【再会】
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ゴシックダークファンタジーを謳うVRMMORPG【ブラッドロアファンタジー】
その中のプレイヤー拠点の一つに、【花歌う村ルエンザ】という拠点があった。
「うほ……めっちゃ美少女」
「ソロっぽいしお前パーティに誘ってみろよ」
「は? お前いけよ」
花が咲き誇る明るい村の中をゆっくりと歩く一人の少女を見て、周りの男性プレイヤーがざわつく。
基本的にアバターの顔に関してはプレイヤーのリアルが反映されるせいで、一部のプレイヤーからクレームが出たこのゲームだが、一応ゲーム内で整形が出来るという事で決着がついた。
そんなゲームで、惜しげも無くその可憐なルックスと、まるで絹のように美しい黒髪をなびかせる少女。
仄かに青い光を放つ鎧に、ファルシオンを腰にぶら下げたその少女は自分に集まる視線やざわつきに気付く事なく村の奥へと歩んでいく。
「君、一人? この次のフィールドめっちゃ怖いところだから、ソロはオススメしないなあ。ってかへえ……整形マークないし、もしかしてそのアバター自前? 凄いね」
その少女の前に男性3人が立ち塞がった。それぞれが、それなりに良い装備をしている。
そのリーダーらしき男がチラチラと腰にぶら下げている剣を見せつけていた。
その男の頭上には【ロジャース】と表示されている。
「……どいてください」
「あーだめだめ。廃城は初見だと強ーい怖ーい敵が出てくるのよ。ソロじゃ絶対倒せないよ。だから俺らと——」
「どいてください」
「っ!! お前!」
少女がその姿から想像もつかないほどの威圧感を放ち、ファルシオンを抜いた。
このゲームでは、PVPが推奨されていた。そして、PVP禁止エリアっでの抜刀は——決闘を意味する。
自動的にロジャースに対戦申し込みが送られた。
「こっちが下手に出りゃあ調子に乗りやがって。いいぜボコボコにしてやるよ」
「お、おいロジャース、ちょっと大人げなくないか? ガキ相手によ」
「うるせえ! 売られた喧嘩は買うのが俺のポリシーだ!」
ロジャースが迷わず対戦申し込みを受けると、少女とロジャースの2人が透明な壁に囲まれた空間に隔離された。
「お、決闘じゃん! めずらし」
「やば、めっちゃ美少女。中学生かな? かわえええ」
「……黒髪ロングヘアーにファルシオン……あいつまさか……」
ギャラリーが増えてきた事に気を良くしたロジャーが下卑た笑みを浮かべながら剣を抜いた。
「あーあこんなに人集まっちまったなあ。謝るなら今のうちだぜ?」
「……こんなところで遊んでる暇はないの」
「あん?」
ロジャースが間抜けな声を出した時には既に、少女は踏み込んでいた。
それを見ていた観客の1人が思わず口を開く。
「速い。やっぱり……あいつ」
その動きを見切れたのは外野を含め、数人だけだった。
「へ?」
目の前に迫るファルシオンにロジャースは反応すら出来ず——その首が飛んだ。
クリティカルヒット扱いで、一撃で死んだロジャースから血が噴き出す。
「邪魔……しないで」
血を浴びて真っ赤に染まったファルシオンを腰の鞘へと収める少女の姿に、全員が圧倒されていた。
「すげえ……すげえ!!」
「可愛い上に強いのかよ!」
「あれ……俺なんか動画で見たことあるような……」
「っ! あの子【竜探し】じゃねえか! あの有名な凄腕美少女ソロプレイヤー!」
「まじかよ! やっべ動画撮っとけばよかった!」
決闘フィールドが解けた瞬間に少女はもう面倒はごめんだとばかり村の外へと駆けだした。
その後ろ姿を見て、観客の1人であり、先ほど独り言を呟いた少女——の格好をした美少年が笑みを浮かべた。
「ははっ、あの子……まだ探してたのか……全く……罪作りな男だなあ……ドラちゃんは」
村を抜けた少女の目の前には大きな城がそびえている。
少女は駆けてきた勢いのままそこへと飛び込む。
「……待っててね」
少女の前を遮る敵は一瞬で斬り伏せられた。彼女の動きに迷いがない。まるで……一度来た事があるかのような足取りだ。
罠の配置も全て把握しており、その疾走を止められる物はなかった。
しかしその少女はとある場所で立ち止まった。その部屋には大きな穴が開いており、そこに細い橋がかかっていた。
「懐かしいなあ……」
しみじみとそう言った少女が再び地面を蹴って、細い橋を渡っていく。
その部屋の先の細い通路を抜けた先には——大きな礼拝堂があった。
「……いた」
少女の視線の先。その礼拝堂の奥に佇む影があった。
それを端的に説明するなら、竜の戦士だろう。
全身が鱗に覆われた筋骨隆々の身体。頭部に逆向きに生えた2本の角に、長い顎に並ぶ牙。
簡素な鎧を身に包み、背後には太く長い尻尾。
その手には赤いファルシオンを携えていた。
頭上には——【ドラちゃんLv120】と表示されていた。
「ドラ!!」
「うん、ごめんね。待たせちゃって。あのね、いっぱい色んなゲームをやってね、探したの。もしかしたらどこかにいるかもしれないって。でも全然見付からなくて。あはは、まさか……あのティアもんのデータを使ったゲームがまた出てるなんて知らなかった。やっぱり——まだここにいたんだね」
「……ドラ……」
少女と竜の戦士が同時にファルシオンを抜いた。
「誰も——ドラちゃんを倒せてないらしいね。初見ででしか出ない上に、このステージ到達時のステータスでは倒せないほど強い。だからここから抜け出せないでいる——本当にバグに愛されているね、ドラちゃん」
「ドラ……」
「大丈夫だよ——私は強くなったし……もう泣かなくなったよ」
そう言う少女の目には既に涙が溜まっていた。
「ドラぁ!」
「うん、楽しもう!」
涙を拭った少女が笑顔を浮かべた。
そして——刃と刃が激突し火花が散った。それと共に甲高い金属音が高らかに鳴る。
それはまるで2人の再会を祝しているかのようだった。
……………………
2人の再会の1週間程前。
某ネット巨大掲示板でこんなスレッドが立ったという。
【またかよ定期】俺氏、致命的バグによって隠しボスにされた上、倒されるまでボスを辞められないんだが【アークソの負の遺産】
というわけで再会編でした!
バグに愛されし男ドラちゃん
バグゲーハンターになってVR全盛期のバグゲーをクリアしまくっていたとかなんとか
ハイファン新作連載開始!
かつては敵同士だった最強の魔術師とエルフの王女がざまあしつつ国を再建する話です! こちらもよろしくお願いします。
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平和になったので用済みだと処刑された最強の軍用魔術師、敗戦国のエルフ姫に英雄召喚されたので国家再建に手を貸すことに。祖国よ邪魔するのは良いがその魔術作ったの俺なので効かないし、こっちの魔力は無限だが?
良ければ読んでみてくださいね!