玄様がお会いになる。登城の準備をせよ」
「はい」
明日はいよいよ、信玄に会うのだ
「本日は、大したもてなしはできぬが、ゆるりと過ごされよ」
「ありがとうございます。こちらは手土産です」
と大河は、かつお節3本と竹筒醤油1本を手渡した
「ありがたく頂戴致す。だが、使い方が分からぬ」
「それなら私達がお教えします」
と巴と静が手をあげた
「それは助かる」
と言うと娘を呼んだ
「この者たちを台所へ案内し、これの使い方を学ぶのだ」
娘
「はっ、仰せの通りに」
巴と静は娘に連れられ台所へ消えた
「ところで、大河よ。あれは何だ?」
「それは、ご飯を食べれば分かります」
そうするうちに夕飯となった
昌景が味噌汁を一口啜ると驚いた様子で固まった
「なるほど、大河の言っていたことはこれか」
娘
「巴さんと静さんが教えて下さいました。こんな物があるですね。すべての料理が美味しくなりました。もうこれ無しでは生きられないかもしれません」
「喜んでいただけて良かったです」
と大河が言う
飯富家の食事が劇的に美味しくなり、楽しそうな声が溢れるのであった
次の日
大河と昌景が躑躅ヶ崎館に登城した
大広間に通され、暫く待たされた後、信玄が現れ上座にドカッと座った
「お主が大河か」
「はっ、大河にございます」
「信廉からの書状には、お主を召し抱えよと書かれておる。なんでも珍しい品を扱っているとか」
「はっ、その通りでございます」
「その方、出はどこじゃ?」
「はっ、武蔵国川越にございます」
「それは誠か?」
「それはどういう意味でございましょう?」
「川越に珍しい品を扱う大網屋というのがあったそうじゃな。それはお主か?」
「はっ、その通りでございます」
「それがおかしいのだ」
「どういうことでしょうか?」
「お主の出は川越という、だが大網屋が扱っていた品に川越の物はない。それは川越の座にお主からの調達依頼が一切なかったことからも明らかだ」
大河
「・・・・・・」
「しかも、お主は、自分の扱っている品を故郷の品と言っておったようだな?違うか?」
大河
「・・・・・・」
「お主は何者だ?」
カチャという、背後で昌景が刀に手を掛ける音が聞こえた
「流石は信玄様。まさか、こんなに早くバレるとは思ってもみませんでした」
大河はそう言うと一呼吸おいて話し始めた
「俺の出身地は、川越で間違いありません。但し、それは今から450年後のことになります」
「なに?」
「今からおよそ1年前、自分の家に帰って倒れた後、気が付いたらこの時代に来ておりました。それも自分の時代の品を調達できる力を持ったまま」
「その話を信じろと?」
「その証拠をお見せしましょう」
大河は楽市楽座を起動すると電池で動くロボットを購入した
適当な呪文を唱えて、念じている振りをする
「おん、めん、はん、じゃから、そわか」
そして、儀式めいた仕草をして大きな声で発声した
「はっ‼」
すると信玄の目の前の何もない空間に突如20cmくらいの電池式ロボットが出現した
「な!!」
信玄と昌景が目を見開いた
大河がロボットのスイッチを押すと、ロボットが踊りだした
信玄は、目の前の出来事を呆然と見つめていた
{何が起きておる?この踊っておるのは何だ?これは現実か?}
「これは、俺の時代の子供用おもちゃにございます」
「これがおもちゃとな・・・」
昌景も目の前の光景を信じなれない面持ちで見ていた
「これは誠か?キツネに化かされているのではおるまいな?誰かある!!」
信玄が小姓を呼んだ
「はっ、お館様、如何致しました?」
「お主、これが見えるか?」
「これは何でございましょう?見たこともない人形が踊っておりまする」
「お主にも見えるか」
「手に取ってみてはいかがでしょう?」
と大河が言った
「お主、手に取ってみよ」
と信玄は小姓に命じた
小姓は恐る恐るロボットを手に取ると、手の上にのせて躍らせた
「これは面白き人形でございますな」
と何も知らない小姓は楽しそうに言った
「それは、子供用のおもちゃにございます」
信玄は、その言葉の重大さに気付き恐怖した
{何をどうやっているのか全く分からぬ物が、子供用のおもちゃだと?}と
そして、信玄はゆっくりと大河の方を見て思った
{信廉よ、お主、とんでもないモノを拾ってきたようだぞ}
「もうよい、下がれ」
と小姓を下がらせた
「もう1つ聞く。450年後の人間ならば答えられよう。この先、甲斐で起こることを答えよ」
「はっ、甲斐ではありませんが、来年三河で一向一揆が起きます」
「なっ!」
信玄は、この言葉で大河が450年の未来から来たことを確信した
三河の一向一揆がいつ起きるかは分からなかったが、近々だという情報を持っていたからだった
この時代における最高の情報収集能力を持っている自分より正確な情報を持っているということは、既に確定した情報を知っているということだ
「分かった、お主の言う事を信じよう」
と信玄は言った
「ありがとうございます」
「それで、お主は何が望みだ?それだけの才を持っておれば、どこでも暮らしていけよう」
「はっ、俺の望みは、店と身内を含む身の安全にございます。それと、この地獄のような世を統一し平和な世にしとうございます」
「分かった。保障しよう。だが、儂が天下を取れる保証はないぞ」
「構いません」
「さすれば、お主を軍師として召し抱えることとする」
そして大河は、450年後の品を出せること、武器は出せないこと、品を出すためには金銭などの代償が必要なことを説明した
「分かった、今日はもう下がれ。追って沙汰を出す」
と信玄は言った
大河と昌景は昌景の屋敷に帰っていくのであった
初めて投稿致します
拙い所もあると思いますが、広い心でお読みいただければと思います
誤字脱字、歴史考証の不備など歓迎いたします
しかし、物語優先で時代考証は完璧にしようとは思っておりませんのでどうぞよろしくお願いいたします
また、告知なしでの変更等がありますことをご了承ください
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