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コウは佐藤先生の事を先生と堅苦しく言わず”せんせい”と言う。
響きが違う。
それがやけに耳障りだ。
話の内容は次の試合の助っ人の話みたいだけど、態度が気に入らない。
ふわふわ笑う佐藤先生。
コウだっていつもより柔らかく笑うーーーーー気がする。
「さーくらっ」
遠目から気付かれない様に眺めていると、背後から幸乃が私の名前を呼びながらスキップしてくる。
「何?浮かれて。」
「えぇ?浮かれてないよぅ」
嘘だ。スキップして来た。
顔もニコニコだ。
「う。浮かれてました!いーじゃない別に。」
私の顔がそのまま感情を表してたのか、幸乃は直ぐに訂正する。
「何に浮かれてたの?」
「ん?へへ。な・い・しょっ」
語尾にハートマークでもつけてそうな声色に、嫌気がさす。
「どうせあんたの憧れる梨木先生絡みでしょ」
「うわっさくら!シーッシーッ!」
人差し指を口にあてて慌てた様子で私に詰め寄る幸乃。
「なんにしても」
「....ん?」
「よかったね」
キョトン、とした後、顔を真っ赤にしてふにゃっと笑う幸乃は、
すごく.....
すごく可愛い。
こんな幸乃を知ってるから。
佐藤先生といるコウを見ると、不安になるんだ。