119 久しぶりの日常……
「佳奈、どうかしたの?」
佳奈がどうして嬉しげなのか聞いてみた。
「んーん、秘密〜」
可愛いげに答える。読心をしてみるも佳奈の得意としているのは防御関係。ことごとく防がれて、さらに跳ね返されて読心されてしまう始末だ。
「佳奈を出し抜くなんてまだまだだよ、お姉ちゃんたち♪」
どうやら愛もされたらしい。今は愛の心を読んでも精神崩壊には招かれないがなんとなく嫌だ。真樹とのアレで身をもって知った。
その後、私は2人がゲームして遊んでいる間に晩ご飯を作る。
春なので蕗の薹などを揚げて天麩羅にする。衣に少しばかり青のりを少し加えると風味が増す。さらに春の旬のものも揚げて旬の天丼の完成だ。
愛はそれをつゆだくにして食べている。つゆだくというよりつゆ漬けが正しい程になみなみと入っているが。そこまで考えて塩分調節するこちらの身にもなってほしい。そのため『愛専用』と書かれたつゆを用意しておいてある。
それに対して佳奈はゼロ。そう何もかけない。こちらもそこまで考えて衣や中身に塩分やらを練り込んである。
そんなことをしたわけだから作るのには大層時間がかかってしまった。
ちなみに私はそんな変な趣向はないので普通のものを食べている。
これでも栄養バランスは考えて作っている。特に愛はただでさえ偏食なのだから気を使わざる得ない。今までよく病気にならなかったものだ。
そんな晩ご飯も終わり就寝以外に何が残るかというと入浴だ。
いつも佳奈は愛と入っている。私は1人だ。が、今日に限って……
「お兄ちゃん、3人で入ろ〜」
「な、なんで……」
抵抗したが意味もなく、入ってしまった。
佳奈とは初めてだ。愛には散々一緒に入れられたが。
しかしだ、さすがに3人は狭かった。ぎりぎりだ。みんなで身体を洗い終わった後に湯舟に入るがさらに狭い。
「お姉ちゃん、肌綺麗だ〜」
「こ、こら!狭いから動かないで」
「有希、もうちょっと詰めて」
だから私は抵抗したのに……。
「愛、もうちょっと奥に……」
「ひゃあっ……!ど、どこ触ってるの!?有希にも仕返しだ〜」
「東雲お姉ちゃん!それ、佳奈だから!」
「ちょっと……佳奈騒が……、……ゃぁっ……」
結果、お風呂で騒ぎすぎて疲れはとれなかった。
その後も今は私が女の子だから、という理由で遊ばれた。
私は着せ替え人形ではない。嫉妬に燃える姑でも恋多き女性でもない。周りが好意を持ってはいるが。だいたい同性愛の趣味はない。秘密の彼氏もいないし、…………佐藤とはただの友達関係だし。実は心は男のまま?……それはない。だいたいどちらにせよ価値観は混ざりきったものになってしまって、色欲関係の煩悩もほとんど消えてしまう始末。
私は遊ばれながら様々な質問に応答し疲れきってしまった。まだ遊ぼうと言うので一言。
「これ以上遊ぼうとしたら明日の朝ご飯抜き」
すると愛は瞬間凍結の如く手を止め、佳奈は
「ごめんなさい……」
明日も学校だ。うん、早く寝よう。