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1話 追放

趣味がてらに書いてみました

戦国時代にネットショッピングを持っていたら、こうするだろうなと思って書きました

楽しんで頂けたら幸いです



「大河、今日は虎衛門さんの所に行って家賃を払わないと」

今日は虎衛門さんの所に行く日だ

家賃の前払いをするためである


「そうだった。でも、そろそろあの店じゃ手狭になってきたと思わないか?」


「大きくするの?」


「ああ、その積りだ。虎衛門さんにもっと大きな店を借りれないか相談だな」


「凄い勢いで繁盛していくね」


「そうだな。じゃあ行ってきます」


「「いってらっしゃい」」

巴と静は家の掃除やら散らばった物の整理などをやる予定である


歩いて5分の所にある虎衛門さんの家に入る

いつものことなので、小姓が大河の顔を見ると虎衛門さんを呼びに行ってくれた


少しすると虎衛門さんがやってきた

「大河か」


「虎衛門さん、おはようございます。それでご相談があるんですが」


「大河、悪いがお前には貸せない」


「えっ?今の小さな店ですか?それならもっと大きな店に・・・」


「そうではない、お前に家は貸せないと言ったのだ」


「えっ?それはどういうことですか?」

大河は戸惑いながら聞き返した


「これは座の決定だ」


「なんだって?どういうことですか?」


「座に所属している者達が、お前の店ができたせいで仕事が無くなったと騒いでな。俺も擁護したが、最終的に新参者にお灸を据えよという勢力に押し負けた。座に属する者は、お前に便宜を図るなということになった。お前に恨みはないが、これも座の決定だ」


「なんで?新しいことをする者を異物として排除するのが、この町のやり方なんですか!!」

大河は座の決定に怒りと悲しみを覚えた


「大河よ、悪いが店も家も後5日で出て行ってくれ。これ以上は待てない」


「座長達に掛け合って来ます」


「無駄だ。もう座全体で決定したのだ、座長達でもそれを覆すのは難しい」


「嘘だろ、嘘だと言ってくれ・・・」

大河は下を向いてトボトボと歩いていった


「はぁ~。店も住む家も全部パーだ。やり過ぎたのか?巴と静になんて言おう」

大河は失望と悲しみで一杯だった


大河はフラフラと歩いて、いつの間にか町外れの茶屋に来ていた


そこには8人ほどの武士が連れ立って茶を飲んでいた

その前を通り過ぎようとすると最も偉そうな武士が声を掛けてきた

「おい、そこのお主」


大河はそれに気付かずトボトボと歩いていくと

供の一人が大声で叫んだ

「そこのお前じゃ!我が主が聞いておる!」


大河は漸く気付くと

「私でございますか?」


「そうだ、お主があまりにも絶望感を漂わせていたのでな。これから自殺でもしに行くのかと思うて、声を掛けたのじゃ」


大河は、はっとして

「自殺する程ではありませんが、困ったことになりまして。ぼ~っと歩いていたら、ここまで来てしまっておりました」


「ふむ、なら儂に話してみよ」


「殿、あまり時間がありませぬぞ」

と供の一人が言う


「なに、あまり時間は掛かるまい。お主名前をなんと言う?」


「大河と申します」


「大河よ、何があった?親を殺されて借金でも背負ったか?」


大河はことのあらましを掻い摘んで話した

一通り話すと大河は、自分の心が落ち着いてくるのを感じた

誰かにこの話を聞いてもらいたかったのだ


「ふむ、それは気の毒なことよ。だが、それを聞くと、直ぐにでも話さなくてはならない人がおるのではないか?」


「あっ、そうですね。早く話さないといけないや。話を聞いてもらって気が楽になりました。ありがとうございました」


と言うが早いか大河は、駆け足で家に戻って行くのであった


「なんと無礼な小僧だ、殿の前であのような」


「良いではないか、なかなかに面白い小僧であった。さて川越城へ参ろうか」


「ははっ」


大河は大急ぎで家に戻ると巴と静に事のあらましを話した


「何よそれ、完全に妬みじゃない」

巴が怒りと呆れの混ざった声を発した


「そうだよ~、そんなのないよ~」

静もお怒りだ


「だが、もう申し開きもできないとのことだ。町を出るしかないな」


「折角順調だったのに~」


「巴と静はどうする?希望すれば餅屋に置いてもらえるようお願いするが?」


「何言ってるのよ、付いていくに決まってるでしょ」


「そうだよ~付いていく~」

巴も静も付いてきてくれるようだ


「分かった、ありがとう。心強いよ」


「それでどうするの?」


「今日はこの家の片付けをして、明日は店の品を安売りで整理しようか」


「分かったわ」


そういうと3人で手分けして家の片付けを行った


次の日


「持っていく物を一纏めにしておこう」

そう言いながらも、必要なら楽市楽座で入手できるから、ほぼ持ってく物はなさそうだ


「さて、今日から大安売りだ。在庫を無くすために半額で売るぞ。閉店のため全品半額って紙に書いて貼り出すか」

大河は、急いで宣伝文句を紙に書き店の前に貼り出した


その日は、普段の倍以上の賑わいだった

半額を見た客が、周りに喋ったのが広まったからだった


昼頃になると源さんが来た


「なんだ大河、おめぇ閉店するんだってな~。ここから去るのか?」


「源さん、座の決定で閉店しなくてはならなくなりまして」


「なんだと~、おめ~座と揉めたのか?」


「揉めた訳じゃないんですけどね。なんかやり過ぎたらしく、座に所属する人たちの怒りを買ったようです」


「何したんで~?」


「座の人達の仕事を奪ったとか言われたので、安い製品を売ったからでしょうね」


「おいおい、座の連中は、俺たちのためになることより、座の連中のことの方が重要なのかよ」


「それが座の主目的ですから」


「か~、ひで~奴らだな。でも、座と敵対したらここには居られね~な」


「はい。だから別の国に行くつもりです」


「そうか~、それは残念だぜ~」


「しょうがないです」


「よし、今日は送別会だ。餅屋の連中も誘ってやるぞ~」


「ありがとうございます」


源さんが、駆け足で準備しに戻っていった


その日の夕方、餅屋の家で顔見知り達が集まって、皆でどんちゃん騒ぎの送別会を行ってくれた

菊婆さんと権蔵爺さんも座の決定に怒り心頭だったが、覆せなかったことを謝ってくれた

大河も最後とのことで、清酒と果物などを大盤振る舞いした

勿論それは大好評であった


次の日


大河は昨日の売れ残りを店頭に並べていた

すると旅装束の武士の一団が声を掛けてきた


「お主、大河か?」


大河が見上げると、一昨日話を聞いてくれた武士が居た


「あっ、これはこの間のお武家様」


「噂で面白い店があると聞いて来たのだが、まさか、大河の店であったか。そうなると、閉店する目前か?」


「そうなります」


「しかもほぼ売り切れておるな」


「申し訳ありません」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

偉い武士の視点


なんだこれは?見たこともない品が溢れておるわ

南蛮の品か?

あの血のような酒もあるぞ

そうなれば、この小僧は南蛮貿易の関係者か

それならこやつを勧誘すれば、我が国にとって有益になりうる


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


と盛大な勘違いをした偉い武士は大河を勧誘するのであった


「ふむ、それで大河よ、お主これからどうするつもりだ?」


「他の国に行こうと思います」


「そうか、ならば、我が国に来ぬか?」


「お武家様の国にございますか?」


「そうじゃ」


とそこに、この間大声で大河を呼び止めた供の一人が、割って入って来た


「このお方を誰と心得る。甲斐武田の一門衆、武田信廉様であらせられるぞ」


大河は思わず

「はは~」

と言ってふれ伏してしまった


「な、なんと武田信廉様でございましたか」


「大河よ、そう畏まらんで良い。どうじゃ、我が国でその腕を振るわぬか?」


「しかし、ここでは失敗してしまいました。武田の領地でも同じことになるかもしれません」


「大河よ、違うぞ、それはお主の責任ではない。お主が排除されたのは為政者の責任よ。為政者がお主の価値を測りかね、革新を望まず、座の現状維持を優先したからそうなったのじゃ。為政者が革新を望めば、お主を守ったじゃろう。南蛮の品も同じことよ。もし、鉄砲を為政者が有益と思わず、現状維持を優先し排除したとしよう。そうなれば、戦に負け、国が亡びよう。それは誰の責任か?為政者の責であろう?」


「なるほど、そうかもしれません」


「ここはそういう所ということじゃ。だが武田は違うぞ。お主のような革新をもたらしてくれる者を望んでおる。大河よ、我が国へ来い」


大河は少し考え、そして決心した

「信廉様、分かりました、ご厄介になります」


「ふむ、これは喜ばしいことじゃ!昌景(山県)よ、大河をお館様の元へ案内せよ。儂は、予定通り小田原へ向かう」


「はっ、承知つかまつりましてございます」


「文をしたためる、少し待っておれ」

信廉は紙と筆を取り出すと瞬く間に書状を書いて昌景へ渡した


「これをお館様に渡すのじゃ」


「はっ」


「昌景、任せたぞ」


「承知つかまつりましてございます」


そうして、信廉一行は山県を残し、小田原へと去って行った

ちなみに大河は、お土産として店の売れ残り(高くて売れなかった酒など)を渡して喜ばれるのであった


残った昌景は大河に聞いた

「大河よ、いつ出立できる?」


「山県様、本日中に店の整理を終えれば、明日には出立できます」


「そうか、相分かった。ならば明朝、この間の茶屋で落ち合おう」


「分かりました」


大河は売れ残った商品をお世話になった人達に配った

そして、店と家の鍵を虎衛門に返そうとすると、家の鍵は明日、扉の内側に置いておいてくれれば良いと言ってくれた

今日は家で過ごしても良いということだ


夜、巴と静と共にこの町での最後の夜を過ごした


「ここともお別れだね」


「ああ、色々あったな。良い人たちばかりだった」


「そうだね~、思い返せば楽しい生活だった~」


「でも、次はもっと忙しくなるぞ。なんせ大名の一門と知り合いになったんだからな。期待もされるから、大変な重圧だぞ」


「そうね、これからはもっと大変だわ」


「でも大丈夫だよ~、何とかなるよ」


「そうだな、3人で未来を切り開くぞ」


「「おお~」」

北条家ファンの方、川越の方、悪い印象にしてしまいまして申し訳ございません

物語の都合上、こういう場面を作る必要がありました。

ご容赦ください。



初めて投稿致します

拙い所もあると思いますが、広い心でお読みいただければと思います

誤字脱字、歴史考証の不備など歓迎いたします

しかし、物語優先で時代考証は完璧にしようとは思っておりませんのでどうぞよろしくお願いいたします

また、告知なしでの変更等がありますことをご了承ください


お気に入り登録、評価などをしていただけたら幸いです

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新展開は気になる。 [気になる点] え~と、去るとしたら餅屋の夫婦は原料入ってこないから困るのでは?そしてお殿様に届ける餅のこともあるし。 [一言] 初めまして。いつも楽しんで読ませてもら…
[気になる点] 座は、商人達の特権維持と安全面での互助組織ですから、今回の追放は殺されないだけ恩情ですね。 新参者が、チートで他所の店の商売に不利益出せば排除されても仕方がない。 この能力は、行商向け…
[一言] ・・・座の人ら、殿様と奥方様から恐ろしい勢いで詰められそう てか、殿様も座には逆らえないのかな
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