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バカップル降臨 3

 

 私の力とティアの祝福を得た鬼ちゃん。


 恍惚した表情でぼーっとしてますが、これ大丈夫なんでしょうか?

 鬼ちゃんの顔を覗き込んでも、反応がないですし。


「そろそろ始まるかなぁ」とティアがそう言うと、彼女を黒い影のようなモノが包み込んでしまう。

 そして、黒い球体となってしまった鬼ちゃん。


「これは?」

「なんていいえばいいのかなー。蛹っていうのが妥当かなぁ」

「蛹、ですか」

「うん。中でドロドロになってるよ!」


 え? それって大丈夫なので? と思いつつ黒い球体を見つめます。


「彼女次第かなぁ。ま、大丈夫でしょ!」


 ティアがそう言うのであれば、問題ないでしょうが心配になりますね。

 なんせ、ドロドロ、だそうですから。


 立って待つのもアレですし、と思いパパっと魔法で長椅子を作り出した私は、座って鬼ちゃんの結果を待ちます。何度目かわかりませんが、魔法ってホント便利です。




「さ! どんな感じになるか楽しみだねぇ。そして君の膝枕は最高だぁね」と言いながら私の膝の上に頭を寝せて、猫の様にゴロゴロしているティア。


 彼女の頭を撫でたり、結った髪を手櫛で梳いたりしながら黒い球体となった鬼ちゃんを眺めていると音を立てながら亀裂が生じます。


 その隙間から血のような赤い液体があふれ出し、その量が多いのでちょっとした滝のように見えます。


 底の部分が砕けると白い塊が地面に落ちてきました。


 それを一緒に見ていたティアがピョンと跳ね起き、それに近づいていきます。

 私もその後を追って白い塊もとい、鬼ちゃんの下へ。


「やぁやぁ。気分はどうだい? 自分がなにかわかるかな?」


 ティアにそう問われた鬼ちゃんは、咽ながらもこくりと頷く。

 それを見たティアは声を弾ませ、地面に座り込んでいる彼女を立たせる。


 ここはティアに任せましょうか。なんだか楽しそうですし。


「ティア。少しその辺を見てきます。お任せしても?」

「ほいほい。任されたよん」


「さてと」と呟き適当に歩を進めます。


 右見て左見て上を見る限りでは、それなりに広い空間のようです。

 天井や壁は岩。地下なんでしょうねここは。

 天井に鍾乳石みたいのがありますから。


 キョロキョロ見渡しながら祭壇? の端にたどり着くと下に続く階段を発見。

 そして、その先に最初に出会った派手なおっさんの後ろ姿が見えます。

 手を広げてまだなにかベラベラ喋ってるみたいです。


 一人で喋ってるのかと思いましたが、どうやら更に下があるようでそこにはいる怪しさしかないような連中に語りかけてるようです。


 何してんですかね? と考えてると下の連中からどよめきのようなモノが聞こえてきました。

「おお」とか「あれが」とかいろいろ。

 どうにも私を見て、そう言ってるようです。


 それに反応したおっさんがこちらを振り返り、


「さぁ! 我が召喚に応じた魔神よ! こちらに来てその姿を皆に見せるのだ!」


 なんか偉そうに言ってますが……まぁいいでしょう。

 得られるものがあればいいんですがと思いながら階段を下ります。

 そして、一段一段降りる度に増す居心地の悪さ。

 原因は下に居る連中とおっさんの目から感じる不愉快さ。

 よく、『欲に濁った目』なんて表現がありますが正にこれがそうでしょうね。

 ドロドロと粘っこい視線。肌を虫が這うような気持ち悪さがあります。


 その事に苛立ちながらもおっさんの近くに到着。

 嘗め回す様に私を見るその下卑た顔に、全力でグーをぶち込みたい。

 が、我慢です。それをする権利は私ではなく彼女にあるから。

 そう思いながら振り返れば、ティアの姿。それから後を追う様に鬼ちゃんの姿も。

 私は鬼ちゃんの姿を見て感嘆の声を上げます。


 ティアと同じく露出度高めではありますが凛とした空気を漂わせる女剣士。

 私はその姿に思いっきり目を奪われました。

 魅入ってしまっていると言ってもいいでしょう。

 ぞくりと思わず震えそうになるほどに鋭く、美しい日本刀が頭に過ります。


 触れれば容易く指が切れ落ちるのではないか、それどころか死んでしまうのでは、とそう実に、かつ自然に思わせる危うさ。

 それでも、緩やかに反った刀身や滑らかに刃に沿う波紋、鈍く重く輝く銀色はとてもじゃないが目を離せないと魅入ってしまったあの時と同じ想いが、鬼ちゃんの姿を見た途端湧き上がってきました。


 鬼ちゃんの装いはティアが用意したのでしょう。相変わらずいい仕事しますね! 


「いいでしょ? 君の好きなファンタジーな和風女剣士に仕立ててみたん」


 いつの間にか横に来ていたティアが私の腕を抱き寄せながら、二ィッと笑顔を向けてきます。


「流石ティアです! 私のツボをよくわかってますね!」

「そうだろぉ? そうともさ! ボクは君のお嫁ちゃんだからね! 趣味趣向は完璧さ!」


 二人で鬼ちゃんを絶賛していると、鬼ちゃんがおもむろに顔を逸らし頬を掻く。

 よく見ればうすっらと顔が赤いです。

 そして、ぽつりと、


「その……なんだ。そこまで言われるとむず痒いのだが」

「おおお! デレてますよ! きりっとしたイケメン女剣士がチラッと乙女を見せてます!」

「イリス! 興奮するのはわかるけど! 落ち着いて! 力が漏れてるから、ね?」


 ティアにそう宥められ、漏れてた力を押えます。

 胸も股もキュンキュンし過ぎていろいろ漏れていたようです。

 鬼ちゃんがやや慄くもすぐに表情を改め、私を見つめる。


「貴女には本当に感謝している。まず先に礼を述べるのが筋なのだが……為すべき事を為した後でもいいだろうか?」

「ええ。それは勿論かまいませんよ。まぁ話は事が終わってからにゆっくりしましょ!」


 鬼ちゃんに微笑みかけ、さぁどうぞとばかりに下に向かう階段に手を向けると地面にへたり込んでるおっさんが声を荒げ始めました。


















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