バカップル降臨 2
地面に寝せた彼女じっと見つめます。
ここまでされる理由。
それは感情抜きに考えれば、逃亡防止でしょうか。
両足の状態をみれば一目瞭然。
あと手と言いますか、腕も、ですかね。
が、体中につけられた痣を見ればそれらは物のついで、だったのでは? と思います。
確信にしないのは、私の推察ですので。
「助けるのかい?」と聞いてくるティア。
「どうでしょう。彼女の望みは叶えるつもりです。副産物としてなら……助けるになんですかね」
「そうだね。叶えるって言えば聞こえがいいけど。わがままだもんねこればっかりは」
「わがまま、ですか。そうですね。ここは邪神らしくわがままになりましょう」
「うんうん! そだよ! 邪神らしくいこうじゃないのっ!」
とティアの元気のいい声も頂いたのでさっそく、わがままをしようと思います。
先ずは、回復に耐えれるだけの魔力を与え、並行して治療していきます。
回復不可能な部分は私の血肉で補いますか。
「お? なにするんだい?」
「いえね。だいぶ使い物にならない部分が多いので」
「あーなるるぅ。血を飲ませるんだね? 手伝うよ」
それから口移しで私の血を飲ませ、彼女を元の状態以上に作り変えていきます。
これは私のわがままなのでとことん行きますよ!
さてそう時間も掛けずに、彼女の痛々しい傷と痣は消え綺麗な状態に。
……おっぱいが凄いですね。
「どこ見てるんだい?」とニヤニヤしながら言われてしまいました。
「あまりにも見事なお胸でしたので……でも一番はティアのですよ?」といってティアの胸を揉むと、
「――っひゃん!」と言った感じの可愛い声が響きました。
「え?」
「ちょ、ちょっと!! 不意打ちダメだと思うなっ! へんな声出ちゃったよ!!」
「……今度じっくり聞かせてください」
「今ここで鳴かせようと思ったでしょ?」
「いい当てないでください。自重したんですから」
そんな会話をしていると、小さな呻き声が聞こえてきました。
どうやら、彼女の意識が戻ったみたいですね。
ゆっくりと顔を片手で覆いながら起き上がる彼女。
「――……オレは……ここは? ――そうか」と、要領を得ない言葉をつぶやく。
「おはようございます鬼さん」となるべく優し気な表情を浮かべて、敵意がない事を伝える。
「そうか……あんたらが助けてくれたのか」
「助けた、というよりは。望みを叶えようかと考えた結果。でしょうか」
「望み?」
「ええ。貴女が強く願った望み。私にはそれを叶える後押しができる。叶えると言った手前あれなんですが。叶えるかどうかは、あなた次第ですね」
「……要領を得んな。だが――オレが望んだ事を叶える気があると?」
「はい――どうします?」と聞けば彼女は目に強い想いを宿し私の顔を見つめてきます。
凄い眼力ですね。
気を抜くと圧倒させそうな苛烈な想いが私の目を通して押し寄せてきました。
「――頼む。オレから家族を、友を、仲間を、踏みにじり……汚し殺した連中を根絶やしにできるだけ……いや。それ以上の力をくだ、さい。」
そう口にしながら両膝をつき、地面に角をこすりつける彼女。
いろんな想いがあるのでしょう。血肉を与えた事で多少なりとも彼女の感情が読み取れます。
怒り憎しみ悲しみ。不甲斐なさ。後悔。嘆き。悲愴。そして渇望。
そっと彼女の肩に手を置き顔を上げさせます。
「いいでしょう。ですが私は与えるだけです。そしてこれは私のわがまま」
そうこれはわがまま。
勝手に叶えて勝手に与えて勝手に救う邪神のわがまま、です。
彼女の頬に触れながらそう心の中呟きます。
それからやや上向きさせて、彼女の唇に私の唇を重ね、舌をねじ込み、力もねじ込む。
願わくば……。
「――んっ。……はぁ。先ほども言いましたが後はあなた次第です」とどこかぼんやりした彼女の瞳を見つめてそう告げます。
「終わったかい?」
「ええ。これで眷属の創り方はあってますか?」
「んーまぁいいんじゃない? 君らしくて」
ティアのお墨付きも頂きましたし、問題ないでしょう。
さて、目に入ってきたので思い出しましたが……おっさんどこに行ったのでしょうか?
辺りを見渡しますが、こちらから見える場所にはいないようですね。
「どったの? キョロキョロしちゃって」
「いえ……おっさんどこに行ったのかな、と」
「ああ。いたねそんなの。白い鬼ちゃんの所為ですっかり忘却しちゃってたよ」
まぁ、居なくとも差し支えないのでいいんですが。
それより……お腹空きましたね。
人の時の空腹とはちょっと違う新感覚。
うーん近いモノで言えば――口さみしい、でしょうか?
と思いつつ人差し指を口に当てつつ何かないかなっと周囲を見ますが……何もないですね。
「おや? お口が寂しいのかい?」とティアに今の状態を言い当てられます。
さすが私の嫁。直ぐに察してくれますね。
「ええ――なにかつまみたいかなと。多分ですが彼女に結構な量の力を流し込んでしまったようです」
「そりゃ。あれだけ豪快に突っ込んじゃえば、ね。……でどだった? 鬼ちゃんの唇わ。にひひ」
「うーん……。ティアとは違う柔らかさでしたね。あと口の中がとても熱かったです。特に舌が」
「ほほぉお。それはボクも味わってみたいね。……ボクも祝福しちゃおうかな」と彼女チラッと見た後に私の顔を見つめてニィイと笑うティア。
これは私に対する挑戦ですね、と身構えてる内にティアは彼女のぶちゅ豪快にキスをしました。
くっ!! 儀式的なモノって分かってるのに! 何でしょうかこの唸る独占欲は!!
ティアが唇から離れるとキラっと煌めく赤いたるんだ線がティアと彼女の唇をつなぎます。
それはすぐに消えてなくなりましたが……くっ! めっぽいエロいお顔をしてからに!!
つい地団駄を踏みそうになりましたがグッと堪えるのに一苦労する羽目になりました。