第二・次の出逢い
私はなぜか後ろから視線を感じ、振り向こうか迷っています。
「さゆら。どうしたんだ?」
成夜くんは私の異変に気付いて言った。
「さっきから、視線が私に注がれている感じがするの」
「お前の後ろだろ?」
「うん。さっきは後ろの席には誰もいなかったでしょ?」
「いつの間にか来たんだよ」
「いつの間にかって、音なんて何もしなかったよね?」
「それがこいつの凄いところなんだよ」
「成夜くんは後ろの席の人をよく知ってるのね」
「だってこいつもお前のボディーガードだからな」
「えっ」
私はすぐ、後ろを振り向く。
私が振り向いたことに驚く後ろの席の人。
「尋夜が驚くの久しぶりに見た」
成夜くんは驚きながら言った。
「私は神藤 さゆらです。これからよろしくお願いします」
「あっ、よろしく」
彼はそう言って彼の机の上にある本に目を向けた。
あれ?
何かそっけない?
さっきまで私を見てたよね?
「こいつは海道 尋夜。こいつも俺と同じでボディーガードだ。ただ、少し人見知りが激しいだけで根は優しいやつだから心配する必要はないさ」
成夜くんは彼の代わりに自己紹介をした。
「尋夜くんって呼んでもいいよね?」
「お好きなようにどうぞ」
尋夜くんは本から目を離し少しだけ私を見て、また本に目を向けた。
私の二人目のボディーガードは人見知りでちょっとクールな人で、またもやすごくイケメンです。
「成夜!」
窓の外から声がする。
そして窓の外側から誰かが叩いている。
ここは二階なので、人の手があるはずがない。
すると、成夜くんが窓を開けた。
そして窓から男子生徒が教室へ入って来た。
「えっ!」
驚いているのは私だけ?
クラスのみんなは何もなかったように彼に話しかけている。
「さゆら。こいつはいつも窓から入ってくるんだよ。いつものことだから気にするな。こいつは海道 苳夜。こいつもお前のボディーガードだ。」
成夜くんはもう一人の彼の自己紹介をしてくれた。
「神藤 さゆらです。これからよろしくお願いします」
「あっ、君が俺達のお姫様か。可愛いね」
「えっ!」
「本当だね。やっぱり俺達、王子がお姫様を守らないといけないね」
苳夜くんの言葉に賛成するように言った誰か分からない男子生徒が私の手をとり、手の甲にキスをした。
「累夜。お前はさゆらに手を出すなよ」
成夜くんは累夜くんの手を私から剥がし、私の目の前に立つ。
「何で成夜が姫を守るんだよ。姫は俺達みんなの姫だろ?」
「お前はさゆらに触れるな。さゆらは俺達が守るんだろ? 守るのに触れる必要はないだろ」
「成夜はいっつもそう言ってみんなを守り抜くんだよな。姫、俺は海道 累夜だよ。君の心は俺が守るよ」
「神藤 さゆらです。これからよろしくお願いします」
私は目の前に立っている成夜くんの後ろから顔を出して言った。
みんなキャラの濃い人達ばかりだ。
そしてみんな顔が整っていて、背が高くて顔面偏差値の高いイケメンボディーガードだった。
でも、まだ四人だよね?
もう一人のボディーガードは?
「わ~い。お姫様だぁ」
私は誰かに後ろから抱き締められた。
「次はお前か」
成夜くんは私に抱きついてきた相手を私から剥ぎ取りポイッと投げた。
「何で投げるんだよ。」
「お前は小さいから投げやすいんだよ。」
「僕はお姫様よりは大きいもん」
「どんぐりの背比べだな」
「ねえ、お姫様。僕のほうが大きいよね?」
「えっと、あの」
「琴夜。さゆらが困ってるだろ」
「僕は海道 琴夜だよ。僕もちゃんとお姫様の王子様だからね。」
琴夜くんはそう言って可愛い笑顔を私に向けた。
女の子の私でも負けちゃうくらい可愛い琴夜くん。
「神藤 さゆらです。これからよろしくお願いします」
これで私のボディーガード五人が集まった。
一人、一人が個性豊かな魅力的なボディーガード達。
全員がイケメンで、ボディーガードって顔が整っていないとダメなの? って思うくらい格好いい。
「ところでみなさんはどんな関係なんですか?みなさん苗字が同じですよね?」
「俺達は親戚なんだ。俺達、海道家の一族は代々ボディーガードを受け継いでいるんだ」
成夜くんが教えてくれた。
「みんなボディーガードになってちゃんと受け継いでいるんだね。」
「ボディーガードを受け継げるのは一人だけだ」
「えっ!」
「ボディーガードを受け継ぐ儀式のときに、この五人の中の一人が受け継ぐんだ」
「みんなが受け継げばいいじゃない」
「たった一人が受け継ぐのが昔からの習わしなんだ」
「一人を選ぶなんて、その人は責任重大だね」
「それをさゆらが決めるんだよ」
「私が?」
「海道家の姫。それは神藤家の娘のことなんだ」
「私はお父さんの本当の娘じゃないよ。」
「血の繋りなんて関係ないんだ。
君は神藤家の娘になる運命だったんだよ。
海道家の姫になる運命なんだよ」
私が姫?
私が娘?
訳が分からない。
私はこの五人の中から一人を選び本物のボディーガードにさせるってこと?
私にはそんな大事なこと決められないよ。
今まで普通の高校生だったのに。
私は今日からお姫様として五人の王子様に守られることになりました。
私にはやっぱり普通の高校生活はできないみたいです。
読んで頂きありがとうございます。