56 時間は一定に流れてない(相対性理論より)……
忙しくて大変なのです。
「なんで……」
しいちゃんが真っ赤に染まった手を見て言った。
「血が……赤い……」
いつかの代償とやらで銀になったはずの血が赤くなってるから。それよりもまず、痛みの反応の方が普通は速いよね?
「治ってよかった……でも誰が?」
「あ、それ私の仕業」
私は即答した。
「ユ、ユキ!どういうこと!?」
「どうやって?……」
「そのことは居間で話すよ」
「それもそうね」
こんなところでは話す気にはなれないからね。
〜居間〜
「で、どうやったの?」
「それは……イヤリングのお礼に治してあげようかと思って……」
「でも、あれはどうやっても治せなかった……」
試行錯誤したよ。まるでダメだったけど。
「案外方法は簡単だったよ。魔力が底をついたけど」
「どうやって……」
「しいちゃんをもう一人作った」
だから、本人では出来ないのです。
「「えぇぇぇぇ〜!」」
しいちゃんも珍しく大声だ。
「記憶とかは……」
「そこは時間の流れを遅くしたから」
「対価は?」
「さっきの詠唱」
実はほとんど詠唱なんかしてない。
「ちょっと2人だけで話しないでよ!時間魔法について説明しなさいよ」
「例えば、1時間で30の物を作らなければいけないとき、2分で1個で作ればいいのにのんびり作ったら30分で10個しかできてなくて、スピードあげて残り30分で20個作る感じに時間は似てる……」
「簡単にいうと時間の流れを一定時間遅くすると後でそのぶん速く流さなきゃいけない、ってこと。私は詠唱にそれを使って有効利用したわけ」
まあ、無駄に使ってたが。
「へぇ〜。ところで服やもう一人とかはどうしたの?」
「もう一人は自然に消滅したよ」
「同一人物は一人しか存在できない……」
「服はさ〜……しいちゃんもう一人作ったら魔力尽きちゃって」
「それで?」
「さすがに服までは……着せるのに苦労したよ」
「それってしいちゃんを裸にしたってこと!?」
「…………うん」
「恥ずかしい……」
すみません……。
「そんなことよりも彼女の力は驚異的……」
「ユキ、あれって本当に全力じゃなかったの?」
「そうだけど?」
「そこでこれを使ってどれくらいか測る……」
しいちゃんが取り出したのは
「「写真?」」
2枚の写真だ。1枚には私がもう1枚には真樹が写っていた。
「いつ撮ったの?」
「さっき……」
なぜかあるデジカメとプリンターを指差す。本当に段ボールに暮らしてたのか?
「電源は魔法で……」
…………。
「写真で何するのよ?」
「これに特殊な魔法をかける……」
「すると?」
「その人の魔力の大きさがわかる……」