93 涙がでそう……
「でも、かわいそうだよ〜」
「じゃあ、全員と付き合うか?」
それはさすがに無理な話だ。
「じゃ、断ればいいだろ」
「男子には男だからって断ったけど……」
それによって変な新境地を開拓した人もいたが。それはそれで断った。
「女子にもそうやって断ればいいだろ」
そっか……。
「ところで佐藤は私が女の子なのに案外平然としてるよね?」
「どういう意味だ?」
「例えばさ…………えいっ!」
佐藤に抱き着いてみた。耳をたてて聞いてた人たち以外はびっくりしている。
「なっ……。まあ、とりあえず放せ」
私は放してから
「やっぱりおかしいよね」
佐藤に再度言った。
「どこがだ?」
「普通の男子って女子に抱き着かれたりするとそれなりの反応するよね?」
クラスメイトも頷いている。
「そりゃ、姉ちゃんが外出時はガキで行くから抱き着いてくるし……」
苦労してるな……。
「耐性はついてるから嬉しくもない」
コイツはやっぱり煩悩のかけらもなさそうだ。人間なのかどうか危ういぞ……。
「だいたい、嫌がってる女子の入浴姿とか見ても得もしないし、楽しくないから意味がない。だから覗きは嫌いだ。意味がないことばかりだからな」
コイツが女の味方に見えてきた。
「ああ、そういえば大谷が呼んでたぞ。何か約束したらしいな」
写真の件か……。
「放課後に生徒会室に来るよう伝えておいて」
「分かった」
〜放課後〜
「今日は目安箱の中身どうだろ?」
生徒会室へ行く途中に回収したがかなりの量だ。何割がまともな意見だろうか……。
着くと清水くん……さんかな?……と真樹がいた。
「中島会長!どうでしたか?」
いつも通りの量だ。中身は知らないが。
「私も手伝います!」
ありがたい。………………んっ?
「さっき
「私」って言ったよね?」
「あ、はい。本城先輩は面接の時から知ってたようなので」
「性同一性障害だったら分からなかったけどこの娘は違うもの。私には嘘は通用しないから」
「あ、坂本先輩が来ましたよ」
と言いつつシュレッダー行きで山を作っていく。
「中島く……じゃなかった、中島さん、盗撮趣味のお客さんだよ〜」
大谷も一緒だった。
「……趣味ではない。……約束だから終わったら家に来て」
「じゃあ手伝って」
大谷も加わってくれて今日の仕事は早く終わりそうだ。
「……いつもしてるの?」
「困るんだよね〜」
「……対策は任せて」
ありがたい。敵にまわすと手強い奴ほど味方になると頼もしい。
「ユキ、これ」
んっ?どれどれ……、
・最近、部室に不良が集まって来るので困っています。-野球部-
始めてのまともな依頼だった。