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魂の行方   作者: 暇若ミライ
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第5章 新たな試練

「正義のヒーローは遅れてやってくるものさ!少年少女達!」


クロムはドヤ顔で決めポーズをしながらそう言い放った。みんな呆然としてる中、ライチ1人は汗を額に垂らし


「どういうことや!俺らはバレへんようにテレポーターのプログラムをハッキングしたはずや!」


と言った。クロムはウンウンと頷き


「確かに痕跡も何も見られなかったからね、5人を探すのは大変だったよ。でもね、ミアがたまたま持ってた発信機のおかげで位置が分かったんだよ。」


と、ミアの方を向き答えた。ミアは笑顔でクロムに向かって親指を立てている。一方のライチはギリギリと歯ぎしりをしながら


「クソが!ラスボスが出てきちまったなら仕方ない、ワイは退散させてもらうで。」


と吐き捨て空中に浮かんでいる自分の刀に捕まり逃げようと背を向け逃げようとしたが、鎖が地中から出てきてロウを捕まえた。するとクロムの隣にいた眼鏡の女性が口を開き


「ごめんなさ〜い。所長の命令で〜、捕まえるように〜、言われてるんです〜。」

「こんな鎖ワイの刀で斬り裂いてやらぁ!」


ライチは大見得を切ったが、斬るどころか傷一つすらついていないようだった。眼鏡の女性は


「私のソウルは〜、グレイプニルって言って〜、ちょっとやそっとじゃ切れないですよ〜。」


と変な口調で煽るように言った。ライチはブチギレるのかと思いきやクククと笑い始めた。


「この荒野の乾いた空気や俺にかけた純水も、もう蒸発しとるで。まだ打開策もある。」


するとライチの体が光り始め、バチバチと周りに電気を放ち始めた。


『ライトニング!』


ライチ自身が雷となり鎖から抜け出し、宙に浮かんだ。


「アカン、これもうワイの手に負えん。今度こそ逃げさせてもらうで。」


ライチはそう言うと背を向け目にも留まらぬ速さで逃げようとしたが、見えない壁のようなものに阻まれたようで急に止まった。


『金剛結界』


と言いながら長身長髪の男が出てきた。


「ここはもう既に私のソウル、結晶で包囲済みだ。貴様の落雷如きじゃ壊れんよ。」


メガネをクイッと上げながら真顔で言った。ライチは悔しそうに顔を歪めている。だがスッと真顔に戻り、肩の力を抜き呟き始めた。


「もう逃げられへんってことか…。なら1人くらい道連れにしてやらぁ!」


再び周りに放電し俺達5人の元に飛んできた。俺達は先の戦いでみな疲弊して動けなかった。しかし、目の前にミカゲが飛び込んできてライチを、いや雷を斬った。ライチは寸前のところで避けていたが、片腕を斬られていた。ライチは絶叫し、ミカゲを睨む。


「どういうことや!ワイは雷になってるから物理攻撃は効かんはずなのに。」

「お前のその雷はソウルによって作られている。ならソウルの流れを感じ、力が集中してるところを斬れば雷だろうが炎だろうが切れるわけだ。」


刀を見せびらかしながら淡々とミカゲが説明する。だが雷であるライチは斬られた腕を徐々に回収し修復していき、また剣を構える。


「ほぅ、まだ戦う意思があるか。」

「バカ言っちゃアカンでオッサン、これはただの時間稼ぎや。」


息切れを起こしながらライチは真上を指差す。上空には人のようなものが羽根を羽ばたかせ飛んでいた。パキッと音が鳴り響いた直後目の前に人が落ちてきた。


「遅いで、ゼノ爺。」

「まったく、何故ワシがこんな奴の子守りなどせねばいけぬのだ。」


ゼノ爺、そう呼ばれた高齢の髭を生やした大男は、肩をゴキゴキと鳴らした。


「私の結晶の硬度はダイヤモンドとほぼ同等!どうやって壊した!?」

「あぁ?そんなモン力に決まっておろう。」


長髪の男の問いにゼノはそう答えるとライチを担ぎ


「うちのわけぇのがお世話になったな。ワシらは帰らさせてもらう。」

「それを許すと思うかい?」


ゼノに対しクロムが言い返す。だがゼノはハァ…とため息をつくと


「ワシならお前さんの守りをくぐりぬけこの中で2人、いや3人は殺せる。そこまでして捕らえる価値はないと思うがね?」

「取り引きという訳か、いいだろう。今回は見逃してやる。だが、次に私の目の前に顔を出した時は命はないと思え。」


クロムの今までに見た事のない顔だった。いつもはふざけているクロムだがこの時ばかりは大切なものを守らんとする意思が感じられた。


「大丈夫だ、ワシらが次に顔を出す時は決戦の日だ。それまで首を洗っておくとするさ。」


そう言ってゼノは空へ向かって飛びたった。姿が見えなくなった頃にクロムはヘナヘナ〜と座り込んだ。


「見得を切るもんじゃないね、疲れちゃった。みんなもご苦労さん。」


どうやら相当無理をしていたらしい。いつ不意打ちされるか分からない状況で注意を払っていたのだろう。緊張が解けて皆が安堵してきた時、長髪の男が疑問を口にした。


「ゼノと呼ばれる輩、私のダイヤの結晶を打ち破るあたり只者ではありませんね。」

「あぁ。恐らくはランクA、下手すればそれ以上だろう。しかもソウル・バース時点でもう既にホルダーになっていただろう。」


クロムが口にしたソウル・バース。20年前に飛来してきた隕石が南極に着弾したことである。その日からホルダーが確認されるようになったと教科書に書いてあった。今は南極に地下数キロの穴だけが空いているらしい。


「まぁ、そんなこと気にしてたって仕方ないし、みんな帰ろう。」


クロムが空気を変えるように明るい口調で言った。


「あぁ、帰ろう。俺たちの居場所へ」


俺も口に出して賛同した。




急遽作られたゲートを通じて俺達5人はANIMAに帰ると、目の前に藍髪の眼鏡の青年が座っていた。隣には鎧兜を着た人が立っている。


「どうも、私は生徒会長の武部ナオトだ。疲れているとこすまない。だが君たちに伝えなくてはいけないことがあってね。」

「生徒会長直々に何の話でしょうか。」


生徒会長から直接話されるなんてただ事では無い。俺が言葉を返すと会長はニッコリ微笑んでこう答えた。


「いや、大した話じゃないんだけど先生方は忙しいし、君たちのクラスメイトはほとんど出発してしまってるし代わりに僕がね。」

「出発?どこへですか?」

「下界さ、君たちには昇格試験までに力を付けて貰いたいからね。それで君たちには北欧、アイスランドへ研修に行ってもらおうと思う。」


昇格試験。そうこの学園では最短で1年で教育を完了する。そのために年3回ある昇格試験を勝ち残らなくてはならない。ここでは力が全て、倫理が有るならばガーディアンに即採用となる。会長が話を続ける。


「チームは6人、クラスの半分で行ってもらう。あと一人はあっちに着いたらわかるから。君たちはもう行った方が良さそう。」

「なぜ急に研修を始めたんですか?」


疑問を口に出す。会長はふぅ…とため息をつき答えた。


「多分、解放軍が動き出したからじゃないかな、1つに集まってるより分散した方が安全だし。あっ、そろそろ君たちも準備した方がいいと思うよ。」

「分かりました。」


返事をし、俺達はそれぞれ準備をしに寮へ戻ることにした。

俺とロウは同じ部屋なので一緒に戻った。


「アイスランドか…。」


ロウがボソッと呟く。いつもは活発なのにこの時は何だか湿っぽくなっていたので疑問を口にする。


「アイスランドがどうかしたのか?」

「あぁ、俺の故郷なんだよ。ANIMAに拾われる6歳までの間俺は孤児だったんだよ。」

「そういえば、そんなこと言ってたな。」

「近所じゃオオカミ少年だなんて言われて、軽蔑の目で見られてた。寂しかったし辛かった。でもな今じゃお前らみたいなやつに囲まれてすげー嬉しいよ。」


しんみりとした表情でロウが笑った。しかし顔を自分でひっぱたき無理に笑顔を作る


「っていうかこんな湿っぽい話、俺に合わねーよな!ほら、さっさと行こうぜ相棒。」


ロウが俺の手を引く。あの時ロウがキレたのは当然なんだなと納得した。俺達はゲート広場にやってきた。ほか3人は既にもう着いていた。


「みんな来るのが早いな。」

「あんた達が来るのが遅いだけよ。ほら、行くわよ。」


エルとそんな会話をし、ゲートを潜った。その先にあったのは、以前俺がエルに運ばれたソウル研究所のような真っ白い空間だった。そこにポツンと1人、小学校高学年くらいのゴスロリ風の子がいた。その子はこちらに気づき


「おっそーい!私だけ置いてどこ行ってたのよ!」

「いや、置いてった訳じゃなくて…。」


弁明しているエルとロウに文句を言い始めた。この服装とこの口調、間違いない彼女が槍ヶ岳マイだ。マイは一通り文句を言い終えると俺たちの方を向き急に冷静な口調になった。


「アイスランドの支部長に挨拶しに行くわよ。」

「お、おう…」


タジタジになってる俺たちを置いてマイは1人でズカズカ行ってしまう、俺達も急いでついて行く。


「なぁ、マイってあんな情緒不安定だったか?」


ふと疑問に思いロウに聞く、


「うーん、多分あいつの姉貴分だったエルが俺達と一緒にどっかいってたからじゃないか?それでホッとした気持ちと寂しかった気持ちが爆発したんだろ。」

「なるほどな。」

「はいそこ!無駄口叩かないで!もう支部長室の前よ!」


マイが俺たち2人のことを指さして怒鳴った。彼女は口の前に人差し指を立てて


「ここからは失礼のないようにね。私達の将来がかかってるんだから。」


と言ってドアをノックした。


「失礼します。学園の研修生です。」


マイが礼儀正しく言うと中からどうぞと聞こえてきた。中に入るとキノコみたいなヘアースタイルの男が机に腰かけていた。


「君たちが研修生?、ボクはアイスランド支部長のピーク。よろしくネ。それよりもサ、ここに来る前に解放軍と戦ったんだってネ?」

「はい、マイ以外の5人で対峙しました。」


俺が答える。それを聞いて支部長はウンウンと頷いた。


「うーんそれは災難だったネェ、でも研修は予定通りやるからヨロシク。」

「それで研修内容は何ですか?」


すかさずエルが疑問を口にする。


「ソウネ、取り敢えず2組に別れてもらって1組は自然環境で訓練、もう1組が支部内で職務訓練カナ。」

「分かりました。ありがとうございます。」

「それじゃ説明終わったから、皆は案内に従って自分の部屋へ行って今日はゆっくり休んでネ。」


支部長にそう促され俺たちは外に出た。部屋割等はマイから教えて貰った。。どうやら部屋は一人部屋らしい。この施設の説明が終わると俺たちは解散し、俺は自分の部屋に着きベッドに横たわると今日起こったことが頭の中を駆け巡った。解放軍の存在とそのボスが引き起こした10年前の大災害…あの災害から全てが変わった。俺もあの災害に巻き込まれていたが、その時の記憶が思い出せない。目を瞑り昔の事を考えているうちに、俺は深い眠りへと落ちた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ソウル研究所のとある一室でミカゲとクロムが話していた。


「タイチをアイスランドへ送っても良かったのでしょうか?あそこはどの支部よりも過酷だ。帰らない生徒だっている。」

「あの力が目覚めれば、あそこの研修でも生き延びられるだろう。」


そう言うとクロムはコーヒーを飲んだ。するとニヤリと笑い独り言のようにボソッ言った。


「君は今度こそ力に目覚めてくれるかな?期待してるよタイチ君。」


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