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乙女ゲームには当てはまらない~私には誰も選べないから~  作者: 来留美
第一章~私には誰も選べません~
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第七・王子様の琴夜くん

「姫。今日も可愛いね」

琴夜(ことや)くん苦しいよ」


今日も琴夜(ことや)くんは私の首に腕を回して抱き付いてくる。

可愛い弟って感じの琴夜(ことや)くん。

私にすごく懐いちゃってしっぽをフリフリしているワンちゃんみたい。

可愛い。


琴夜(ことや)、女子達が見てるぞ」

「あっ、本当だ。みんなが待ってるから姫、また後でね」


成夜(せいや)くんに言われ琴夜(ことや)くんは女の子達の元へルンルンと嬉しそうに向かった。


「何で女子と一緒にいたいんだろうな」

「え? 成夜(せいや)くん?」

「俺は男と一緒にいたほうが楽しいけど、琴夜(ことや)は違うんだよ」

「いつも女の子と一緒だよね」

「もしかしてあいつ、男が好きなのか?」

「それはないと思うけど、琴夜(ことや)くんって謎が多いよね」

「そうか? 変なやつだろ?」


今日も午前中は何もなく、静かに終わった。

私はお弁当を机の上に置いて気付く。

今日も琴夜(ことや)くんは教室を出て行く。

今日は何故か気になって追いかける。


「さゆら?」

「あっ、琴夜(ことや)くんに話があったの。すぐに戻るから」

「すぐに戻って来いよ」

「うん」


私は静かに琴夜(ことや)くんを追いかける。

琴夜(ことや)くんは屋上の入口の扉の手前で後ろを振り向きキョロキョロ周りを確認して屋上へ出た。

私も屋上へ出ようとゆっくり扉を開ける。

誰もいない。

もしかして。

私は嫌な想像をしてしまった。

勢いよく屋上へ出る。


「やっぱり姫か」


どこからか声がした。

でも、人の姿はない。


「上だよ」


そう言われて上を見上げる。

琴夜(ことや)くんが屋上の入口の上に立っていた。


「何してるの? 危ないよ」

「大丈夫だよ。僕はいつもここに来てるから」

「いつもって、お昼ご飯のとき?」

「そうだよ。僕の居場所」

「居場所?」

「僕はここにいるときが一番、楽なんだ」

「景色が綺麗だからだね」

「それもあるけど、ここが僕が僕でいられる場所」

「意味がよく分かんないだけど」

「これだったら分かる?」


琴夜(ことや)くんはそう言って私の前に飛び降りてきた。

ちょっと驚いたけど普通の人間よりは丈夫な体を持っている琴夜(ことや)くん達にはなんともないことを思い出す。


「俺は姫に選んでほしいよ」


琴夜(ことや)くんはそう言って私の顎をクイッとあげ、目線を合わせた。


「今、俺って言ったの?」

「うん。これが本当の俺」

「可愛い琴夜(ことや)くんは?」

「みんなが求める俺」

「どうして本当の自分を出さないの?」

「可愛い俺がいいでしょ?」

「私は琴夜(ことや)くんがなりたい琴夜(ことや)くんがいいよ」

「俺のなりたい俺?」

「そう。琴夜(ことや)くんが疲れない、()の自分」

()の自分?」


琴夜(ことや)くんは黙ったまま何か考えている。


「俺が俺を誰にも見せなくなったのは親に言われたからなんだ」

「何を言われたの?」

「あなたの見た目は可愛いから男を出すなって。その見た目にあった俺でいろって」

「何それ。そんなの親が言う言葉じゃないよ」

「でも俺も親と同じ考えなんだ。人は見た目で判断する。俺が笑えば可愛いって女の子達も笑う。笑顔がそこにあればいいんだって思ってる」

琴夜(ことや)くんの心はそれでいいの?」

「俺の心?」

琴夜(ことや)くんの心は悲鳴をあげないの? 苦しいって言わないの?」

「思っても言わないよ」

「どうして?」

「誰も望んでないからだよ」

「望んでいないから言わないのは私は望んでないよ」

「姫の言葉、何か変」

「変じゃないよ。私は望んでるよ。琴夜(ことや)くんの心の悲鳴。心の声を聞きたいよ」

「姫? 何で泣くの?」

「だって、琴夜(ことや)くんの心が可哀想で。言いたいのに言えない琴夜(ことや)くんが可哀想で」

「姫。泣かないでよ。俺の為に泣かないで」


琴夜(ことや)くんは私の涙を指で拭う。


「姫、見つけた」


またダークフォグ?

もう、いい加減にしてよね。

琴夜(ことや)くんのこともっと知りたいのに。

今回のダークフォグは翼を持っている。


「姫、俺から離れないでね」

「うん。成夜(せいや)くんを呼ばないと」

「呼んだよ。」

「どうやって?」

「これだよ」

「ブレスレット?」

「うん。この赤い石がボタンになってて、押すと成夜(せいや)が気付く仕組みなんだ」

「すごい。これは尋夜(ひろや)くんが考えたでしょ?」

「よく分かったね」

「やっぱり」


って、そんなこと言ってる場合じゃないよ。

成夜(せいや)くんが来るまでどうするのよ。


「俺だって、苳夜(とうや)みたいに鍛えてるんだからね」

「そうなの?」

「それじゃぁ、よいしょっと」


えっ?

何?

私は琴夜(ことや)くんにお姫様抱っこされてる?


「お姫様をお姫様抱っこするなんて俺って本当の王子様だね」


琴夜(ことや)くんは嬉しそうに可愛い笑顔を見せた。

琴夜(ことや)くんは私を抱っこしたまま走り回る。

そうよね。

私を抱っこしているんだから逃げるしかないよね。

そして、私達は隅に追いやられた。

逃げ道がなくなった。

どうしよう。

その時、


「俺はルイを呼ぶ。さあ、俺の盾となれ」

(てん)よ俺の声を聞け。雷の糸」


成夜(せいや)くんが呼んだ後、累夜(るいや)くんが現れた。

一筋の雷が、飛んでいるダークフォグに突き刺さるように落ちてきて、一瞬でダークフォグは消えていった。

一瞬のことで私の目は、ついていくのにやっとだった。


「姫、大丈夫?」

琴夜(ことや)くんこそ大丈夫? 重かったでしょ?」

「全然だよ。さっきも言ったけど、俺も鍛えてるから大丈夫だよ」

「俺?」

「あれ? 成夜(せいや)くんは知らなかったの?」

成夜(せいや)にも、誰にも言ってなかったからみんな知らないよ。姫が最初だよ」

「えっ」

「姫、俺の心の声を聞いてくれてありがとう。俺は姫にお返しがしたいな。」

「お返し?」

「俺を選んでよ。そうすればずっと姫に恩返しができるから」

「なっ」


琴夜(ことや)くんの最強の笑顔に私はやられました。

また顔を手で覆ったのでまた、成夜(せいや)くんがどうした? って言う。

成夜(せいや)くんは分かっていて言ってるよ。

もう、意地悪なんだから。


その後教室へ戻って琴夜(ことや)くんが俺って言ったらクラスの女の子達が固まった後、格好いいと言っていました。

よかったね琴夜(ことや)くん。

本当の琴夜(ことや)くんをみんな望んでたんだよ。


「姫。」

「何?」

「俺は姫だけだよ。どんなに女の子と話していてもいつも姫のことしか考えていないよ」


琴夜(ことや)くんは私の耳元で私にだけ聞こえるように小さな声で言った。



私の普通の学校生活は夢のまた夢になりました。

読んで頂きありがとうございます。

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