23.闇より始める
★短いので、本日はこの後にもう一話更新します。
※残酷な表現有り
クチャ…クチャ…クチャ…
薄暗い森の中、月も隠れた闇の深い時間。
シン…と静まり返った空間に咀嚼音が響く…。
ジュルジュルジュル…。
真っ赤な鮮血をすするその口は嬉しそうに口角を上げ、自分と同じ形をした5本の指のうち一本を骨ごとかみ砕いた。
「獣の血が混じるだけで人間といえど…こうも味が変わるとは…。」
誰に言うでもなく男はそのまま血肉をむさぼり続ける。
「さぁ、さぁ…獣人たちよ…。お前たちの血肉からは何が生まれるであろうか…。」
楽し気にささやいた男の陰からプツプツとおびただしい量の小さな蛾が生まれ出て、星のない夜空に舞い上がる。
ふっはは…
冷たく
掠れた
それでも、どこか楽し気な不気味な声が闇と共に広がった。
飛び立った蛾はおびただしい量で空に真っ黒な雲を描きながらゆっくりと進んでいった
1週間後…
「グワオウッ!!」
「キャー!」
「やめろー!!」
「助けて!」
昨日までの友が、家族が、隣人が突如として牙をむく。
「おい!どうしたんだよ!?俺だよ!!」
「ガルルルル…!ガウッ!!」
「やめろ!お前のおふくろだろ!!」
「ギャウギャウっ!!」
「ママー!やめて!いたいよー!!」
「わああああん!!!!」
いたるところで悲鳴が聞こえ、血の海が広がり…そして瞬く間に増えていく
「いいぞ…。いいぞ…。もっとだ…もっと絶望を創れ…。闇を植えつけろ…。あぁ…今夜は良い獣人の肉が食えそうだ…。」
誰も知らない。
何も見えない。
深い闇から
男はじっ…と
見つめ…そして笑う。