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魂の行方   作者: 暇若ミライ
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第2章 自分の居場所

そこはただ暗いだけの世界だった。上も下も右も左も分からない、広いのか狭いのか、暑いのか寒いのかも分からなかった。ただここに自分が存在している。それだけが確かだった。しばらくすると白い光の玉が現れ、自分の周りをくるくる回り始めた。次第にそれは形を持ち1匹のイヌ?イタチ?のようなものになった。前足は鎌のようになっている。しばらくその状態で回っていたが、俺の目の前で止まり俺の胸の中に入っていった。すると急に胸が燃えるように熱くなりあまりの熱さに気を失った。


目を覚ますと目の前には無機質な天井に大きな照明が一つあるだけだった。体を起こし、周りを見渡した。白い壁で囲まれていて壁と同じ色の近未来的なドアがあり、自分が寝ているベッド以外には何も無かった。自分の服はいつの間に病衣に着替えさせられ裸足だった。


(どこだここは?誘拐された?)


と内心戸惑いつつも手がかりが欲しいため部屋を出て行こうとしたら、ドアが触れる前に開き、目の前には紅い髪を後ろで束ねた20代後半ぐらいの白衣の女の人が立っていた。そしてその女の人は俺の顔をジーッと見てから笑顔で言った。


「おはよう!調子はどうだい?」

「え、あぁまぁ…。」


急に聞かれたから、しどろもどろになってしまった。


「まぁ、急にこんな所に連れてこられても困るだけか。とりあえず立ち話もなんだから、私の部屋に来なよ。そこで色々と説明するからさ。」


と体の向きをくるりと変え、さっさと歩いていく。ここでボーッと突っ立っていてもしょうがない、彼女について行こう。


足音が響く長い廊下を無言のまま歩いていく。緊張している俺の、そんな空気を壊すように彼女が前を向きながら話し始めた。


「いやー、災難だったねぇ。新学期早々ソウル犯罪者に襲われるなんて。」

「あぁ、あの時ソウルが発現してなかったら今頃どうなってたか…。」


と彼女の後ろ姿を見ながら返す。


「うんうん、確かにソウルが無かったら君は今生きていないだろう。君のソウルはカラスの奴より強力だから倒すことが出来たんだろう。だけどね、君はまだそのソウルの10分の1の力も使ってないんだよ。」


彼女の口からとんでもないワードが飛び出してきた。

「え?風を操ることが10分の1?」


すかさず聞き返す。彼女は笑って


「まぁまぁ落ち着きなよ、ほら着いたよ。」


と言って止まった。目の前にはさっき自分がいた部屋と似たようなドアがあった。


「ここが私の研究室だよ。詳しい話は中でしようか。お互いの自己紹介も含めてね。」


振り返り彼女はそう言った。そういえばここまで自己紹介していなかったことに気づく。


彼女はロックを解除し中に入っていった。中に入ると白く広い部屋で床には実験器具や資料のようなものが散らばっていた。顔を上げるとそこには一面ガラス張りで西洋庭園のような景色が広がっていた。唖然としていると奥の方から


「博士帰ってきたのー?あの子の様子はどうだったー?」


と聞き覚えのある声が聞こえてきた。声のする方に目をやると蒼い髪蒼い瞳のあの少女がいた。彼女もこちらに気づくと目を丸くしていた。


「な、なんでもう目覚めてるの…?あの睡眠効果はあと1日ぐらいあるはずなのに…」


とめちゃくちゃ驚いていた。博士と呼ばれた女性は笑いながら話し始めた。


「それだけ彼の回復力が優れていたって話しさ、そんなことより自己紹介をしなくちゃね。ようこそソウルラボに!私はここの所長クロムウェルだ、クロム博士とでも呼んでくれ。それとそこにいる彼女はエル・ライト、わかってると思うけど君を撃った子だよ。」

「ちょっと博士!私だって悪意があってやったわけじゃないわ!」


エルが反抗する。


「あの時現場に駆けつけたら、その子がソウルの力使って人を潰してるように見えたからてっきりその子の方が犯罪者かと思っちゃって……とにかく悪気があったわけじゃないの!」


ハイハイと博士は軽く受け流してからこちらに促してきた。


「君も一応エルに自己紹介したらどうかな。あくまでこれから一緒に学園生活を共にしていくわけだし。」

「刃野タイチです。よろしく。」


とお辞儀をした。


「というか学園生活ってなんだ。俺は、どうなるんた?」


と顔を上げ博士に尋ねる。


「これもまだ言ってなかったね。ソウルホルダーは国際連合によるソウルの正しい教育を受けることが義務になってる。そしてここはANIMA、ソウルに関することを全て扱う機関。教育もここの管轄だ。」


博士はANIMAという機関の説明をする。


「君の治療をした時、ついでにソウルも解析させてもらったよ。君はBランクのソウル。カマイタチのホルダーだ。」

「俺がカマイタチのホルダー…。」


カマイタチ…風を纏い人々を切りつける獣…なるほどあの暗闇にいたやつか。それに風を操れたのも納得がいく。


「そうだ、そして明後日から君は学園に行って、ソウルについて正しく学んでもらおうと思う。そしてエルも明日から君と同じ学校で同じクラスだ。仲良くやれよ。」


と博士が俺の背中をポンと押す。するとエルが手を差し出して来た。自分も手を差し出す。仲良くやって行けそうかなと内心苦笑いしていた。握手を終えるとあることに気づく。


「博士、そう言えば俺の両親はどうしてるんだ。俺がソウルホルダーだってこと言ってあるのか?」

「あぁ、もちろんだとも君がホルダーだということも学園に入学して寮に入ることも連絡済みだよ。それにご両親は快諾してくれたよ。」


と笑顔で答えた。 だが次の瞬間には真顔になり、質問してきた。


「君は学園で何を学ぶ?その力をどう使うんだ?まさか何も決まってないという訳では無いよね。」


確かにこの力をどう使うかは重要だ。あのカラスのようにはなりたくないしあの時のように傲慢で意識を失うほど力に振り回されたくない。答えは出た。


「俺は、この力を正しく使えるようになって犯罪者の魔の手から守りたい。だからこの学園で力の使い方を学ぶ。」


博士は満足そうに頷いた。するといつものような笑顔に戻り、


「これで自己紹介と今後の話は終わったから。エル、タイチを学園の寮まで案内してあげて。」


と博士はエルの肩を叩いてそう言った。分かったわと言ってガラス張りの窓にあるドアから出て行った。俺も後を追う。


暖かな日差しが庭園の花を照らしている。風が吹くとフワッと花のいい香りがする。ついあくびが出てしまいそうだ。


「あの時はごめんなさいね。」


エルが急に話しかける。


「あの時下界に降りる許可が学園から下って、下界を楽しもうとしたらいきなりソウル使って人を叩きつけてる人がいたんですもの。てっきりソウル犯罪者だと思って護身用の麻酔銃を使って止めようと思ったのよ。」


と笑いながら訳を話してきた。その話の中に妙なワードがあることに気づき聞いてみる。


「いや、過ぎた話だからもういい。っていうか下界って何だ?ここってどこにある?アメリカ?イギリス?」

「あー、そういえば言ってなかったね。ここはね地球じゃないんだよ。」

「え?」

「ここはねソウルが出現してから10年、今から10年前くらい前国際連合によるホルダー保護の条約が定められた時ランクEXの『空間』のホルダーが地球の外に作ったって言われているわ。地球の外に創ったのは誰も逃げられないように普通の人の安全が保証されるようにって言うのが理由らしいわ。だから下界に降りる時も許可が必要なの。」


地球の外に…だけど空気も存在するし空もある太陽だってある。理屈で考えたらだめな気がしてきた…。ランクEXにもなると神秘とは呼べないほどの力を出せるらしい。


「ランクEX…そんな特別な人が存在するのか。」

「そうね…特別さで言ったなら、あなたもかなり特別よ。」

「ランクBなのにか?」

「ソウルって言うのはね。本来6歳ぐらいまでに発現するものなの。それを15歳で発現って…前例が無いわよ。」


と呆れたような顔で言ってきた。確かにそうだ。何故今になって発現したんだろう。と長考しているとエルが


「ほら、着いたわよ。ここが学園の学園寮ここは男子寮だから私は入れないけどね。あなたの部屋の相方が部屋まで案内してくれるわ。それじゃあまた明後日ね。」


と笑顔でエルは去っていった。俺も笑顔で彼女を見送った。というか俺と相部屋の奴ってどんな奴だったか聞くのを忘れた。右も左もわからず唖然としていると


「お前がタイチか!?」


とやけに元気な声が背後から聞こえてきた。振り向くとそこにはかなり筋肉質な同い年くらいの少年が立っていた。


「あ、うん。そうだ。」

「そうかそうか、俺はロウ。お前と一緒の部屋だ。部屋まで案内してやるよ。ついてきな。」


そう言うとロウはファンタジーでよく見る感じの木造4階建ての建物に入っていき、俺もついていく。中にはいろんな人がいた。ソウルの影響か獣人ぽい人もいれば体から火を出している人もいた。3階に上がりとある部屋の前でロウは止まった。


「ここが今日から俺達が暮らす部屋だ!よろしくな相棒!」

「あぁ、よろしく。」


と二人で握手を交わす。鍵を開け中に入るとそこには対照的にベッドと机が配置されていた。左側には俺の荷物がベッドの上に置いてあった。


「荷物が全部あること確認したら、俺と一戦しないか?」


唐突にロウが言う。


「別にいいが…どこでやる?」

「寮の裏に練習場あるからそこでやろうぜ。」

「分かった。少し待っててくれ。」


荷物が全部あったので、ロウに伝え、練習場に向かった。二人とも位置につき、ロウが説明する。


「どちらかが参ったと言うか、勝負が決まった瞬間があれば試合終了ってことで。」

「分かった。」


正直勝負が決まった瞬間ってなんだって思ったけど、感覚的にわかるだろということでスルーした。風を身に纏う。ロウも構える。二人の間の目の前に木の葉が落ちてきた。ロウの目が隠れる瞬間を狙って、風を最大出力で吹かせる。ロウが後ろに大きく吹っ飛び体勢を崩したところを狙って上から叩きつけようとしたが風を空中で避けその流れで体勢を立て直した。するとロウの体が獣のように変化し、とんでもないスピードで近づいてきて俺はあっという間に倒されロウが馬乗りになった。そして首元に爪を突き付けられた。なるほどこれが勝負が決まった瞬間か。犬のような顔から元に戻り明るい笑顔になった。


「勝負あったな。てかお前ホントにBランクか?その割にはC+の俺に瞬殺だったが。」

「生憎、昨日一昨日でソウルに目覚めたんでね。使い方とかよくわかってないんだよ。」

「そうかそうかそれならまず自分の武器を身に付けなきゃな。俺は狼のソウルだから速さと爪を武器にしている。戦いにおいてまず重要なのは自分の武器を持つことだ。」

「あぁなるほどな分かったからまず俺の上からどいてくれ。」

「おぉすまない。」

ロウは笑顔で言ってどいた。


「ともあれ、武器は大事だ。明後日までの学校に考えておけよ。」

「あぁよくわかった。」

「それじゃ、風呂と飯行くか。」


とロウに連れられた。



その夜俺は寝床で考えた。自分より圧倒的強さを誇るホルダー達がこの学園にはたくさんいる。まずそいつらに勝たねば人々を守ることは出来ない。まず自分の武器を作らねば…カマイタチ…どうするか…。

そんなことを考えながら眠りについた。


投稿ペース遅いですね。

テストやらレポートに追われてるので…容赦を…

文字数バラバラなのはすみません。次からコンくらいかなと思います。

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