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黒い髪に黒目が多めの猫目のコウは、桜の花びらが舞う中で異質に見えた。
ピンク色で綺麗で、誰もが目を奪われる筈の桜の花びらが、その時は色あせた様にコウだけがクリアに見えた。
黒猫が化けて出てきて異世界に連れて行かれるんじゃないかと、ちょっと、ほんのちょっと、考えた。
それくらい不思議な感じだった。
だから普段は誰かと目を合わせても素通りするところなのに。
目を逸らせなかった。
逸らしたくなかった?
気づいたら、話しかけてた。
『あなたも桜に導かれたの?』
コウは驚いた顔をしてたけど、すぐにあのくったくない顔をして笑った。
その笑顔を見た時、どこかでカチッと音が聞こえた気がした。
運命なんて信じてないけど、コウと会うのは必然だったんじゃないかと思う。
私たちはそこから。
まだ三ヶ月しかたってないなんて信じられない。
それまでコウを知らなかったなんて嘘みたいに、自然と打ち解けて話したし出掛けもした。
「さくら?」
ぼぅっとそんな事を考えていると、誰かに声をかけられた。
ピクリ、と反応する。
「何してんの?こんなとこで。」
振り向くとコウがいた。
キョトンとした顔をして、こちらを見ている。