52.狐の夢
短いですがよろしくお願いします
【言う通りにすれば、失ったものを全て元に戻してやろう】
目の前で文字が揺れた。
【会いたいだろう?家族に…友に…。】
会いたい。
叶うならもう一度会いたい。
【ならば、言うとおりにしろ。】
本当にそんなことができるの?
だって…もう、誰も…。
【できる。他のものはできないだろうが、私ならできる。】
なんで?
【私は「特別」なのだ】
特別?
【さぁ、選べ…】
会いたい…会えるのならみんなに会いたい。
一人ぼっちは寂しいよ。怖いよ。父さん、母さん、ゴン、サギ、シュウ、みんな…。
会えるはずがない…例えどんなに魔法を使ったとしても…。
それはわかっている…
でも、でも…僕は…
会いたい。
【交渉成立だ】
再び文字が揺れた。
その瞬間、闇に包まれる。もしかしたら…僕は悪魔と取引をしたのかな…
闇に体を取り込まれながら頭は大分落ち着いていた。
…それでもいいよ…。
悪魔だろうが神様だろうが関係ない。
僕はもう一度みんなに会いたいんだ。
ただ、会いたいんだ。
あの頃みたいに…大好きな人たちに…
会いたいんだ。
だから…
「しっかりしろ!」
ごめんなさい。
騙されてたんだ。あいつは何もしてくれなかった。
嘘ついてごめんなさい。
早く逃げて…。一生懸命走ったけどもう時間がない。アレがくる。
ごめんなさい。
あんなに優しくしてくれたのに。
ごめんなさい。
僕はこれでみんなのところに行けるかな?
それとも…
「この子を助けます!!」
遠くで…聞こえた気がした…。