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高校二年の春。
始業式の日に登校すると、クラス替えの紙を見て各自教室に向かう。
自分も教室に向かおうと、階段を上ろうとすると、ヒラリ、とピンク色の花びらが目の前をかすめた。
半身翻し、それが吹かれて来た方角を見る。
それからは特に何が吹かれて来るわけでもなかったが、なんとなく、足はその方角に歩みを進めた。
まだHRまでは時間があったから。
その日は進級で新学期、と言う空気になんとなく気分がよかったから。
そんなわけで足取りは軽かった。
向こう側が微かに明るい。
方角からして、中庭からの明かりか....
(カタンーー)
廊下から中庭に出る小さな段差を降りると、中庭の真ん中になかなかの大きさの桜の木が目に映る。
いや、桜の木だけじゃない。
こちらに背を向けた、肩より下まで伸びた薄茶色の髪が綺麗になびく、華奢な姿。
段差を降りた音に反応したのか、こちらに振り向くその女生徒。
(ザアッーーー)
春風が吹き、ピンク色の花びらがいくつか舞う。
その鮮やかさに負けない綺麗な作りの顔に、姿に、思わず絶句する。
「――....あなたも桜に導かれたの?」
これが俺とこいつの出会いだった。