始まりの前。8
「もう! 話が進まないじゃないか!」
と、プンスコおこなティアを宥めつつ、謝りながら枕アタックを甘んじて受ける。
「じゃぁとりあえず服着ようか。いろいろ教えたい事もあるし」
現在の我々は真っ裸ですからね。教えたい事というのは邪神についてでしょうかね?
今のところ、教わってるのは逢瀬の仕方ぐらいですから……いや再生の方法とかは教わりましたね。
なんせ、喰われるわけですから、元に戻さないと私全てがティアのお腹に収まっちゃいますので。
まぁそれはそれでアリかな、なんて考えながらティアと試行錯誤した私の鎧が見当たらない。
ブラとパンツは見つけたのでとりあえず、それを穿く。
「ティア? 私の鎧がないんですが」
「お? ――ああ。あれは脱ぐと戻るんだよ。自分の中に意識を向けてごらん。あると思うから」
おや、そんな便利な機能が?
ともかく言われた通り意識を自分の内側に向けてみると、
「ティア? 目の前にゲームとかでよく見るステータスパネルみたいなのが浮かび上がったんですが」
「それそれぇ。そこから装備するのだよ! いやね。いきなり魔力とか咒力とかいろんな力が使えますって言ってもわかんないでしょ? もともと君は、そんなのがない世界で生きてたんだから」
それはそうだなと納得。
「でぇ。その辺の邪神としての力とか能力を君の馴染み深いモノにしたんだよ。ゲーム好きでしょ?にひひ」
「ええ。大好きです……なるほど。これは有り難いですね。正直。そういった力を感じはしますが使い方がいまいちだったので」
「だと思ったから、僕がゲームっぽく力を纏めて種別しといたよん」
「至れり尽くせりで涙が出そうです」
「でしょぉ? くしゃみして世界の半分吹き飛ぼしたりでもしたら、もう大笑い話になっちゃうからねっ。慣れるまでの安全装置と、補助装置みないに思ってちょうだいなっ」
最後にウィンクを決めてそう話を可愛く締めくくっるのはいいんですが……くしゃみで世界が?
ちょっとだけ自分の体に慄く私。
それから、ティアも私とお揃いの格好になり空間を闘技場に変えた。
「どうだい? ボクの出で立ちは?」
「凄くお似合いです!」
「君も凄く似合ってる! んじゃ先ずは【ウシュムガル】の使い方からだね」
なんでもウシュムガルとは私の腕とか手のような感じらしく、早い話が触手。
ともかく意識を自分に向けて、ウシュムガル使ってみる。
「おっ!腰がむずっと! おお? これは蛇ですか?」
「そだよん。七匹の大蛇ウシュムガル! どう? すごいでしょう! しかも七匹目は大きなコブラで角が生えてるんだよ! かっこいいでしょ? これもボクとお揃いだよ」
ほとんどティアが言った通りなんですが、私の背中、腰らへんから六匹の黒い蛇が生えました。
で七匹目の角の生えた黒いコブラっぽい蛇は、背中の中央やや下から、弧を描いて頭上に。
私から生え繋がってるそれらを一通り観察する。
「おお? お? 感覚がありますねぇ。なんという腕が七本増えた感じですか? へぇー不思議感覚ですが……思った以上に動かしやすい」
「それと、その頭は形を変える事ができるよっ。――こうやって尻尾の先みたく尖らせたり。あとはこのまま先っぽを開かせれば……触手の口みたいにもなるのさ!」
おお、と言いながら、ティアがウシュムガルを変化させる様に拍手しました。
それかしばしウシュムガルの扱いについて練習をしました。
便利な蛇さんです。口から光弾や炎を吐いたりできます。
捕食器官でもあるらしいので、ここからでも物が食べれるとか。
あと傷をつけるのはティアぐらいの神様じゃないと無理だそうな。
「どんだけですか。しかし、ティアぐらいの神もとい女神っているんですか?」
ちょっと気になったのでそんな質問をすれば、適度な大きさの胸を張って彼女はこう答えました。
「ズバリと言えば! 君しかいないっさ!!」
どうやらここに邪神界のツートップが揃ってるようです。
一位は勿論、ティアことティアマトちゃん。
二位は不肖、私こと……
「ティア。私の名前まだですか?」
「おおっ! 君とじゃれるのが楽しくて、すっかり忘れてたよ!! ごめんごめん」
と可愛く舌を出しながらあざとく笑う彼女……可愛いはジャスティスです。
「楽しかったのならしょうがないですね。ではティア」と言いながら彼女前に行き膝を着いて頭を垂れます。
「私に名を」
「いいね! それっぽくて! というか君に傅かれるとキュンとくるよっ。んじゃボクもそれっぽく」
彼女のひんやりとした手の感触を頬に感じ、されるがままに見上げさせられる。
「ボクの――いや。私の半身。私の片翼。私の全て。一対の私、その片割れ。汝は絶え間なく変化し、我に暇を与えず愛してくれる虹。そして、我の心臓を激しく脈打たせるその愛は、狂暴で凶暴」
さっきとまでは別人のようなティアに見惚れてしまう。
君こそ私を狂わせる愛しい存在です。
「――イーリスラハム」
そんなに愛おしく呼ばれてしまったら私、我慢できなくなるじゃないですか!
「ぬふふっ。はいここまで! イーリスラハムっ! 親しみと愛を込めて愛称はイリスだ。さっ!ボクのキッスと共に受け取りなっ!!」
と豪快にぶちゅっと私は唇を奪われ、名前を頂きました。




