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「はい!OK!お疲れ様ー!」
何枚も何十枚も色んなカットを撮って、やっと撮影が終了した。
しかも加賀亘なんてプロのくせに度々顔を赤くさせて何回か撮り直した。
逆に私がなかなか可憐に清楚に笑う、ていうのができなくて何倍も撮り直したが。
普段使わない顔の筋肉がひきつってちょっと痛い。
もう二度とやるもんか。
この疲れは買い物だと思って叔父さんに目を向けると、叔父さんは電話中のようだった。
(あ......仕事かな)
叔父さんの顔つきがいつもと違う。
普段のおちゃらけた表情ではなくて、真剣な表情。
何回か見た事がある。
あういう表情の時は、叔父さんがこれからいなくなるって前兆だ。
(仕方ない。買い物はまた今度だね。)
近づいて行くと、丁度電話が終わったのか、溜め息をついている。
「叔父さん、呼び出し?」
「さくら。」
すぐ傍まで来て初めて私に気付いたみたい。仕事の事を考えていたんだろう。
「ごめんな。約束破って。今度たんまり埋め合わせしてやっから」
「うん。仕方ないね」
「超可愛かったぞ?」
そう言ってくしゃくしゃと頭を撫でるおじさん。
私はこれが、昔から嫌いじゃない。
「でも....そうだな....おーい、亘くーん!」
頭に手を置いたまま、叔父さんが何か考えて加賀亘を呼んだ。
加賀亘は呼ばれてパタパタと小走りで近づいてきた。
何を言うつもりだう?
「な、なんでしょう!?」
あ。ちょっとどもってる。やっぱりスポンサーって気がひけるのかな。
「亘君さくらと同じ学校の同級生で家近所って聞いたしさ、うちのさくら、どっか旨いケーキ屋連れてって?そんで送ってやって?」
そう言ってポン、と一万を加賀亘に渡す叔父さん。
ポカン、と私と加賀亘が叔父さんを見返している内に、叔父さんはじゃ!とか言ってその場を去った。
「...............叔父さんの馬鹿」
「へ!?なんで!?」
「.........なんでも。無理にこなくてもいーよ。疲れてるでしょ。」
「い、行ってもいーならお供します!」
「そお.....?美味しいとこ知ってたら案内して?無性に物凄い甘い美味しいケーキ食べたいの。」
「お、お、おっけ!」
なんでどもる。
食べたい物までわかっちゃう叔父さんを恨めしく思い、加賀亘とくっつけようなんて考えてたら海に沈めてやると思った。
同時刻、叔父さんが突如悪寒がしてブルッとふるえたのは別の話。