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始業式の日の帰り。
靴箱に行くと、目の前に今朝見惚れた相手がいた。
こちらに気づくと目を細めて笑う。
その笑顔にドキッとした。
「桜の君だ。」
「なんだそれ」
突然サクラノキミ、と言われて思わず笑ってしまう。
「名前、なんて言うの?私、橘さくら。桜の木の下で会ったから、なんか変な名前みたい」
そう言うとクスクス笑った。
花みたいに笑う。さくら、て名前がとても似合う奴だと思った。
「中岡幸太郎。よろしく。一年クラスメイトだしな。」
手を差し延べる。
彼女は一瞬キョトン、と言う顔をして、やっと意味がわかったのか手を重ね合わせる。
「よろしく、コウタロウ君?」
ニッと笑った顔が、やけに印象的だった。
「どうした?」
「....一緒に帰らない?」
俺が靴を履いている間も立ち去る事をしないから、不思議に思って聞いてみると、予想に反する答えが返ってきた。
なんで、と聞き返すのも変だな、と思ってああいいよ、と二つ返事をした。