98 突然に……
「そ、それよりもさ、卒業式の台詞考えなぎゃいけないから集中させて。詳しいことは愛に任せるから」
「分かった……」
………数分後、やっとフルになった。おかげで私はとても疲れた。
「ありがとうございます」
-お詫びに今度デートくらいならいいですよ?-
-考えておくよ-
家に着いたあと食後に原稿の内容を考えていると電話が鳴った。有希に変わり電話をとる。生憎、ナンバーディスプレイとかじゃないからな……。僕がでないとマズイ。
『あ、ゆーくん?久しぶり〜』
「おばさん!?」
例のいつまでも帰ってこない親戚の人だ。一応、小さい頃に両親を亡くした僕にとっては親みたいな人たちだ。
「今はどこの国にいるの?」
『今週末にゆーくんのとこに行くから』
「えっ?」
人の話は聞いてほしいが、それよりもびっくりした。
『2年ぶりくらいかな?ちゃんと2人も楽しみにしてるわよ』
2人とはおばさんたちの子供のこと、ようはいとこ。でも週末って……。この前会ったときとは状況が全く違う。愛がいるし、能力が判明したし。特に前者はマズイ。
『それじゃ〜』
「え?ちょっと!」
ガチャ
卒業式は今週だからいいとして、来るまでにいろいろしておかなければ。
「誰から?……」
「おばさん……」
「挨拶をしなきゃ……」
愛のことについての言い訳が必要なんだった……。
「大丈夫……。言い訳もばっちり……」
それから……問題なく卒業式を終わり、3年を中学から追い出し、目安箱には相変わらず告白文のみ投函された状態が続き……
「来ちゃった……」
ついに週末になってしまった。
「愛、おじさんとおばさんと圭兄と佳奈が来るから」
ちなみに圭兄とは、子供(従兄弟にあたる位置)の中島圭介。僕より5つくらい年上だったと思う。佳奈は、中島佳奈。僕の2つ下で一応、妹のような存在だ。
ピンポーン
無機質なチャイムが響く。会いたい気持ちも少しはあったが当分は居座る気だろう。
「はい、どちらさま……」
「あら、ゆーくん。久しぶり」
はあ……。
「あがっていいよ。荷物置いたらちょっと居間に来てくれない?」
愛の紹介をしなくては……。
「有希、また可愛くなったな〜」
「圭兄、殴るよ?」
「すまん……」
…………コイツは。
「お兄ちゃん、久しぶり〜。元気だった?」
「大丈夫だから、佳奈も荷物置いてきな」
「は〜い」
相変わらずだ。みんな何も変わってない。
「ところでおじさんは?」
「親父は仕事で向こうに残ってる」
かわいそう……。
〜居間〜
「お兄ちゃん誰なの?」
「有希にも彼女ができたか……」
これから愛を紹介しようというのに……好き勝手言いがって……。
「で、ゆーくん、誰なの?」
おばさん、顔近い……。
「それは本人から……」
3人が愛に注目する。