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2. 友人

 公園で中学の友人に連絡を入れてから半日。

俺は友人の通う高校の最寄り駅前で友人を待っていた。

 あの後、しばらくしたら友人から承諾の連絡が届き、最寄り駅に集合することになったのだ。


「早すぎたか?」


 俺は駅前にある噴水広場、その噴水の中心にそびえ立つ時計台を見上げた。時計の針はちょうど四時半を指していた。

 友人の高校の授業が何時までなのかは聞いてないが、そろそろ来てもおかしくないはずだ。

 その証拠に帰宅ラッシュとまではいかないが、駅の出入り口から学生や社会人が流れている。その中に友人の学校らしき制服を着た学生の姿もある。

 それから待つこと数分。

 ようやく駅の反対側、噴水の向こうから他の学生と共に歩いてくる友人の姿が見えてくるのだった。


 来たか……


 俺は駅寄りの柱に寄りかかりながら友人を見つめる。

 友人はというとそのまま噴水広場に差し掛かると、一緒に歩いてきた学生に一言二言言葉を交わした後、二手に別れた。

 そして、俺を探す為にキョロキョロと周囲を見回し始めるのだった。

 友人との距離はだいたい五十メートル程。噴水から俺の場所まで物理的に遮るものはない。ただ、今は人の流れがいくらかあるので見つけづらいかもしれない。だが、普通なら数分もしないうちに見つけられるはずだ。

 わざわざ待たなくても友人の場所まで移動すればいいじゃないかと思うかもしれないが、これはこれで検証を兼ねてのこと、無闇やたらに動いてはならないのだ。

 というのも公園で友人に連絡を入れた後、自分なりに試みを重ねていくうちに一つ分かったことがあったからだ。

 それは "物理的接触による認識" 。

 きっかけは映画館での出来事。何故、従業員は視認出来ず、チケットカウンターでぶつかった人は視認することが出来たのか?

今更ながら不思議に思った俺は色々と試してみることにした。

 すると、物理的接触、俺の手が相手の体に触れる等の接触行為を行うことで相手が自分を視認することが出来ることが判明した。

 また、物を相手に投げる等の間接的な行為も確実性はないが何人かに一人ぐらいの少ない確率で視認可能になることも分かった。

 だから今回に限っては友人の前まで移動してはいけない。この人の流れだ、誤ってぶつかりでもしたら今回の検証は台無しになってしまう。


 でも他にもまだ何かあるはずなんだ……


 それは試みの最中に感じた違和感。それが何なのかは今はまだ具体的に表現することが出来ない。今回の友人との接触で何か分かるといいのだが。

 そんなことを考えていると、友人は周囲を探す仕草を止めてこちらの方へと足を向けた。


 さて……どうなる?


 駅へ向かう人の流れと共に友人がゆっくりと歩いてくる。一応、友人は俺の方を見ながら歩いてきているが、実のところ駅を目指しているのかもしれない。

 交差する視点、徐々に縮まる距離。そして――


「よっ!待たせたな」


 そう言って、中学校を共にした友人、片山誠治が快活そうな笑みを浮かべながら俺に向けて片手を上げたのだった。


「……いや、今来たところだ」


 一拍置いて俺は何気なさそうにそう答える。


「おいおい、嘘つくなよ。ずっと俺のこと睨みつけるように見てきた癖によ」

「……そうだったか?」

「そうだよ。というか俺のこと見つけてたんならそっちから来いよな」

「すまんな、人の流れに逆らってまで行くのがめんどうだったんでな」

「はは!だろうと思った」


 誠治が楽しげに笑う。俺も釣られて苦笑する。

 そして、内心ほっと胸を撫で下ろすのであった。


 ……これで一つ疑問が解消されたな


 それは懸念されていたともいえる付き合いの長さによる視認問題。

 物理的接触もなく誠治が俺を視認出来てるところを見るに、視認出来るかどうかは昔から俺を知っているかどうかにあるとみた。

 もっと細かく言うと、誠治と出会ったのが中一の頃、最低でも三年以上の付き合いがある人間は俺を視認可能ということだ。


 なるほど、うちの家族が俺のことを視認出来てる理由もそういうことか


 やはり血筋は的外れのようだ。まあ、わざわざ検証しなくても分かっていたことだ。

 仮に血筋によって視認されなくなる現象が引き起こされているとしたらどこぞの能力バトルに発展しそうである。

 面白そうではあるがここは現実、そんな馬鹿げた漫画みたいなものは存在しない。

 じゃあ、今起きてるこの現象はいったい……?


「で?そんなめんどくさがりの空大くんが俺にいったい何の用だ?まさか恋愛相談か?」


 誠治がいつもと変わらぬズレた発言と共に本題を突く。

 俺はそれに対して軽く笑みを浮かべた。


「……ああ、それは電車に乗りながら話すとしよう」

「……おいおい、マジかよ!って、置いていくなよ!」


 俺はそう言いながらスタスタと改札口へと向かう。それと同じく一足遅れて誠治が続くのだった。


 少し進んだように思えて、まだこの現象の原因が何なのかさっぱり分からない。けど、友人とのくだらない会話は俺に久方ぶりの普通を感じさせたのだった。

展開がぐだぐだしてて申し訳ないです。

一応、次の話から少し動くはずです。

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