第五・王子様の尋夜くん
私のボディーガード達は今日も元気に騒いでいます。
「さゆら。誰にするか決めたか?」
「成夜くんは誰がいいと思う?」
「俺以外かな?」
「どうして?」
「俺はもう、この定めから解放されたいから」
「解放?」
「選ばれなければ俺の力はなくなるんだ。そして海道家の人間じゃなくなるから」
「えっ!」
「言ってなかった?」
「聞いてないよ」
「俺は選ばれたくないけど他のやつらは知らない」
「成夜くんみたいな考えかたもあるよね。みんなに聞かなきゃ」
私はまた最初の日のように後ろから視線を感じて振り向く。
尋夜くんが驚いて急いで本に目を向けた。
「ねえ、尋夜くんは一人に選ばれたい?」
「俺はどっちでもいい」
「どっちでもいいが一番困るよ」
「俺の力は成夜と同じで見るだけで攻撃なんて何もできないから、なくなっても何も問題ないし」
「それなら力が手に入ったら嬉しい?」
「嬉しい?」
「自分にない力が手に入るのは、今までできなかったことができるようになるんだよ? 嬉しいでしょ?」
「分からない」
尋夜くんはそう言って私に向けていた視線を自分の机の上にある本に向けた。
もう、話したくないという尋夜くんの行動。
私はその後、何も聞けなかった。
でも、尋夜くんの気持ちをちゃんと聞きたかった。
二人っきりで話せば何か話してくれるかも。
私は授業中、先生に頭が痛いと言って保健室へ行くことを伝えた。
成夜くんが一緒に行くと言ったが私は断った。
そして違う人にお願いをした。
「尋夜くん。一緒に来て」
「俺は却下」
「尋夜くんが来ないなら私は一人で行くよ。」
「誰かがついて行くよ」
「その誰かが尋夜くんがいいの」
「俺がいても何の役にもたたないけど」
「そんなことないよ。尋夜くんには頭脳があるんだから。それがあなたの武器よ。他の誰よりも強い武器」
「分かったよ」
そして私達は保健室へ向かわない。
だって私の仮病がバレちゃうでしょ?
尋夜くんのいつも行く場所に連れてきてもらった。
「図書室?」
「俺が一番落ち着く場所だから」
「いつも本を読んでるくらい好きなんだから図書室が落ち着くよね」
「俺は好きで本を読んでいる訳じゃないんだ。ただ知識を頭に入れたいだけ」
「えっ」
「俺の力はダークフォグの性質を知るだけ。最初に解析したら俺は必要ない。成夜より俺は何もできないんだ」
「どうしてあなた達みんな、人と比べるの?」
「俺達?」
「そうよ。みんな人と比べるから自分が劣っているって思うのよ。よく考えてみてよ。尋夜くんができるのに他のみんなはできないことあるでしょ?」
「俺ができて、あいつらができないことか」
「私は尋夜くんだけができることたくさん知ってるよ」
「たくさん?」
「そうだよ。解析の力は絶対誰もできないよ。それと、いつの間にか私の後ろの席にいたり、尋夜くんの視線は心の中まで見られていそうな気分になるくらい鋭くて、ちゃんと人の顔色を見て言葉を言ったり、頭の回転が早いから人よりも動くのも早いの」
「そんなにある?」
「まだたくさんあるよ。でも最後にもう一つだけ言うなら、尋夜くんは誰よりも人の気持ちに寄り添って支えてあげることができるとても優しい人だよ」
「俺ってそんなやつだったんだ」
「尋夜くんは自分の解析はできないのね」
「自分は見えないからな」
「それなら私が見てあげる。そして尋夜くんに教えてあげる」
「姫って不思議な人だね」
「それって褒めてるの?」
「褒め言葉」
尋夜くんはそう言って笑った。
初めてみた笑顔は尋夜くんの優しさが溢れていた。
「姫がいた」
いきなり私達の前にダークフォグが現れた。
また成夜くんがいないときに、どうして?
「大丈夫。心配しないで」
「でも、成夜くんいないし」
「今の時代、携帯持ってない人いないだろ?」
「電話?」
「成夜!ダークフォグが図書室に出た。早く来い」
尋夜くんは成夜くんに電話をした。
電話越しに成夜くんの“何で図書室なんかにいるんだよ”と言う声が聞こえていた。
電話を切ると尋夜くんはダークフォグを見る。
目付きが優しい目から鋭くなった。
ダークフォグの拳が尋夜くんの頬へ繰り出されている。
当たる!
私は見れなくて目を閉じた。
でも、尋夜くんが心配で片目だけ開けて見る。
尋夜くんは真上へジャンプをしてダークフォグの頭を蹴り上げた。
ダークフォグは倒れる。
でもすぐに立ち上がってニタニタ笑う。
するとダークフォグは私に向かってきた。
「くそっ、姫が」
尋夜くんの声が聞こえた後、私は怖くて目を閉じる。
フワリと優しい何かに包まれた。
目を開けると尋夜くんの腕の中にいた。
その後、ドンッと言う音に私は驚く。
「くっ」
「尋夜くん?」
「大丈夫。成夜が来たから」
「えっ?」
「成夜、多分あいつは木でいける」
尋夜くんはそう言って力を失くして倒れた。
「尋夜くん」
「大丈夫。後で治療してもらえるから」
尋夜くんはそう言って私の膝の上で眠った。
その後、苳夜くんを呼び、苳夜くんの攻撃でダークフォグは消えた。
苳夜くんの攻撃は凄く綺麗だった。
「木よ俺の声を聞け。散りゆく力」
ダークフォグの胸に一輪の光輝く花が咲く。
その花は綺麗でとても儚く、すぐに枯れて散っていった。
ダークフォグと一緒に。
すぐに尋夜くんの傷も治療され、尋夜くんは元気になった。
「力も使わないでダークフォグの性質を見抜くのはすごいよ」
「成夜くんもそう思う?」
「やっぱり尋夜がいないとダメだな。」
「そうだよね。尋夜くん助けてくれてありがとう」
すると尋夜くんが私の耳元で囁く。
「俺、姫に選ばれたい。俺一人で姫を守りたい」
私は恥ずかしくなって顔を手で覆った。
成夜くんが不思議そうに見て、私にどうした? なんて聞いてきたけど私には言えない。
ただ私は今は顔を隠したいのってだけ言ってその場をしのいだ。
こんな毎日でも、私はまだまだ普通の学校生活を送りたいと思っています。
読んで頂きありがとうございます。