37.侯爵令嬢とイスラ王国-4
1日に3つの都市を駆け回り、ワクチンと抗毒素の投与を行う。
そんな活動を続けた8日目。
この1週間のうちに大都市と町はできるかぎり周り、ワクチンを届け抗毒素を投与して来た。残すは、はずれにある村や小さな集落だけ。さすがに全部を回りきることはできないが、私達は最初に感染が始まったとされる村へ向かっていた。
福利厚生を管理するオウメ大臣の話ではほとんどの村人が死亡したとの報告だが、まだ生存している感染者はいると言う。感染が始まった原因はイスラ王国の調査ではわからなかったらしいが、どうしても初めに感染が始まった村は訪れてみたかった。
村の入り口に差し掛かったところで、ひゅんっ!と何かが私めがけて飛んできた。
「グギャー!!」
私を乗せていたアルがそれを綺麗にかわす。見れば、それは手作りのような矢だった。
「敵襲!」
テオ隊長の声が響き、私を取り囲む様に騎士が動くと、ユザキ様の部下が獣化して完全なドーベルマンになり、何かが飛んできた方向へ颯爽と駆けだした。
しばらく待っていると、何やら子供の声が聞こえてくる。
「やめろー!」
「はなせ!」
「にいちゃん!!」
「うわーーん!」
戻ってきたドーベルマン二頭それぞれの口にくわえていたのは、ボロボロの服を着た小さな狐とウサギ、そして大小の狸だった。それぞれの手には弓やスリンガー、棒切れが握られている。
「こいつらが矢を放ったようです。」
ペッと吐き出しように私たちの前に放り出されたのは獣人の子供たちはコロコロと転がったり、無様に地面に打ち付けられたりだいぶ痛そうだ。
「なぜ、こんなことをした?もし当たっていたら大変な怪我をするところだったぞ!?」
子供たちの前に膝をついて質問をするユザキ様に、狐の子供がベーっと舌を出した。
可愛いな、おい。
「答えるんだ。」
「いやだ!魔女の仲間なんかに答えてたまるか!!」
狸の子供が後ろ手に兄弟だと思われる小さな狸を庇いながら虚勢を張った。まん丸の尻尾がフルフルと震えているのが、可愛い。
「魔女?私が?」
「そうだ!嘘をついても俺たちは騙されないぞ!!」
「そうだ!俺たちは見たんだ!」
「お前が、作り出した蛾のせいで皆、おかしくなったんだ!!」
「うわーーン!!」
次々にしゃべりだしたかと思えば子供たちは一斉に私に向かった武器を構えた。さすがに騎士団も、子供相手に手を出す事はためらわれたのかどうしようかと顔を見合わせている。
「物騒なものを向けるな。」
すると、ひょいひょいっとテオ隊長が子供たちから武器を難なく取り上げてしまった。
「あ!!」
「何すんだ!」
「返せ!人間!!」
「うわーーン!」
キャンキャンと叫びだした子供たちについにクエルト叔父様の雷が落ちた。
「うるさーーーい!!!!」
物凄く大きな声に耳がキーンとなる。人間の私ですら耳が痛いのだから、獣人達には大いに効いたようで、ユザキ様たちの耳はピタッと伏せられ、さっきまで騒いでいた子供たちは耳をふさぎ、震えるしっぽをまたに挟んでいる。
うん、可愛い。
「と、りあえず、お話ししましょう。それに、私は魔女じゃないわ。アヤメというの。インゼル王国から来たのよ。」
アルから降りて子供たちの視線に合うようにしゃがんでゆっくり声をかける。「キュウっ!」と声を出して一番小さな狸の子が兄であろう一回り大きな狸の背中に隠れた。
「インゼル王国…?」
「あの魔法つかいがたくさんいる国か?」
「やっぱり、魔女?!」
「うぅ~…」
「だから魔女じゃないって。私達は、感染症にかかった人たちを治療しに来ているのよ。この村にも感染症で、急に怒りだしたり怖くなったりした人やケガをした人はいるでしょ?王様の命令で、そういう人達を治して回っているのよ。」
「この方たちの身分は俺が証明する。俺はイスラ王国将軍ユザキ・ミコリタだ。」
「ユザキ様!?」
「王様の命令!!」
「本当に!?」
「にいちゃん…。」
ユザキ様の名前を聞いたとたんに子供たちはおとなしくなった。さすがは黒将軍。自国での人気は高い。
「本当だ。全く、なんでこんなことをしたんだ?」
「…だって、あの夜に見たんだ。この女みたいな黒い髪をした人間が…人間が…。」
「どうした?」
急に話していた兎の子供がガタガタと震えだした。それが伝染するかのように他の子供たちも震えだす。その瞳には恐怖が浮かんでいた。
「おい、何を見たんだ?大丈夫だ。怒ったりしないから言ってみろ。」
ユザキ様が促すが、子供たちは顔を真っ青にしてただ震えるばかりだった。しまいにはしゃがみ込んで自分の体を抱きしめるように小さくなってしまう。
その姿が余りにも痛々しくて、我慢できずに私は子供たちに手を伸ばしそっと抱き寄せた。
「なっ!?」
「アヤメ!!」
テオ隊長とユザキ様の声がするが今は気にしていられない。
こんなに小さな子供たちが怯えているのに、ただ見ているだけなんてできない。私に抱き寄せられた驚きで、震えが止まりポカ…んと口を開けて子供たちにできるだけ優しく話しかける。
「…怖かったね。…よく我慢したね。」
そう言って四つの小さな背中を優しくさする。
「もう、大丈夫だよ。私たちが助けてあげるから。守ってあげるからね。」
少しだけ、抱きしめる力を強くすると腕の中のから鼻をすする音や涙にぬれた声が聞こえてきた。
紛争地域で医療活動をしていた時はよく子供たちをこうして抱きしめていたことを思い出す。抱えきれない恐怖や不安。その小さな体で押しつぶされそうになっている子供たちを少しでも安心させてあげたくて。抱っこセラピーの真似事から始まった行為だったけれど、この子たちを安心させてあげる事ができれば…。
「…あいつは俺たちの仲間を食った。」
ぽつりと腕の中から聞こえた声に私をはじめとした大人たちは驚愕した。
「獣人を食べる」
それはこの国で最も重罪とされる行い。元は獣で狩猟民族だったイスラの民は建国時に肉食・草食かかわらず、互いの肉を食すことを禁じたはずだった。
「馬鹿なっ!!」
ユザキ様の鋭い声が飛ぶ。その声に驚いて肩を揺らした兎の子供の背中を安心させるようにさすった。
「嘘じゃない。見たんだ。2か月くらい前だよ。」
「夜に皆でトイレに起きて。でも、蛍が綺麗で追いかけて。」
「森の中に入ったら、黒い髪の奴がいて…ツキおばちゃんを食ってた…。」
「うっ…うっ…」
「そしたら、そいつの中からたくさんの蛾が出てきたんだっ!!」
「…その蛾が…蛾が…皆をおかしくした…んだ。」
そこまで言ってまた私の胸に顔をうずめた狐の子供の背中をさする。
「よく話してくれたね。」そういいながらも頭の中では別の事を必死で考えた。
『狂犬病』それはもともとこの世界には存在しないはずの感染症だ。でも、もし子供たちの言うことが本当なら、その人物は病気を作り出すことができるということになる。しかもその作り出した物は、この世界には存在しない病気である可能性が高い。そこまで考えると様々な感染症が浮かんでくる。「マラリア熱」「エボラ出血熱」「コレラ」「ペスト」治療法が確立されている物から確立されていない物、あらゆる感染症が頭の中をかけめぐる。どれも共通しているのは『この世界で発生すれば確実に国が一つ消える』レベルの惨事になるという事。
恐怖で体が慄く。
「…話してくれてありがとう。そのことを知っている大人の人はいる?」
「いない…皆おかしくなって暴れだして…死んだ奴もいる。」
「お、お、母ちゃん…助けてくれる?また、優しいお母ちゃんに戻る?」
一番小さな狸の子供が泣きはらした目で私を見上げた。よく見れば、たくさんの傷がある。
「…お母さんに…?」
「ち、ちがう!お母ちゃんは悪くないんだ。僕が…僕が怒られることをしたから…。」
「やめろ!母ちゃんは…。」
私の言いたい言葉を察した狸の兄弟は母をかばうように言葉をつづけた。その姿に胸が痛む。きっと狂暴化した母親に受けた傷だろう。そして、兄弟たちだけではなく狐の子も兎の子も大小さまざまな傷を負っている。きっと、この傷も狸の兄弟と同じなのかもしれない。そう思うと、たまらなく胸が苦しくなった。思わず子供たちを抱きしめる腕に力が入る。
「…たくさんつらい思いをしたんだね。大丈夫、お母さんも大切な人も皆元にもどるから。」
…戻してみせるから。
子供たちを解放して、村に入ると屋外に敷かれた茣蓙のようなものの上に村人と思われる老夫婦が寝かされていた。すぐに抗毒素を投与し傷の手当てをする。やはり、村人のほとんどが感染し、死亡していたようで、残されていたのは四人の子供たちと老夫婦だけだった。国から派遣された軍人2名がこの村を見ていたようだったが薬師も1人しかおらず、十分な支援が行われていたとは思えない。都市から離れた村だから仕方が無いと思うが、感染が始まった村だけにこの対応の悪さには少し疑問が残る。
狂暴化した村人たちは家畜を入れる小屋に詰め込まれていたため、麻酔薬を使って眠らせ抗毒素を投与して、体を清めた。その中に、狸と兎の獣化した姿があった。きっとあの子たちの親族だろう…。体はひどく傷ついている。
…酷い…。
いくら襲われ傷付けられても、やっぱり親は憎めない。いつか元に戻ってくれると信じて、家畜小屋で傷つけあう親を見続けるのはどんなにつらいことだっただろうか。
抗毒素を投与した獣姿の獣人たちを手当てしていると、誰かが私のマントを引っ張った。振り返ると、先ほどの狸の子供だった。兄弟が体を寄せ合うようにして私の表情をうかがっている。
「母ちゃんは…治る?」
「治るわ。今はお薬で眠っているけど、目が覚めたらきっと優しいお母さんに戻っているわよ。だから、君たちは元気でいなきゃね。お母さんがけがをした君たちを見たらきっと悲しむもの。」
「俺は、こんな怪我平気だ!痛くねぇ!」
「ぼ、ぼくも!母ちゃんは悪くないんだ。」
「そうね…。誰も悪くない。誰のせいでもない。ここにいるみんなは必死で頑張ってきたのよね…。」
傷から出た血が固まってごわついた狸の兄弟の頭を撫でる。大人がいないこの村で、必死で生きてきたのだろう。二人とも子供とは思えないほどがりがりに痩せこけていた。
「ごめんなさい…。」
2人の輪郭が歪む。子供の前で泣くものか。と思ったけど…瞼にたまる涙をこらえることができなかった。兄弟に伸ばした手が震える。
「遅くなってごめんなさい。…たくさん、つらい思いをしたのに…今まで気づけなくてごめんなさい。」
感染が始まって2か月。その2か月の間この子たちが過ごしてきた時間を思うと、苦しくて…悲しくて…悔しくて…涙が止められなかった。
「う、う、うえっ…。」
弟狸がポスッと私のお腹に飛びここんだ。そして、小さな手でぎゅっとわたしの服を掴む。
「泣くな!ショウ!」
兄狸が目から溢れる涙を何度もぬぐいながら、弟狸に声をかける。
私は構わず兄狸を抱き寄せた。
「放せよっ…!俺は、これくらいじゃ負けないんだ。ショウも母ちゃんも、村も全部、ギンとサギと三人で守れるくらい強くなるんだ!!」
腕の中で暴れる兄狸の言葉に何度も頷きながら、クエルト叔父様に声をかけられるまで私は小さな塊を胸に抱き続けた。
どうか、このたちが幸せになりますように。
この村が平和に戻りますように。
全てが終わってから私は子供たちに声をかけた。
「ねぇ、お風呂入ろうか!」
「お風呂…?」
「そんなの無理だよ。俺たちだけじゃ、水も汲んでこれないし火も起こせない。」
「風呂桶もなくなっちゃったし。」
「うーー。」
子供たちは次々に無理だというが、私は得意げにほほ笑む。
「ところが無理じゃないんです!今日は、皆に魔法を見せちゃうよー!」
わざと明るく言うと子供たちが魔法の言葉にキラキラと目を輝やかせる。
「まずはインゼル王国騎士団4番隊アンさん!」
私の紹介に合わせてアンさんが横に立つ。そして地面に手をかざすとあっという間に大きな竈が出来上がった。ついでに、地面から何体かの土人形を出して子供たちを喜ばせる。
「つぎは同じく騎士団3番隊ドムさん!」
ドムさんは子供たちに手を振りながら颯爽と現れ、そのまま風を巻き起こし、その風に乗せてどこからか鉄の風呂釜を持ってきて竈の上に乗せた。最後に風で子供たちの事を一撫でするというおまけつきだ。
「続きまして同じく騎士団2番隊ミングさん!」
ミングさんは派手に水しぶきを上げて登場すると、ドムさんの持ってきた風呂釜を綺麗に水で洗い流し、なみなみと水を張った。
「そして、最後はこの方!同じく騎士団1番隊テオ隊長!」
テオ隊長は恥ずかしそうに私の横に立つと、竈に向かって火を放つ。竈にはいつの間にか木が入れられていて、ぱちぱちと燃えだした。テオ隊長はさらに風呂釜の周りにポツポツと火の玉を浮かせて子供たちを楽しませてくれた。
騎士団からの魔法ショーに子供たちは大盛り上がりで、拍手喝采だった。そしてその興奮のままにお風呂へ飛び込んでいく。クエルト叔父様がお手製の石鹸で泡風呂にしてくれたようで、子供たちの笑い声や歓声が村に響いた。
協力してくれた騎士の皆さんにお礼を言うと「いや、気にすんなよ。」「子供たちが喜んでくれてよかった。」と返してくれて、その優しさに改めて感謝する。騎士たちもあの子たちに思うところはあったのかもしれない。即席お風呂に入った子供たちを騎士が取り囲んで、皆楽しそうに笑っていた。
その姿を横目に、子供たちが脱ぎ捨てた服を近くの井戸で洗濯する。そういえばこの世界に来てからは自分で洗濯することもなかったが、洗濯板を使っての洗濯はどこか懐かしくて楽しい。すすぎ洗いの為に井戸の水を汲もうとすると、大きな手が伸びてきて井戸に沈んだバケツを引っ張り上げてくれた。
「テオ隊長!?」
井戸からバケツを引っ張り上げ、洗濯たらいに水を灌いでくれるテオ隊長に慌てて手を伸ばす。
「すいません!私がやりますから。」
「いや、いい。気にするな。」
「でも、隊長に水くみなんて。」
「…アヤメ嬢では井戸の水を引くのは大変だろう。私は手が空いているし手伝うことに問題はない。」
無表情で淡々と言葉を返され、申し訳ないともいつつその厚意に甘えることにした。正直水汲みは重労働なのでやっていただけるとありがたい。でも、私が作業するのをじっと見られるのはなんだか恥ずかしい。無表情とはいえ、美丈夫なテオ隊長の視線に首のあたりがなぜかゾワゾワする。
「貴族の令嬢なのに洗濯ができるとはすごいな。アールツト侯爵家の教育のたまものだ。」
「いえ、これは…独学です。いずれは私も平民になりますから。なるべく生活のほとんどは自分でできるようにしておきたいんです。」
さすがに、前世ではやってましたから!とはいえず嘘をつく。私の言葉を聞いたテオ隊長はすこし視線をさまよわせながらためらいがちに口を開いた。
「…貴族との婚姻は考えてはいないのか?…アヤメ嬢の年齢なら、そろそろ婚約者の話も出て良いはずだが。」
「結婚…ですか。いつかはできたら良いなとは思いますけど。正直今のところは婚約者含め望んではいないです。あ、でも可能であれば、結婚するなら政略結婚とかじゃなくて、きちんと恋をして好きになった人が良いです。」
「…そうか。」
「騎士の中には家庭を持ってい方もいると聞きました。アンリ叔母様の様に夫婦そろって騎士団所属でも素敵だと思います。」
「そうだな。…私も…そう思う。」
「!テオ隊長も同じ考えだったなんて、嬉しいです。」
…
……
………ん?
何げなく流れで出た言葉だったが、よくよくその言葉の意味を考えてハッとする。これじゃあ、まるで私がテオ隊長と結婚したいって言っているようなものじゃない!?
ヤバいヤバい!!誤解されちゃう!!上官にこんなこと言うなんて不敬すぎる!!
しかし、何か弁解しようと見上げた先のテオ隊長の顔がほんのり赤みを帯びていた。
…え?
思わず見入ってしまい、「どうした?」と返された瞬間、私の顔がボンッと燃える。
慌てて視線を手元に落として何とか息を整える。な、なんでテオ隊長赤い顔してるの?頬を染めた美丈夫なんて反則だよ!!どうにか熱を冷まそうとあくせくしていると低い声が降ってきた。
「水では冷たいか?手が赤くなっている。」
「え?あ、いやこれはっ」
言うが早いかぽわっとテオ隊長の手から熱が放出されたかと思ったら、盥の中の水がいつの間にかお湯に変わった。
「すご…い。」
「その、女性は体を冷やすのはよくないと聞いた。水仕事は大変だろうから、少しでもよくなればいいんだが…。」
テオ隊長の好意が嬉しい反面、なんだかとても恥ずかしくて冷めたはずの熱がまた集まってくる。
な、なんか…どうしたの私。鼓動が耳にうるさい。
「湯加減はどうだ?」と顔を覗き込んできた、いつもの無表情とは違う自然な表情が私の心を震わせる。
!…顔が…近い!!!!!
テオ隊長も顔の近さに気が付いたのか、バっと体を起こして距離を取った。
「す、すまない。近すぎたな…。」
ぼそぼそと言うテオ隊長がなんだか可愛く思えて、ようやく熱が引いた顔をテオ隊長に向ける。
「ありがとうございます。とっても温かくて気持ちいいです。」
「そうか…。よかった。」
顔を私から逸らしたテオ隊長が、クシャリと襟足の髪を掴んだ時、首筋と耳が赤くなっているのが見えた。その瞬間、冷めたはずの熱が再びくすぶる。
いかんいかん…!落ち着け私!くすぶる熱を無視して洗濯を再開する。
結局、テオ隊長は私が洗濯を終えるまで、そばにいて水汲みをしたり、水をお湯に変えたりとなんだかんだ手伝ってくれた。
その間に何度も心臓が破裂し、顔面がゆであがり、洗濯を終えた頃には私はだいぶ瀕死の状態だったと思う。テオ隊長は相変わらずの無表情だけど、時折、耳が赤いのは確認できた。…もう…本当に…疲れた。
洗いあがった衣類は1番隊と3番隊の騎士に熱風で乾かしてもらい、おふろから上がってさっぱりした子供たちは0番隊によって傷の手当がされた。
すっかりきれいになった子供たちは、ユザキ様たちが狩りをしてきてくれた食料をお腹一食べたかと思うと、あっという間に寝入ってしまった。
よく食べて、よく動いて、よく寝る。
子供の本来の生活に少しだけ戻してあげられて気がして、その無邪気な寝顔に笑みがこぼれた。