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魂の行方   作者: 暇若ミライ
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第6章 共鳴する思い

俺は10年前のあの悪夢にまた飲み込まれていた。辺り一面に燃え盛る炎、広がる瓦礫の山、ただ少し今までの夢と違う点がある。俺が三人称視点だった。現に目の前に子供の頃の俺がいて、夢の最後に出てくる薄紅の髪の少女と話している。しかも夢と言うには生々しく、現実と呼ぶには些か朧げだった。するとこんな会話が聞こえてきた。


「おねぇちゃんはだれ?なんでこんなところにいるの?」

「君を救うためだよ、タイチ。」


謎の少女が優しく小さい俺に話した。なぜ俺の名前を知っているのかと問いかけてみるが返事はなくその両目は小さい俺にずっと向けられていた。俺のことが見えないのだろう。話は続く。


「ぼくを?なにから?」

「君は何も考えなくていいんだ、戦わなくていいんだ。私がこの世界を変えるから、私達みたいな子を出さないために。」


と言って少女は小さい俺を抱きしめた。安心したのか小さな俺はゆっくりと目を閉じた。すると同時に俺も意識が遠のき始めた。薄れゆく視界の中で少女がこっちを向き微笑んだ気がした。




目を覚ますと見慣れない天井が目に入った。体を起こすとあちこち痛い、昨日あんなことがあったから無理もないか。よっとベッドから降りて着替えをし、ブリーフィングをするため第1会議室へと向かった。

部屋へ着くとロウ以外は全員来ていた。取り敢えずみんなに挨拶をしておく。


「おはよう。」

「おはようです、ロウさんは?」

「あっやべ」


マイに聞かれるまですっかり忘れていた。


「すぐ起こしてくるから少し待っててくれ。」


と方向転換をし部屋のドアを開けようとしたら、勝手に開きロウが中に入ってきた。何食わぬ顔で入ってきて呆然としてる俺たちに向かって聞いた。


「なんでお前らそんな鳩が豆鉄砲喰らったような顔してんだ?」

「お前が1人で起きられるとは思わなかったから…。」

「酷いなぁ、俺をなんだと思ってるんだよ。」


ロウはふぅ…と言いながら椅子に座った。俺たちも続々と席に着いた。そして時間となり金髪の女が中に入ってきた。


「はい、それじゃあブリーフィングを始めましょうか!私は研究員のウィップと言います。どうぞよろしく。」


と笑顔で自己紹介をした。イメージ的には研究員と言うより敏腕秘書か愛人の方がしょうに合ってると思った。そして彼女の話は続く。


「まずはやることの説明でもしましょうかね。Aチームはヴェストマン諸島に行って地質を調べて。地質を調べるのはヴェストマン諸島とソウルの関係を調べるためよ。Bチームは支部で事務とか管理関係の仕事をしてちょうだい。」


パッパッパッと話を進めるあたり、ますます敏腕秘書に見えてきた。まだまだ話は続く。


「そして次はチーム分けだけど。Aチームはタイチくん、エルちゃん、マイちゃん。Bチームはロウくん、ミアちゃん、レイちゃん。このチームで行きたいと思うだけど大丈夫?」


俺たちは無言で頷いた。


「それじゃあ準備してAチームは出発してね、Bチームには今から業務の説明をするよ。」


と言われ地図だけを渡された。俺たち3人は会議室から出てそれぞれ準備するために戻った。俺は少しの食料とお金、防寒着を持って行った。ロビーに行くとマイとエルがいた。


「よしそれじゃあ行きましょうか。」


エルを先頭に俺たちはロビーを出た。ヴェストマン諸島へ行くため船に乗り、前々から気になっていたことを2人に聞いた。


「なぁ、将来お前らはソウルを使って何をしたい?」


急に聞かれた質問にエルとマイはキョトンとしたがマイはすぐに答えた。


「私はとりあえず将来人の役に立つ仕事がしたいですね。まぁ下界で仕事するのが許されればですけど。」


一方エルは少し悲しそうな顔をして


「私は周りの人を守れたらいいかなって。」


と言いぎゅっと拳を握った。


「なんでそう思ったんだ?」


疑問に思ったことを口にするとマイが眉をひそめた。だがエルは話を続ける。


「私ね、1つ下の妹がいたの。でも私が5歳の時庭で遊んでた時、私が目を離した隙にいなくなってたの。」


握る拳が強くなる。


「誘拐だった。警察も探してくれたけど見つからなかったみたい。」


肩が震えている。


「私があの時妹を守れたら、って思うと今でも…。」

「大丈夫だよ。エルは悪くない。」


マイが震えるエルの肩をなだめながら言う。落ち着いたのかエルはふぅ…と深呼吸をして目をゴシゴシ擦った。


「だから私は学園でソウルを鍛えて、周りの人を守りたいと思ったの。」

「すまない、辛い過去を思い出させてしまって。」

「いいのよ別に、それよりあんたはどうなの?ソウルをどう使いたいの?」

「あぁ俺は」


と言いかけたら船がどうやら到着したようで横に揺れた。


「続きはまた後だな。」


俺たちは島に上陸すると辺りを見回した。俺達が上陸すると伝えられていたのはヴェストマン諸島の中でも唯一の有人島ヘイマエイ島だった。だが周りには廃墟しかなく人が住んでる気配は一切なかった。振り返ると船はもうすでに去っていた。


「どういうことだよ、俺たちなんでこんな所に。」

「うん、明らかにおかしいわ。ここが有人島とも思えないし。何よりスマホの電波が使えない。」


エルが携帯を許可されたスマホの画面を確認する。電波が一つも立ってなかった。マイが歩きだし、


「とりあえずこの島を探索しましょう。ここが有人島だったならきっと船や使える通信機があるはずです。」


としっかりとした口調で提案をしてくれた。俺とエルも賛同した。散策を開始すると目立ったのは巨大な何かに壊されたような家屋だった。瓦礫の中にキラリと光るものを見つけ手に取る。


「なんだこれ…。」

「鱗じゃないですか?でもこんなに大きいものって、なんの動物のでしょう。」


マイがうーんと考える。だけど答えは出なかったようで、別の場所の探索に行ってしまった。俺が引き続き瓦礫の中を探索してると激しい痛みが身体に走り、気づいたら部屋の壁に叩きつけられていた。俺がいた方を見ると人…?いや、龍…?とにかく鱗に覆われた異形なモノが立っていた。直ぐに臨戦態勢に入ったが、気づけば目の前にヤツが立っていた。俺は距離を取ろうとしたが、ヤツに吹き飛ばされ壁を突き抜け海岸にまで飛ばされた。音を聞き付けたのかエルとマイが駆け寄ってくる。


「お前らこっちに来るな!」

「一体何があったんですか?」


俺の声を無視してマイが近くまで来て尋ねる。


「アレだよ。」


指を指す。マイがアレを見ると


「やはり私にもそれを望みますか…。」


と呟いた。どういうことだと聞こうとしたが今はそんな暇はない。俺は後から来たエルに肩を貸してもらいなんとか逃げようとしたが、ヤツはそれを許してくれるはずもなく後ろから殴りかかってきた。


キィィィィィィィィィィン


と金属音がして振り向くと。マイが槍を両手に持ちヤツの拳を受け止めていた。


「仕方ないですね。私が時間を稼ぎますから、2人は遠くへ逃げてください。」

「でもマイあなたは?」

「安心してエル、私は負けないから。」

「絶対だからね。」


念を押すようにエルがマイに言い、俺たちはその場を離れた。


「なぁ、あれは何なんだ?」

「多分ジエンド。」

「ジエンド?何だそれ。」

「ホルダーの成れの果てよ。私たちホルダーは力を使いすぎるとソウルそのものになる。ただそこに自我は無くなって、死んだも同然になる。」

「じゃああれは元は龍のホルダーってことか。」

「そうよ、恐らくランクはA+以上、だからマイだと負ける可能性がある。あなたを遠くに置いて私は助けに行く。」


唇を噛みエルは言った。確かにエルがこう思うのは当然だ。でもそれなら


「俺も行く。」

「あなたボロボロじゃない!ダメよ、ここで休んでて!」

「大丈夫、こんなのただの軽い打撲だ。それに周りの人を守りたいってのは俺も同じだ。」


エルは一瞬驚いたような顔をしたが、背を向け言った。


「来るなら勝手に来ればいいわ。ただ、死なないでよ。」

「任せろ。」


俺は笑顔で答えて見せた。そうと決まれば話は早い。俺たちは海岸に向かい走っていった。


海岸に着くとマイが壁際に追い詰められていた。ジエンドが拳を振り上げ、殴ろうとしたが俺は風に乗り間一髪のところでエルを助けた。


「なんで戻ってきたんですか!?」


エルが驚いた顔で言う。


「それはな、俺らがお前を守りたいと思ったからだよ。」

「でもそんなの…」

「でもじゃない。それ以外に理由がいる?だって私たち仲間じゃない。」


俺がマイを下ろして、エルが駆け寄り俺たちはマイを守るように立ち、構える。


『鎌以太刀!』

『ホーリー・マグナム!』


同時に遠距離攻撃を放つがジエンドの鱗には効果はない様で怯むことなくすごいスピードで迫ってきた。すぐに俺の目の前に来たがハクとの戦いの時のように体が勝手に動き、ジエンドの腹に拳を食らわせた。ジエンドはものすごい勢いで後ろに吹き飛んだ。


「あなた、今のって…。」


エルが驚いた顔で言う。


「俺にもよくわからん。体が勝手に…。」


大体は分かってきた。多分拳をぶつける瞬間に自分のソウルを放出してるんだろう。だが、こんな技術をどこで覚えたのか全く身に覚えがない。

またジエンドが起き上がってきた。また向かって来たが俺は右手で手刀を作り風を纏わせる。

ジエンドが俺のギリギリまで来たところで手刀で突き、さっきの技を使った。


『鎌以太刀 突の型』


手刀はジエンドの体を突き抜け、ジエンドは砕け散った。


「勝ったぞ…、守った…ぞ…。」


ホッとした瞬間右手に激痛が走った。体が恐らく追いついていない。それでも2人を安心させようと振り向くと、2人は俺の方を向いておらずそれぞれ別方向を向きながら固まっていた。


「おい、どうしたんだ。」


エルの視線の先を見ると、絶望した。周りには、猿、虎、天狗のような男、鳥女などが周りを囲んでいた。


「これ、全部ジエンドか…。」

「もう無理です。戦えません…。」


満身創痍、戦う気力も在らずただ絶望するしかなかった。しかし次の瞬間稲光が走り、周りのジエンドたちを全て雷で燃やし尽くしてしまった。


「なんで君がここにいるんだ。戦わなくていいって言ったのに。」


上から悲しそうな声がする。上をむくとそこには夢に出てきたあの少女が、悲しいような妬ましいような顔をしてこちらを向き、宙に浮かんでいた。


またまた日が空いてしまった。このところ大会だの学園祭だの忙しかったです。因みにこのあとテストが控えてるのでお察し。

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