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魂の行方   作者: 暇若ミライ
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第8章 過去への鍵

「なんで君がここにいるんだ。戦わなくていいって言ったのに。」


悲しそうな声が上から聞こえてきた。そこに居たのは夢の中にでてきたあの少女だった。彼女はふわりと地面に降り立った。


「助けてくれてありがとう。君は一体何者なんだ?」

「君はやっぱり私の事覚えてないんだね。」


意味ありげなことを言ってスタスタと歩いていく。エルの目の前で止まると


「あなたのこの感じ…なるほどねよく似てる。」

「え、え?」


また何か意味ありげなことを言っている。エルも驚いている。そんなことも特には気にせず彼女は自分のペースで話し始めた。


「私が何者か?だったよね。うーんと…今の君達に分かりやすく言うと解放軍のリーダーかな。名前はエレイン。」


解放軍!そのワードを聞いた瞬間に俺たちは身構える。そんな気配を察したのかエレインと名乗る少女は手をヒラヒラさせながら喋った。


「あー、君達に危害を加える気は無いよ。そんなボロボロの相手を痛めつけたって楽しくないし、そもそも君たちを傷つけたくないしね。」

「どうしてだ?ライチは邪魔になるなら殺すと言ってたぞ。」


俺が返すとエレインは、ため息をつきあのバカは…と呟いた。


「あのマヌケは気にしないでくれ、私がクロムウェルと世界を敵に回して闘う理由は君を守るためなんだ。」

「俺を?」

「そう、そして君を守るためにはホルダーが世界の覇権を握って旧人類を滅ぼすのさ。」

「な、なんでそんなことするんだ。」


この人は狂ってる。なんで、敵のはずの俺なんかを守るために世界を敵に回すんだ?

俺が困惑していても彼女は話を続けた。


「なんでってそれはソウルを持たない人類はそれを得ようと私達を実験するからに決まっているだろ。」


急に真顔で話し始めた。しかしここで食い下がる。


「そんな証拠がどこにある?」

「私が証拠だ、あと君もね。私はANIMAの実験でソウルを2つ持たされ

ハイブリッドと呼ばれたんだ。」


俺が?ANIMAの実験に?いやでも、されたなら体に異常があるはず…


「この人の言うことを信じないでください、タイチさん。」


槍を2本担いだマイが前へと進んできた。


「テロリストが言うことなんて嘘に決まっています。」


マイは優しい口調で言ったが、目は確かにエレインを睨んでいた。その敵意を感じたのかエレインはマイを睨み返してこう言った。


「君は…ANIMAの犬だね。なら殺してもいいか。」


ピリッと空気が変わった。お互いジリジリと距離を詰める。エレインが瞬きをした瞬間、マイが飛び出した。槍をエレインの顔めがけて突くがエレインは避け、手にエネルギーを貯めて放つ。だが、それを空中でマイは避け、離れたところに着地した。その直後地中から槍が突き出しエレインの脚を穿つ。エレインはクッ…と表情を歪め槍を無理矢理脚から引き抜いた。


「この私に傷を負わせるなんて、君のソウルはただのソウルじゃないね?」


エレインは汗をかきながら笑顔でマイに問う。マイは表情を一切変えずに答えた。


「ええ、私のソウルはランクEXロンギヌスの槍。あなたを殺すソウルです。」


ランクEX、規格外のソウルがまさかこんな近くに居たなんて。まぁ確かにマイは最初の試験で上位3位にいた。それもあってあまり驚かなかった。


「なるほど、ロンギヌス…神殺しね。」


そう呟いているエレインの脚は既に綺麗に治りきっていた。


「しかし、その怪我で私と殺し合おうなんて、無謀だと思わないか?」


呆れ気味にエレインが呟く。しかしマイは、


「ええ、そう思いますよ。ですが私と貴方の相性なら私の方が有利なので、例えこの怪我でも相討ち程度には持ち込めると思います。」


と自分の事などどうでもいいと言うかのように吐き捨てる。その様を見てすかさずエルがマイをなだめる。


「私たちじゃかないっこない!ここは退散しよ!」

「駄目だね。神殺しと分かった今、成長する前にここで殺す。」


と言い、エレインは雷を槍状にし構えた。まずい!マイは力を使いすぎてもう避ける力も無い。俺は脚から風を吹かせ、マイの元へ飛ぶ。エレインから槍が放たれた。間一髪でマイの目の前に立つ。だが、俺の腕はもうボロボロだった。


「動け!俺の腕!」


その時、腕に不思議な力が湧いてきた。俺のものでも無いような不思議な力が。そして槍の前で振り切ると槍は真っ二つに割れ別の方向へ飛んでいった。


「雷を斬った?いや、斬れたと言うより2つに自ら割れたように見えた。タイチ…君にはどんな力が…。」


エレインが驚き、ブツブツ呟き始めた。何かポタポタと落ちている音が聞こえる。自分の口を擦ると血が出ている。吐血していた。そしてフラっと倒れかけた。だがマイが支えてくれた。


「タイチさん?大丈夫ですか?」

「あぁ、なんとかな。だけどもう動けそうにない…すまない。」

「そんなことないです。こんな私のために命をかけて守ってくれてありがとうございました。」


そんな死にに行くようなことを言うな…。もう声すらも出ない。そんな俺の心配をよそにマイはエレインに向かっていく。


「さぁ、もう終わりにしましょう。」

「あぁ、君が死ぬことによってね!」


エレインが雷を手に纏いマイに飛びかかる。


「んな事させるかよ!」


聞き覚えのある声が響いた。あぁ…このバカみたいな声は一人しかいない。


「ロウ!」


ロウが狼のようなオーラを手に纏わせエレインの手を横から掴んで止めていた。


「喰ったぜ、お前の力。」

「なっ!?」


エレインは即座に後ろに下がった、手をさすり気にしているようだ。


「いきなり来て、君は一体誰なんだ?そして私に何をした?」

「あ?俺か?俺はなロウだ。お前の力を喰った。」

「喰うだと?なるほど、君は神喰らいか。」


ロウは首を傾げ、何のことだか分からないみたいだ。あいつのソウルはオオカミのはずだから神喰らいなんてあるはずがない。


「まぁいい、手負いの神殺しと全快の真打ちの神喰らい…”今”の私だと厳しいな…。」


と言ってエレインは空へ浮き逃げようとしている。


「逃がしません!」


そういいマイが槍を投げる。だがエレインの雷に阻まれて届くことなく落ちていった。


「今は退くけど、今度敵対した時は容赦はしない。例えタイチ君が相手でもね。置き土産として教えてあげるけど、私が実験で持たされたソウルはランクSのゼウス。もし本当に戦うと言うなら、対策を考えておいてね。」


そう言うとエレインは雷となって空の彼方へ消えていった。


「くそっ逃げられた。」

「いや、これで良かったよ。」


悔しがるロウに対しエルがほっと胸を撫で下ろす。


「というかなんでロウはこっちに来たんだ?」

「あ、そうだ。いや実はピークの野郎がレイを実験しようとして、お前らが怪物になってるって言うもんだから慌ててこっちに来たんだよ。」

「ピーク所長が…あぁなるほどそういう事か。」


ロウが顔をしかめて聞いてきた。


「どういう事だ?」

「ピークは元々レイが狙いでお前ら低ランクだけ残して、俺ら高ランクのホルダーをこんな怪物の島に追いやったって訳だ。」

「…なるほどな。」


多分わかってない。多分だけどピークは解放軍の方とも繋がっていたはず。そうでないとエレインがここにいた意味もわからない。


「みんな死ぬこともなかったし、早く帰って私たちの怪我も治そう。」

「なら俺が乗ってきた船があるからそれで行こう。」

「え、よく事故らなかったな…。」

「自動運転あったからな。」


そこにいたみんながなるほどと頷く。そして、船に乗りレイとミアの元へと戻る途中とある質問をロウから投げかけられた。


「そういやなんでタイチはこんな歳になってようやくソウルが使えるようになったのか、分かったのか?」

「いや、全然。」


そういえばそうだった。俺はなんで15歳でこの力に目覚めたのかも分からないんだった。


「6歳の頃とかの記憶とかってないの?」


エルが質問を続ける。


「原因に繋がるかわかんないけど一つだけなら。でかい雷雲が俺の住んでた街を襲って何もかも壊していったってことなら。」

「あぁ、”大災害”ね。それより前になんか無かったの?」

「大災害より前…あれ?」


おかしい、思い出せない。すっぽり抜けているわけでもない、ノイズが掛かってよく思い出せない。


「どうしたの?」

「思い出せないんだ、幼少期のことを…」

「事故のショックとか何かかもしれないわね、ANIMAに戻って電話で両親に聞いてみたら?」

「あぁそうする。大災害の時のこととかな。」


と話をしているうちに北欧支部に戻ってきた。ロビーにはレイとミアがピークを縄で縛っていた。そして、ミアがこちらに気づき目を丸くした。


「どうしたニャ!?そのタイチの腕とマイの怪我は!?」

「ジエンドと解放軍のリーダーと交戦した。」

「よくそれで生きて帰ってこられたニャ…。」


まぁなと少し余裕を見せたが意識がもう飛びそうだった。するとそこへレイが駆けつけ治癒の光で俺とレイの傷を癒してくれた。


「タイチ…前よりも生命力が弱まってる…何した…?」


とレイが不思議そうにこっちを向いた。確かにいつもよりなんだか力が入らないし、胸のざわめきが強くなっている。心当たりと言えばエレインの雷を斬ったあの力ぐらいだが…


「いや、何でもないよ。少し疲れてるだけだ。」

「そう…それなら良い…。でも…他人の治癒じゃ生命力までは回復できない…無理は禁物

。」

「あぁ分かった。」


まだ自分の力が分かってないし、あんまり詮索されたくなかったので適当に言い訳をここでは付けた。


「そういえばANIMAに連絡したんだけど…。」


ミアが話を始める。


「『そっちにはガーディアン派遣しとくから、残りの日数は旅行でも楽しんで~』って所長から言われたんだけど、どうするニャ??」


適当な口調がまた彼女らしい。だけど研修は後1日しかない、楽しむって言ったってどこに行けばいいのやら。


「それなら、温泉とかどう?」


エルがノリノリで提案する。


「温泉?」

「そうそう!アイスランドって温泉が有名みたいなんだよね~だから1回入ってみたくて、反対の人いる?」


まぁ確かに最近ずっと戦い続きだったから、たまにはいいと思ったので手をあげるのはやめた。


「よしっ!みんな賛成ね、じゃあさっさと支度していきましょう!」

「待ってください。まだガーディアンが到着してませんよ!」


あっそうかと可愛くエルが頭を小突く。俺達は取り敢えずガーディアンの到着を待つついでに支度をすることにした。


ガーディアンが到着したのでピークを引渡し、俺達はタクシーでアイスランド最大のスパ施設、ブルーラグーンに向かった。もちろん請求先はANIMA。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ANIMAの北欧支部…。ここも実験所のひとつか。」


ボロボロのコートを纏った少年が一人、誰もいなくなった北欧支部を見ている。


「こんなとこがあるから争いが無くならないんだ。」


少年が手を出し、エネルギーを溜め込む。


『回帰』


すると目の前にあった支部が消えていた。


「今の俺の力じゃあこれが限界か。まぁ何だ俺も”あの樹”と同化すればいずれ世界も…。」


少年は不敵な笑みを浮かべる。


「全ては争いのない世界のため…。」


そんなことを口にすると、吹雪く雪の中を歩いていった。


あけましておめでとうございます。

今年の抱負は"彼女作る"でいきたいと思います。抱負かどうか知らないけど。

小説の方は投稿ペースあげたいんですけどなかなか忙しくてあげられなくてごめんなさい。

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