１６３ 闘いとは時に厳しい
それ以来、私が立ちはだかると散り散りに逃げるという光景が何試合か続いた。
私は乙女ですよ？男から逃げられる女の子だなんて……お嫁に行けない……。
「中島、お前は立ってるだけでいい。みんな逃げるからな」
「佐藤、私、もうお嫁に行けない……」
「なら、婿になれ。相手ならいるだろ」
真樹か優稀さんかつかさか……。
「「今だ、突撃ー！」」
私の警戒が薄れたように見えたのか攻めてくる。
「おい、中島。来たぞ」
「そうだね」
「中島にビビるな。本来の目的は棒を倒すことだ！！」
相手の１人が言う。
正しいね、それ。
「中島、攻められるか」
「もちろん。つまり倒される前に倒せ、だよね」
佐藤が頷く。
-有希、魔法使いすぎよ-
-自重しましょうよ-
-だって……ねぇ-
-弾丸くんはしょーがねーよ-
-当然の報い……-
-ところでユウキ。その男は誰だ？-
-本人から後で聞いて-
-うぬ。では、頑張れよ-
さて……
「何する？」
「自然に手っ取り早く倒せ。こっちのは傾き始めた」
ヤバイな。負けたくないし……。
「潰れても自己責任だから安心しろ」
「あ、そうなの。なら、やるよ」
私は魔法で飛んで思いっきり棒の先端を蹴った。魔力込みで。
長い棒は先を叩けば簡単に倒れるから……
「お前……出来ないことはないのか？」
「知らない」
「……いいものが撮れた」
他の色が戦っている間に大谷が撮ったであろう写真を見せてもらった。
そこには顔を真っ赤にして、やや涙目の私が銀色の拳で１人を弾丸にした、まさにその瞬間だった。
というか……
「何で銀色！？」
「………分からない。たぶん光の反射。でも不自然」
-高密度の魔力は写真に写る……-
-マジで！？-
「それ、廃棄して」
「……分かった」
その場でネガとともにライターの火に燃やされた。
「……じゃあこれ」
殴った後の涙目状態。
「好きにして……」
「……１枚で3000円は稼げる」
そうですか……。
棒倒しの決勝。
ここまで私が存在してるだけで攻めてこなくなったので簡単に勝てた。………お嫁に(略)。
けれども………
「ねぇ……なにあれ。怖い」
屈強な男と屈強な男と………筋肉パラダイス。
怖いを通り越してキモい。
「あれはラグビー部とボディビルディング部の奴らだ」
そんな部活の存在しらねぇよ。特に後者。
「厄介なのは大半が彼女持ちなこと。女に飢えてない」
「ふーん。………………彼女いるの！？」
「世の中には筋肉フェチがいる」
まあ、いるね。
「そこでだ。一見非力なお前が１人でも抑えたら奴らにどう映る？」
？？？
「まあ、１人だけでいいから屈強な奴を退けろ」
「分かったよ」
ああ、臭いだろうな……。汗とか。
少しくらいならいいけどさ。
「できたらケーキおごってやる」
「私はスイーツにはつられな………」
-ゆーちん、甘いの食べたいなぁ〜-
-最近、そのようなもの食べてないです-
-あんた、絶対抑えなさい-
地獄耳、恐るべし。
自分の保身のため頑張ろう。
