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私は今、機嫌が悪いらしい。
らしい、て言うのは、自分ではわかっていなかったから。
眉間に皺ができていたらしく、コウが困った顔をして覗いて来る。
ニコニコ覗かれるのも弱いけど、眉を下げて覗かれるのはもっと弱い。
何その顔。
可愛い...なんて、男の人に使っていいものかわからないけど、思ってしまう。
でも私はそれでも突っぱねる。
それぐらい、機嫌が悪かったらしい。
事のおこりは期末テストだ。
いや、実際は勉強会以降か。コウがやけに勉強に熱心になって、授業も大真面目に受ける様になった。
元々助っ人云々、色んな部活に顔を出しているってだけあって、コウは部活やってる人に顔が広い。
それは先生方にも共通していて、厳しいと評判の学年主任の先生とも、仲よさ気に話してたりする。
顔が広いだけならよかった。
でも、期末テストの成績があまりに急上昇したものだから、コウに興味を持ち出した女子が多い。
キャピキャピした煩い女子はムカつくけどさして興味はない。
厄介なのはーーーーー
「中岡君」
「ん?あ。佐藤せんせいだ。元気?」
「ふふ。元気。今、時間ある?」
「何ー?」
この先生。
男子、女子バスケ部顧問の佐藤綾子。
ふわふわ柔らかそうな髪とふわふわ柔らかい表情と仕草に口調。それに合わない良すぎるスタイルの持ち主。
男子生徒に絶大な人気を得ている先生だ。
最近、コウとよく話しをしている所を見かける。
その度に、私の眉間に皺が増える。