161 獲物を狩る獅子の如く
ほぼ一騎打ち。
勝てる気がしない。
「にゃはは〜、ゆうちゃん覚悟ぉ〜」
恭子さんの眼が魚(獲物)を見つけた猫(猛獣)のように鋭く光る。言動の緩やかさに反比例して。
これは……ヤバイ。
「ゆうちゃん、捻挫って知ってる?」
「なったことないかな?」
「関節に無理に力がかかるとなるんだけどね。例えば思いっきり捻れたり、脱臼してすぐに戻ったり……」
何がいいたいんだ?
「でね、初めのうちは外見では判断しにくいんだよ」
なんだろ……恐怖感が……。
「有希、手首掴まれたら終わりよ」
ガシッ
既に左手は掴まれ……
ゴッキン
ゴリッ
普通、人の力じゃ、こんなこと……できないよね?関節を外してはめる、つまり捻挫。
「次は右ぃ〜」
鉢巻きを取れば……
ヒョイ
「野生の勘で判るのさ〜。さぁて、ゆうちゃん……」
痛みを堪えつつ、右手を後ろへと思いっきり引く。
ぐらり、と下が揺れる。そういえばバランスがいいとは言えない状態だった。
「どーん」
その時に胸元を押され、完璧に崩れた。
-有希、あとは自分で維持しなさいよ-
浮いている。真樹が魔法でしているのだろうか。地面についてないからセーフだ。
-真樹、ありがと-
「騎馬組み直して!」
僕は片手でスカートの裾を抑えながら言う。
そうですよ、男でチアなままです。これじゃあチアボーイじゃん。
まあ、いい。失格にはならなかったなら格好には突っ込まない。
まだ、終わってない。
「有希、尻尾よ!!それを掴めば勝ちよ」
恭子さんが呆然としてる間に尻尾を掴む。
「……ひゃわっ!!」
一瞬、身体がびくん、とはねた。
この間に取れと。
「ぅ〜、取られたぁ〜。尻尾は反則だよぉ〜」
「鉢巻き取ってたよね?」
「くすぐったいんだよぉ〜、掴まれちゃうと」
ふーん。
「キョンちゃん、任せて」
「アキぃ〜、お願い〜」
僕らは対峙した。
「ふぅ……………………遅い」
一瞬、何がおこったか分からなかった。
明奈さんの手には赤い鉢巻き。
………あれ?取られたの?
「キョンちゃんと違って容赦はしたくない」
待てよ……大将合戦?
「私は有希とは違うわよ」
「面白いかな?」
2人は不敵な笑みを浮かべている。嫌な予感……。
「あんた、なに考えてんのよ……」
「プライバシーの侵害」
「うるさいわよ」
「そちらこそ」
ただいま、みんなのところに戻って、変身してから観戦中。
2人の間に火花が見える……。