冬の昼下がり 【月夜譚No.11】
縁側で日向ぼっこをしている猫を見ているだけで、こちらも眠くなってくる。特に今日は北風も穏やかで、心地の良い小春日和だ。
壮年の男は起こしてしまわないように猫の隣に歩み寄ると、そのままゆっくり腰を下ろした。しかし気配を察したのか、猫は目も開けずにゴロゴロと喉を鳴らし始めた。男はくすりと微笑んで、そっとその白い毛並みを指先で撫でる。
縁側から臨む庭は猫の額程しかないささやかなものだが、こうしてのんびりと過ごしていると、不思議と特別なものに思えてくる。
暖かな日差しの中でうとうとと舟をこぐ。猫の身体から伝わってくる振動と音が揺り籠と子守唄代わりになって、夢の方へと誘うようだ。
唐突に首がかくんと折れて、ふっと目が覚める。少し微睡んでいただけだと思っていたが、辺りはもう夜の気配に満ちていた。冷たい風に身を震わせて立ち上がろうとすると、膝の上に猫が丸まって寝ていることに気がついた。
寒かったのなら、中に入っていれば良かったのに。そう思いつつ、男は猫を腕に抱いて家の中へと引っ込んだ。