10話 城
趣味で書いてみました
戦国時代にネットショッピングがあったら、こうしたいなと思って書きました
あれから2か月ほど経過した
餅屋の仕事も順調で、川越の町であんころ餅は評判となっていた
12月のある日
「そろそろ寒くなってきたね」
と菊婆さんが言った
「そうですね」
と大河が返事をしながら餅屋の鎧戸を開けて開店しようとした所
「よお、今日もあんころ餅を2つくれ」
と源さんが言った
「源さん、今日も早いですね」
と大河が応じる
「だけどよ~、そろそろ寒くなってきたじゃねぇか。餅じゃなく、温かい物も食いたくなってきたなと思ってよ~」
「温かいもの・・・か。そうだ!」
そう言うと大河は店の奥に入って行った
「菊婆さん、お湯とお椀を貸してください」
「何に使うんだい?」
「良いことを思いつきました。見ててください」
とお湯であんこを溶かし始めた
味見をしながら丁度いい所で止めた
「これに餅を入れます」
お汁粉である
お汁粉の入ったお椀を持って源さんの所い行く
「どうぞ食べてみて下さい」
「どれどれ?」
源さんがお汁粉を口に入れた
「おっ、これは良いね~。温っけ~し、うめ~」
「あんころ餅を買って、お湯で溶かせばこれができますよ」
「大河、おめ~商売がうめ~な~。だが良い案だぜ~」
「お得意様を逃したら大変ですしね」
「ハハハ、商売繁盛だろうに」
「一お客様でも大切にするのが大事なんですよ」
「そりゃありがたい」
大河、源さん
「「ハハハハハ」」
それはお昼近くであった
城から使者がやって来たのだ
使者
「餅屋お菊、権蔵、殿がお呼びである。あんころ餅を持て明日城に参上せよ」
菊婆さん、権蔵爺さん
「「な・なんと?」」
使者
「良いな?しかと伝えたぞ」
菊婆さん、権蔵爺さん
「はは~、参上仕ります」
使者は伝え終わると早々に城へ戻って行った
「「なんかとんでもない事になったぞ」」
と菊婆さん、権蔵爺さんが慄いている
「良かったじゃないですか。これでお城のお墨付きを貰えば安泰ですよ」
「そう言ったって、お城に行かなきゃならないんだよ?」
「そうじゃ、お城なんてとんでもない事じゃ」
「大丈夫ですよ、あんころ餅を持っていけば良いだけじゃないですか。悪いことをした訳じゃないので堂々としてれば良いんです」
「爺さん行ってきておくれよ」
「ワシか?ワシしか居らぬか。そうじゃ大河、おぬしも一緒に行ってくれぬか?あんこの事を聞かれても儂には答えられんでな」
「分かりました、同行します」
「明日は気合を入れて作らねば。大河、身だしなみを整えておくのじゃぞ」
「身だしなみ・・・。服がこれしかありません」
一張羅の服を指さして大河が言った
「婆さん、大河が着れそうな服はないか?」
「ちょっと探してみるよ」
菊婆さんが服を探しに行った
暫く経過した所
「これならどうかね、爺さんが着れなくなった服があったよ」
菊婆さんが奥から服を持ってきて爺さんに渡す
「大河、これを着てみよ」
権蔵爺さんが大河に服を手渡した
大河は渡された服を着てみた
「これならなんとかなりそうじゃ」
権蔵爺さんが爺さんの服を着た大河を見て安心した様子で言った
「大河よ、明日はこれを着て城へ行くのじゃぞ」
「分かりました」
夕方になり店仕舞いをしていつもの3人で家に帰る
「大河、明日大丈夫なの?」
「大丈夫だろ。変なことをしなければお咎めなんてないさ。それよりお店を宣伝する好機だ」
「そうだよ、お城に認められたら安泰だよ~」
「あんた達はのんきね~。私は心配」
家に帰ってくると
「そういえば身だしなみをキチンとしないといけないんだったな」
「そうよ、どうするの?」
「風呂を作って、入るか」
「えっ?お風呂を作るの?今からなんてできるの?」
と巴がありえない想像をしているのか不思議がっている
「そうだ、風呂を作る。お金もこの2月でだいぶ貯まったし、お布施の額も上げられるから色々できるぞ」
この2か月の出勤日数は50日であった、1日の平均売上は150組x2文
50x150x2となり合計15000文、つまり15貫であった
このままお金を楽市楽座に吸い取らせるのはマズイため
10貫の小刀を買い、それを楽市楽座に吸わせた(5貫は取っておいた)
その額100万ポイントである
今の合計は色々あって189万ポイントとなっている
「まずはポータブルバスタブだな。その次にスノコ、80x50cmを8個」
保温材質のポータブルバスタブ15000ポイント
スノコ3000ポイントx8個
風呂桶2個、洗面器2個、椅子2個で21000ポイント
合計65000ポイントで購入した
ボンッ ドスドスドス
「うわっ。色々出てきた」
「これを家の前部分の仕事場に設置する」
ポータブルバスタブを壁際に設置し
その付近にスノコを設置
その上に椅子、洗面器を置く
風呂桶は、1つはバスタブの脇に、もう1つは釜の近くに置いた
釜でお湯を沸かしバスタブに入れていく
ある程度溜まった所で水を入れ温度の調節をする
「これでできたぞ」
「これがお風呂?」
巴の経験からしたら想像の範囲外の風呂であった
「私、初めて入る~」
静は初風呂らしい
「おっと忘れてた」
大河は楽市楽座でシャンプー、ボディソープ、タオル3枚、バスタオル3枚を購入
ポンッ
出てきたシャンプー、ボディソープを指さし
「こっちが頭を洗う用で、こっちが体を洗う用」
「それ何?」
と巴が聞いてきた
「なんと説明したもんか・・・。体を綺麗に洗える薬かなぁ?こういうのを石鹸というんだ」
「綺麗に洗える薬?私も綺麗になるかなぁ?」
巴が女の子のらしいことを言う
「綺麗になるさ。そのための物だ」
大河は自信満々だ
「私も綺麗になる~」
静も女の子のようだ、綺麗という言葉に強く反応する
「それじゃあ、先に2人で入っていいぞ。俺はそっちに行ってるから」
「大河も一緒に入ろう」
と巴が言った
「?!」
大河の動きが止まった
「そうだよ、大河お兄ちゃんも一緒に入ろうよ。使い方も分からないし」
静も一緒に入ることに賛成らしい
「えっ?良いの?」
「「良いに決まってるよ」」
巴と静がハモった
{本当に良いのかなぁ}
{まあ2人とも良いって言うし・・・}
大河が罪悪感を感じていると
「ほら入るよ」
と巴が大河の手を引っ張る
なんやかんやで3人でお風呂に入ることになった
{なるべく見ないように}
「2人とも椅子に腰かけてくれ」
「「は~い」」
「まず、巴から洗うぞ。静はやり方を見ること」
「うん」
お湯で巴の頭を濡らす
「あったか~い」
お湯で濡らした所で大河がシャンプーを手に取る
シャンプー巴の髪に乗せ髪を洗い始める
「全然泡立たない。こりゃ~、もう一回だな」
大河が巴の髪を一通り洗うとお湯でシャンプーを流す
すると凄く汚れたお湯が流れていった
「もう一回洗うぞ」
シャンプーでもう一度髪を洗う
「おっ、泡立ってきた。この感じだと後1回洗いたい所だが、今日は静も居るし勘弁な」
お湯でシャンプーを洗い流すと
ゴワゴワだった髪が綺麗でサラサラな髪になっていた
{おっ元は良いじゃん}
大河は巴の髪を見て認識を改めた
「お姉ちゃん、綺麗になった~」
「そう?」
「良し、次は体だ。巴、顔と前は自分で洗ってくれ。使い方はこうだ」
大河はボディソープの使い方を実践してみせた
「わかったわ」
巴はボディソープをタオルに付け体の前の方と顔を洗っている
大河はタオルにボディソープを付けて
背中をゴシゴシ洗う
こちらも全く泡立たない
全身をボディソープで洗った後、お湯で流す
「もう一回だな」
もう1回同じ様に洗うと
瑞々しく綺麗な肌が現れた
{うっ、これはっ}
「わ~お姉ちゃん、綺麗」
「ホントに?」
「ホントだよ~」
「これで終わりだ。次は静を洗うから、巴はやり方を見ててくれ」
平静を装いながら大河が言う
「良いわ」
大河は、静も同じように頭と全身を2回ずつ洗う
「静も綺麗になったよ」
「ほんと~?」
「別人みたい」
{ホントに2人とも別人だ。すげ~美少女だ。やべぇ、顔が赤くなってきた}
「次は大河の番だね」
「私たちが洗ってあげる~」
「い、良いよ、自分で洗えるから」
「洗い方を実践したいのよ」
「そうだそうだ」
「分かったよ」
巴と静を洗った手前、自分だけ拒否するのもどうかと思い直した
大河は前世を含めて40年近く生きているが、美少女たちに体を洗ってもらうという
人生初の僥倖に頭が混乱していた
「「大河、終わったよ」」
「あ、アリガトウ」
「大河、何か変だよ?」
「ダイジョウブ」
「???」
「イカンイカン」
なんとか理性を復活させられたようだ
「体を洗ったら、お風呂に浸かる。3人では大きさ的に入れないから先に2人で入ってくれ」
「大丈夫よ、大河の上に静が乗れば3人で入れるわ」
「そうだね、3人で入ろう」
大河
「⁉」
3人でポータブルバスタブに入る
大河の上に静が乗り、大河の対面に巴が座る
{うわ~~~。やべぇよ~}
大河は焦っていた
「「あったかくて、気持ちいい~」」
巴と静は大河と一緒でも何にも感じていないらしい
「こんなのに入れるなんて大河に感謝だね」
「うんうん。お兄ちゃんありがとう」
「・・・・・・・・・」
「大河、どうしたの?大丈夫?」
「・・・・・・・・・」
「何か変だよ、大河が・・・・」
その後の記憶がないが、どうやら自分で風呂を出て着替えたらしい
「大丈夫なの?」
と心配そうに巴が聞いてきた
「大丈夫だ」
「それならよかった。全く反応しないから心配したのよ?」
「もう大丈夫」
3人で布団に入った所で
「そろそろ寒くなってきたな。ブランケット2枚じゃ寒いから掛け布団を出すか」
「「掛け布団?」」
「そうだ、掛け布団というのを掛けて寝るんだ」
そう言うと大河は楽市楽座で特殊繊維で熱を逃さない掛け布団を3枚購入した
合計で18000ポイントだった
ドサドサ
「これを上に掛けてみてくれ」
「これ温かいの?」
「ああ、凄く温かいはずだ」
「ほんとだ~、だんだん温かくなってきた~」
静が嬉しそうに言った
「ほんわか温かくて気持ちいいのね」
「だが、本当の効果を知るのは朝になってからだ」
大河がニヤリと笑った
「「???」」
不思議がる巴と静
朝になって
「巴と静、おはよう」
「「おはよう~」」
「ほら起きるぞ」
「お布団から出れないよ~」
静が真っ先に降伏宣言をした
「この掛け布団が心地良すぎるよ」
巴も同じだった
「だろ?その布団はそうなってしまうんだ」
「これが昨日大河が言っていたことなのね・・・」
「こういうことだったのか~」
2人をなんとか布団から引きずり出し、準備を整えさせて餅屋に出勤した
「さあ、餅とあんこを作るよ」
「気合いを入れるぞ」
菊婆さんと権蔵爺さんの2人は気合が入っていた
いつものようにあんころ餅を150組作り
その中で出来の良い物50組を選別し城へ持っていくための物として箱に入れた
お昼前くらいに、権蔵爺さんと大河は着替えて城へ行く準備を整えた
「良し、行くぞ」
「行ってきます」
商店街を抜け武家屋敷の区画に入る
そこから暫く行くと城の門が見えた
門の前に着くと
門番が立っており用件を聞いてきた
「何奴?用件を述べよ」
「へい、餅屋の権蔵でございやす。餅を持参しやした」
「相分かった、暫し待たれよ」
と奥へ入って行った
30分程待っただろうか
門番が帰ってきた
「中へ入れ、女中が案内いたす」
「はは~」
門の中に入ると
20代半ばくらい、どこかの有力武将の娘だろうか?
というようなお淑やかな雰囲気の女中が待っていた
女中がお辞儀をして話し始めた
「お花と申します。ご案内しますので離れず付いてきてください」
権蔵爺さんと大河は頷くとお花について行った
「ここでお待ちください。呼ばれましたら、そこから部屋へお入りください」
「分かりやした」
暫くすると
「餅屋権蔵入れ」
という声がした
「ははっ」
権蔵爺さんと大河は餅の箱を持って部屋に入った
その部屋は50人は優に入る大きな部屋であった
その中には大勢の武士が居り、こちらをしげしげと見つめていた
そして、部屋の一番奥にいる城主と思われる男が言った
「よう来た、儂が大道寺資親じゃ。此度は町で評判になっているという、あんころ餅を食うてみたいと思って呼んだのじゃ」
「ここに持参して参りました」
権蔵爺さんが箱を近くの侍に渡す
大河は
{あれが大道寺の殿様か。凄い迫力だ、やはり戦国武将の実物は違う}
と思っていた
侍が城主に持っていき、箱を開けると
「これがあんころ餅か。うまそうな匂いがするぞ」
資親が手をつけようとした時
「殿なりませぬ。毒見をしてからですぞ」
厳しそうな年老いた武将が言った
「分かっておるわい」
「毒見役をこれに」
毒見役がやってきてあんころ餅の毒見を開始する
「な・なんと、これは・・・」
顔を見ると綻んでいるように見えた
「どうした?毒か?」
「い、いえ。毒は入っておりませぬ」
「爺、良いな?」
「かまいませぬ」
「それではあんころ餅と酒を配れ」
武将全員の机に餅が配られた
「それでは始める」
と資親は言った
席に居た武将たちが思い思いにあんころ餅を食べ始める
「うまい。うまい」
「これはうまいぞ」
「こんなにうまい餅は初めてじゃ」
「これはうまい。これならどんな疲れも癒してくれよう」
「殿、此度はこれほどうまい餅を振る舞って下さり感謝の言葉もございませぬ。我ら一同、殿にさらなる忠誠を誓いましょう」
「うむ、儂もお主らの働きを期待しておる」
武将たち
「はは~」
どうやら大道寺の殿様は部下の歓待に成功した様子だ
「餅屋権蔵、大儀であった。お主の店を我が大道寺家のお抱えとする。1か月に1回、あんころ餅を献上してくれるか?」
「はは~、勿体なきお言葉。毎月あんころ餅を献上いたしまする」
「そうか、今日は良い日となった。お抱えの印は後程届けさせる」
「はは~、ありがたき幸せ」
「下がって良いぞ」
「失礼仕ります」
権蔵爺さんと大河が部屋から出てゆくとお花さんが待っていた
「こちらに」
権蔵爺さんと大河がお花に付いて行くと十二単を着た女の人が声を掛けてきた
「奥方様、餅屋をお連れしました」
「お花よ、大儀であった。さて、お主らを呼んだのは他でもない。あんころ餅をわらわ達も頂きとう思ってのことじゃ」
奥方の後ろの方に子供たちが様子を見ている姿が見えた
「申し訳ございませぬ。全て資親様にお渡ししておりまする故、ここにはございませぬ」
「分かっておる。また持ってきてくれぬかと聞いておるのじゃ」
「本日はもう店にも無いと思います故、明日ならば」
「本日はもう無いのかえ?相分かった、明日でも構わぬ」
「権蔵爺さん、持ってくるだけなら俺が明日ここに来ますよ?」
「大河、頼めるか?」
「はい、大丈夫です」
「奥方様、明日ここに居る大河が餅を届けまする」
「相分かった。すまぬが頼んだぞえ」
「はは~」
こうして城への訪問が終わった
餅屋に帰ってくると権蔵爺さんがへなへなと座り込んだ
「緊張したわい」
「どうじゃった?」
と菊婆さんが聞く
「大成功じゃ、大道寺様のお抱えにもなった」
「それはめでたい!!」
「うむ」
「菊婆さん、権蔵爺さん。おめでとうございます。これで安泰ですね」
と大河が言った
「全ては大河のおかけだよ。ありがとさね」
「いえいえ、これも何かの縁ですよ。縁が繋がっての成功です」
「今日はお祝いをしようかね。お抱えになったお祝いだよ」
今晩はお祝いとなった
皆も菊婆さんの振る舞ってくれた料理に舌鼓を打ち
権蔵爺さんも今後の明るい展望に舌も饒舌だった
初めて投稿致します
拙い所もあると思いますが、広い心でお読みいただければと思います
誤字脱字、歴史考証の不備など歓迎いたします
しかし、物語優先で時代考証は完璧にしようとは思っておりませんのでどうぞよろしくお願いいたします
また、告知なしでの変更等がありますことをご了承ください
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