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始まりの前。7

 

「――ふぅぅぅ。流石のボクも疲れたよ。まさか最後まで受けきるとは驚きだよっ! そして君も凄いっ! この僕が受け止めきれなくて音を上げそうになったんだから! とゆーか、目一杯音を奏でてしまったよっ。もちろんっ。僕も目一杯、君を、奏でたけどねっ! にしし」


 返事もできないぐらいぐったりしてます。

 第五ラウンドまでは数えてましたが、それからはダークちゃん猛攻で数える余裕がなかったのです。

 さすがハイパーでスパーな存在。テクもハイパーでスパーでした。


 なので、今私はベッドの上に大の字寝てます。その横でにうつ伏せになって私の顔を楽しそうに頬杖ついてツンツンしてるダークちゃんがいます。


「我ながら年甲斐もなく燥いじゃった! にひひ。部屋中が君とボクの血で真っ赤だよ」


 ダークちゃん言う通り部屋中真っ赤どころか、血の匂いとダークちゃんの匂いと多分私の匂いで埋め尽くされている。


 噎せ返る様な鉄臭さの中に、ふわっと香るダークちゃんの花のような体臭。

 歪で、混じる事のない匂いなのに全てが混じったこの香り。

 人間だったらどう感じただろうか? 

 口を押せえて吐きそうになるって容易に想像できるけど、今の私はこの匂いがとても愛しくて堪らない。

 何と言いますかこの時に私は強く『嗚呼、人間やめたんだな』て思いました。

 これが邪神の在り方なんだとも。


 ちなみに邪神の逢瀬は『互いに喰い合う』


 喰う事は愛す事。愛す事は喰う事。

 強く想ったら想っただけ相手を壊して喰らう。

 強く想ったら想っただけ相手に壊され喰らわれる。

 その繰り返し、何度も何度も互いの血肉を貪り愛し合う。


 永遠と互いに喰い合う蛇のように。


 これが邪神の愛し方、である。

 なにせ不変で永遠なハイパーでスパーな存在です。

 なんら問題はない。痛み? ありますよ。そりゃ喰われてるんですから痛いです。

 でも、気が狂う程の痛みを感じると同時にダークちゃんの強くて熱い想いも感じるので、そっちが嬉し過ぎて気になりません。


 ああ、今自分はすんごい求められてるって思うと胸キュンがやばいです。

 なので部屋中が血だらけなのです。


 ゴロンと気怠さ最高潮の体に鞭打って寝返りすれば、ダークちゃんの言う通り壁も天井も真っ赤です。


「人間流も悪くなかったよ。相手が君だからかなかな? 君はどうだったかな? ボクの具合は」

「この言葉、何回も言ってますが、控えめに言って最高でした。私も()()経験はありましたが()()()()は初めてでしたが……相手がダークちゃんだったので嫌な気持ちは一切感じなっかたです。むしろヤバいぐらいよかったです」

「にひひひっ! そりゅあよかった――」


 ほっぺに柔かな感触、花のような香り、それと小さく『ちゅっ』という音。

 それから、耳元で囁くダークちゃんの声と、喋る度にくすぐる熱くて冷たい吐息。


「さっきは悪くなかったって言ったけど……控えめに言ってボクも最高だったよんっ」


 こいつ! 小悪魔かっ!! ああ邪神だったわ。


「それとね。君からダークちゃんって呼ばれるのも悪くはないけど……ティアマトって呼んでもらいたいかな。愛称は親しみと愛を込めてティアって呼んでおくれ」




 ダークちゃん改めティアマトちゃんとベッドの上でピロートークに花咲かせ、ゴロゴロ中。


「んふふふっ。なんだろ? 君に名前を呼ばれるとむず痒くてしかたないよ!」


 と言いながら枕に顔を埋めて、足をバタつかせるティアたん。

 なにこの可愛い生き物。

 チラッと見える首筋が薄っすら桜色。色が白いから色付くとホント映える。


「そうですか? では常時はティアって愛称を使いましょう」

「うんうんっ。そうしておくれ! 慣れるまで――いや慣れたくないかな。ずっとこの気持ちを感じたいよっ!」


 枕越しにチラッとこちらを見て、目が合うとプイッとまた埋める。

 ほんとなにこの天使。あ、女神か。いや私の嫁だったわ。


「そうなると私はなんと名乗ればいいのでしょうか? さすがに生前の名前を使う気にはなれませんしね」

「アー……。君の名前かぁ。確かにもう人間じゃないしねぇ」

「ここは生みの親且つ私の嫁に決めてもらいましょう」

「えへへへへぇ。嫁って呼ばれるとハズいなっ! でもいいのかい? ボクが決めても。名乗りたい名前とかあるんじゃない?」

「んー。何と言いますか。体もあり方も存在もティアがくれたものですので……貴女のモノだって証がほしんですよね。だから」


 一度そこで区切って彼女の方に顔を向け、目を合わせてから、


「ティアマト――名前も貴女から貰いたい」


 と自分のありのままの言葉をそのままティアにぶつけてみる。

 かなりクサイ言葉をぶつけちゃいましたが……まぁいいでしょ。と思いながら見つめていると、ティアの顔が桜色ではなく真っ赤になる。若干目が潤んでるし……あれ? やらかしました?


「――――――っ! どうしてっ! ききみはそーゆうことをサラッと言うんだい!? こっちが恥ずかしくてどーにかなりそうだよ!!」


 ぼふっと音を立てて三度、枕に顔を埋める。

 それから枕を抱きしめ且つ、足をバタつかせ、ゴロゴロ悶え始めた。


 暫くその状態が続き、ややあってそれが収まるとこちらをチラ見しながらポツリと、


「幸せ過ぎ&嬉し過ぎて、いろんなところがキュンキュンして……おしっこが漏れそうになったじゃないか。どうしてくれるんだい? どうするのが正解かわかんないよっ!」

「漏らせばいいと思うよ」


 と、にこやかに決め顔で言えば、枕で顔を殴られました。


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