14話 出店
ヒェ~~~~~~~
また1位・・・・・
評価頂いた方々、感謝致しますm(_ _)m
冬も終わりに近づき春になろうとしている頃
大河は自分の店の出店準備に奔走していた
店は、大通りの片隅にある小さな借家である
大河は店を開店するにあたって、住んでいる所とは別に店舗を借りたのだった
大きさは10畳ほどである
(大河の店のイメージは江戸時代の小さな個人商店である)
その店の掃除、飾りつけ、棚の設置、商品の展示などやることが沢山あり、大河はてんてこ舞いだった
だが、それ以上に大河を悩ませたのは、何を売るかであった
450年後の世界の商品の何を売ったら良いのであろうか?
それはあまりにも膨大な数の中から選ばなくてはならない
当然、戦国時代ではまだ意味の無い物が沢山ある、例えば電気製品である。
しかし、それらを排除しても膨大な数であった
大河は、必需品や便利グッズなど、お金のない人達にも買ってもらえそうな商品を探していた
「何を売ろうかな~」
「まだ悩んでるの?」
「そうなんだ、どれを売ったら皆に喜ばれるのかなと考えると選べなくて」
「そうね~。布団は決まってるんでしょう?」
「ああ、布団だけは決まってる。でも、布団を広げる場所がないから依頼があったらという形だけどな」
「他には~?」
「そろそろ春、春か・・・。う~ん。食品、調味料なんかは良いかもな」
「味噌は自家製とかが普通だろうから、胡椒、醤油、かつお節、酢、酒なんかを売ろう。果物なんかも良いかもしれないな。それに木製の皿や箸なんかを売ろうかな」
「果物って何?」
「果物っていうのは、甘くて美味しい野菜みたいな物かな?」
そう言った途端に巴の目が光った気がした
「それ食べたい!私分かる。それ絶対美味しいやつだ!」
随分と大河との生活に慣れたものだ
「はぁ、分かったよ。出してやるから」
「わ~い」
「わ~い」
とどこからともなく静が沸いて出てきた
「おわっ。どこから出てきた?」
「私をのけ者にするなんてズルいよ」
「そういう訳じゃないんだが、成り行きで」
巴・静
「「わくわく」」
楽市楽座で、旬のイチゴ10個入り1パックを出した
関東なのでとち〇とめである
「何これ?真っ赤だよ?」
「なんか血みたいな色だね~」
「これはイチゴだ。美味いぞ~。俺の世界では、大抵の人が好きだ」
「えっ?そうなの?血の塊みたいなのに?」
「それを聞いたら血みたいな色でも食べてみないといけないね」
どんだけ食いしん坊なのか・・・
大河が手始めにへたを取ってパクッっと食べた
「う~ん、うまい!」
「これを取るのね?」
大河を真似てへたを取って恐る恐る齧った
「う~~ん。美味しい」
静も姉の感想を聞いてパクついた
「何これ~。おいし~~~~。これ好き~」
「これは売れるわ」
「買っちゃうと思う~」
「だが、結構高いぞ。自分の利益を考えるとこれで10文かな」
「10文か~、それだと流石に考えちゃうな~」
「お金に余裕があれば買うかな~」
「まあ、試しに売ってみるか」
それから2日後、大河は商品を並べ終えて、店を開けた
開店ということもあり巴と静にお店を手伝ってもらうようお願いした
「「「いらっしゃいませ~」」」
大河達は店のまえで呼び込みを行っていた
町人
「珍しい物ばかりだ。これは何だ?黒い水?」
町人が醤油の入った樽を見て言った
別の町人
「う~ん、この酒、高いな~」
店の入りは悪くはないのだが、値段が高いのかあまり食いつきが良くない
「あまり売れ行きが良くないな」
試しに置いてみたイチゴも全く売れていない
とそこへお花がやってきた
「大河、出店おめでとうございます」
「お花さん、いらっしゃい」
「お店の商品を見させてもらいますね」
「どうぞ、どうぞ」
お花は店の商品を順に見ていった
「これは何です?」
醤油が入った樽を差して言った
「醬油という物です」
「何に使うのです?」
「料理の味付けに使ったりします」
「これは?」
胡椒の入った小さな壺を差して言った
「これは、胡椒といいます」
大河は壺の蓋を開けて胡椒を見せる
「胡椒?!これが胡椒なのですね?噂には聞いたことがありますが、これが・・・」
「そうです」
胡椒や砂糖など、この時代の貴重品をいくらにするか悩んだが、胡椒や砂糖はあまり大量に売れないだろうと思って、高額な値付けをしていた
特に砂糖は、菊婆さんのあんころ餅に影響を及ぼしてしまうことを、危惧したのである
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戦国時代の砂糖の価格は購入する場所によって違ったとのことだが
凡そ1kgで240文ほどであったという
胡椒は日本ではあまり使われなかったとのことで(要するに肉料理がなかった)
価格はそれほど高くはなかったとのこと
色々な説があるが凡そ1文で13gほど買えたようである
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「これはどう使うのです?」
「料理の香り付けとか、臭み取りとかですね」
「なるほど。ですが、個人的には高すぎて手がでません。奥方様の御用でしたら買えますが」
「やはり高いですか?」
「庶民には高いでしょう。とても買えません」
「胡椒と砂糖以外はそんなに高くはないと思いますが」
「そうなんですが、大河の商品は、どうやって使うのか分からない物が多いのです。これはなんでしょう?」
とかつおの削り節を指さして聞いてきた
「それは、かつおの削り節です」
「かつおの削り節?」
「出汁を取ったり、ご飯に掛けたりして食べます」
「私が見る限り、ほとんどの商品が見たことない物ばかりです。どうやって使うの分からないので、商品の価値を判断できないのです」
「なるほど。宣伝しないといけないってことですね。お花さん、貴重なご意見ありがとうございます。お礼にかつおの削り節をお渡しします」
「使い方を教えてくださいね」
「ふ~む。そうしましたら、味噌汁を作りましょうか」
大河は竈に火を付け鍋にお湯を沸かし始めた
沸騰した所にかつおの削り節を入れ出汁を取り、取った出汁に小松菜と味噌を入れ味噌汁を作った
そして、できた味噌汁をお椀に入れ、お花に手渡した
「どうぞ、お熱いのでお気をつけて」
「良い香り。頂きます」
お花は味噌汁をずずっと啜り顔を綻ばせた
「まあ、美味しい」
普段冷静沈着なお花からすると珍しいことである
「とても美味しいです。味噌汁とは思えないほど。これがかつおの削り節の味なのですか?」
「そうです、その効果を確かめるために、かつおの削り節無しの味噌汁も飲んでみてください」
そう言うとかつおの削り節なしの味噌汁を作ってお花に渡した
お花はかつおの削り節なしの味噌汁を啜って唸った
「これがいつもの味噌汁の味ですね。確かに全然違います。かつおの削り節を入れた味噌汁の方が断然美味しい」
顔を上げたお花の目が光った
「大河、ここにある全てのかつおの削り節を貰えますか?」
「えっ?全部ですか?」
「ええ、全部です」
凄い迫力のお花に大河の頬が引きつる
しかし、商売のチャンスと見た大河が気を取り直して提案する
「それでしたら、削る前のかつお節の方がよろしいでしょう」
そう言うと大河は店の奥に取りに行く振りをして、楽市楽座でかつお節(1本入り、長さ30cm x 太さ5cm)を10個購入した
それを籠に入れて店に戻るとお花に見せる
「これが削る前のかつお節です。これをカンナなどで削るとかつおの削り節ができます」
「ふむ。なるほど、そうなっているのですね」
「しかも、削りたての方が削って時間が経ったものより香りが良く美味しいのです」
「これよりも美味しいのですか?!」
「美味しいのです!」
「そこまで言うのでしたら、それを貰います。幾らですか?」
「10本で600文です。使用量にもよりますが、長持ちするはずです」
「分かりました、貰います」
「それに、削り節で取った出汁に、そこの醤油を加えると色々美味しい料理ができますよ」
「それは良い事を聞きました。その醬油も貰います」
「こちらは竹筒1つで10文です」
「そちらは安いのですね」
「はい、特別にお安くしています」
「ふふふ、大河は商売上手ですね」
「色々な料理に使ってみて下さい」
買い物に満足したのかお花が心なしか軽やかな足取りで帰っていった
初めて投稿致します
拙い所もあると思いますが、広い心でお読みいただければと思います
誤字脱字、歴史考証の不備など歓迎いたします
しかし、物語優先で時代考証は完璧にしようとは思っておりませんのでどうぞよろしくお願いいたします
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